Research

野村リサーチ

2026.07.29 NEW

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

米国では2026年7月、それまで株式相場をけん引してきたAI・半導体関連の株安が進んでSOX(フィラデルフィア半導体株指数)が大幅下落した一方、軟調だった株式を物色する動きも出て株式全体では底堅さもみられました。S&P500の今後の見通しや投資戦略は、どのような点に注目していけばよいのでしょうか。野村證券ストラテジストが解説します。

底打ちのカタリストは半導体決算の内容次第か

足元でSOXが高値から20%安となり、AI・半導体株への懸念が高まりやすくなっていますが、業績自体は堅調な中でのポジション調整の側面が強いです。過去のSOXの20%安時は、景気拡大時でも指数の安定化には1-2ヶ月を要する傾向がみられました。8-9月の半導体決算で堅調な需要や業績の持続性が示されることが底打ちのカタリスト(材料)であろうと考えています。

SOXの高値比20%安の場面におけるSOXの傾向

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)SOXが過去75営業日の高値比20%安となった局面を抽出し(重複を除く)、その1年後以内に景気後退のケースと景気後退ではないケース(=景気拡大)に場合分けして前後の平均値を算出。2026年7月27日時点。
(出所)フィラデルフィア証券取引所、NBERより野村證券市場戦略リサーチ部作成

7月はAI・半導体株安圧力が継続し、SOXは6月22日の高値から7月17日にかけて20.2%下落、7月初来で18.9%下落となりました。

2026年初以降の米国株価指数と米国10年国債利回りの推移

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)2026年7月27日時点。
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

6月後半以降のマイクロンやTSMC、ASMLなどの半導体企業の好決算でも株高基調には戻らず、これまでの強気見通しに基づくポジションの調整が警戒される場面も増えました。米イラン和平協議がとん挫してWTI原油価格が1バレル60米ドル台から反転し、7月20日にフーシ派による紅海封鎖が発表されたあとには1バレル90米ドル台を突破したことを通じて、市場心理は悪化しました。

7月14日の6月CPI(消費者物価指数)は総合指数が前月比-0.4%、コア指数も同横ばいと下振れましたが、FRB(米連邦準備理事会)高官からはタカ派発言が増えて米10年債利回りが4.5%を突破して4.7%前後まで上昇しました。7月14-15日のウォーシュFRB議長の議会証言ではインフレ抑止姿勢が示される一方で、目先の金融政策に言及しませんでしたが、FF(フェデラルファンド)金利先物では2026年末にかけて1.7-1.8回分の利上げが織り込まれています。マグニフィセント7指数も7月初来で2.2%下落となりました。7月22日の決算発表後にテスラとアルファベットは株安反応となりました。

一方、S&P500は7月初来で1.2%下落、ダウ総合指数は7月初来で0.2%下落に留まり、S&P500等ウェイト指数は7月初来で0.8%上昇とハイテク株安の中で比較的底堅さを示しました。金利上昇や原油高の中でバリュー指数や金融、資源株などが堅調な場面が増えました。米10年債利回りが上昇した割に不動産・REIT(不動産投資信託)も堅調です。

7月は、それまで堅調な株式がアンダーパフォームしましたが、それまで軟調な株式がアウトパフォームするリバーサル物色がみられ、株式全体では底堅さもみられました。米国株主要指数の中で、7月は金融やエネルギー、不動産・REITが堅調である点もリバーサル物色の一環と言えます。景気・業績拡大が続く中で、こうしたリバーサル傾向は一巡しやすいとみています。S&P500見通しは2026年末7,900、2027年末8,300、2028年末8,700と緩やかな株高を引き続きメインシナリオでみています。投資戦略では、半導体・銀行を軸にクオリティ、等ウェイト指数、半導体ユーザー企業や資源インフラ関連企業、素材、鉄鋼にも注目します。以下、詳しくみていきます。

リスクオフでも株式の中でポジションを調整

資金フロー面では先進国株式・債券ファンドともに流入基調が継続する一方、2026年初以降に流出傾向にあった新興国ファンドでは、6月末以降に流入がみられるようになりました。これは、グローバル投資家による分散投資やリバランスが淡々と行われていることを示唆します。

株式・債券ファンドへの資金流出入(2024年以降累計)

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)直近は2026年7月22日までの1週間。
(出所)EPFRより野村證券市場戦略リサーチ部作成

AI・半導体株安や原油高などリスクオフを想起させる事象があっても、「株式を売って債券にシフトする」ような動きがみられない背景としては、米国景気自体は底堅い中で企業の値上げを伴うインフレ基調が継続するという大局観をグローバル投資家が共有しているためとみなせます。

米国株ファンドフローでは、7月23日までの1週間でテクノロジー、資本財・サービス、金融からの流出がみられるようになりましたが、これもリバーサル的な資金フローと言えます。米国AI・半導体ETF(上場投資信託)への資金流出入では、7月中旬以降にSOX連動ETFからの流出がみられる一方、メモリーETFは流入基調が継続しています。

AI・半導体景気の持続性

2026年2月の「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)懸念」以降に軟調な場面が増えたAIユーザー企業の株価は5月後半以降に持ち直し傾向にあり、リビジョン・インデックスも改善傾向を維持しています。一方、PER(株価収益率)は市場平均を下回ったままであり、「AI代替懸念」を完全に克服できているわけではありません。

AIインフラ企業とAIユーザー企業のリビジョン・インデックス

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)AIインフラ企業は半導体、半導体製造装置、クラウドサービスなどを提供する企業、AIユーザー企業は金融、Eコマース、コールセンター、CRMなどでAIを利活用しているとされる企業群。リビジョンインデックスはBloombergの今期・来期予想EPSの修正状況をもとに、各グループごとに、(上方修正社数-下方修正社数)÷修正総数を算出。
(出所)S&P、フィラデルフィア証券取引所、Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

6月22日にSOXが高値を付けて以降は軟調なこともあり、AIインフラ企業に対しても警戒トーンが目立つようになっています。6月26日公表のBIS(国際決済銀行)の年次報告書では、AIブームに焦点を当て、その潜在力と同時に脆弱性にも警戒を示しました。特に、AI企業・クラウド・半導体・顧客企業間で資金や売上が循環する取引は、実需以上に収益や評価額を膨らませ、調整時に金融脆弱性を高め得るとしました。

この点は2025年10月以降に折に触れて警戒されている論点ですが、足元では将来的な隠れ債務とともに懸念される場面が増えています。7月26日付ウォール・ストリート・ジャーナル”Nvidia in Talks With OpenAI to Guarantee $250 Billion Financing for Data Center”では、OpenAIがリースを検討する米オハイオ州南部の巨大データセンター計画向けにエヌビディアが約2,500億米ドルの保証を協議中とする一方、循環的資金供給への懸念が強まっている点も併記されました。また、AI投資の規模を過去の鉄道ブームやドットコム・ブームなどの投資サイクルの拡大局面と比較し、資金調達が内部留保中心から債務依存へ移りつつある点にもBISは警戒感を示しました。

Bloombergコンセンサスによると、ハイパースケーラーの設備投資は四半期当たり2,500億米ドル前後の規模まで拡大し、当面は前年比+80-110%という高い伸びを維持する見込みです。一方、今後は営業CF(キャッシュフロー)以上の設備投資規模となるとともに設備投資の伸び率も2026年7-9月の前年比+109%増を境に、10-12月は同+84%、2027年1-3月は同+59%、4-6月期は同+31%、7-9月期以降は同+21%程度の伸びに鈍化する見通しとなっています。

内部資金だけでのAI・半導体投資の拡大は転換点に差し掛かりつつあるといえます。SOXはハイパースケーラーの設備投資に1四半期前後先行する傾向があります。仮に2026年7-9月から10-12月が設備投資サイクルの明確なピークとなる場合は半導体株も2026年4-6月から7-9月前後にピークをつける恐れが意識されやすいです。

ハイパースケーラー企業の設備投資とSOX、日経半導体指数

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)2026年4-6月期以降の設備投資はBloomberg集計のコンセンサス予想。2026年7月24日時点。
(出所)Bloomberg、フィラデルフィア証券取引所、日本経済新聞社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

ハイパースケーラー企業の設備投資と営業CFの見通しでは、2027年後半以降に「営業CF>設備投資」となる場面が見込まれており、今後の採算を前提に、足元の資金不足懸念は一時的という解釈も可能です。この場合、一時的に外部資金に頼ることも正当化できるでしょう。今のところ大規模なM&A(合併・買収)金額が継続しており、こうした資金の出し手の一角である外国企業や米プライベートファンドによるハイパースケーラー設備投資の肩代わりが相次ぐことで、上記の循環取引懸念を伴いつつも、設備投資サイクルが継続する展開も想定できます。

世界半導体売上は2026年5月にかけて急拡大し、世界のGDP(国内総生産)に占める半導体売上は1.2%超に達するようになりました。世界半導体売上のGDP比は、1999年以降は0.3-0.7%で長らく推移してきましたが、AIの普及、更なる高性能半導体への需要、半導体生産の一極集中(寡占化)などに伴い、世界の半導体売上のGDP比が大きく上振れる「半導体ショック」が生じる過程にあるともみなせます。

世界半導体売上のGDP比とSOXの世界時価総額比、S&P500時価総額比

AI・半導体株懸念を象徴するSOXの20%安 安定化に1-2ヶ月要する傾向も 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)世界半導体売上のGDP比の実績は2026年4月まで。先行きの世界半導体市場規模のGDP比はWSTS(2026年6月2日公表)とIMF世界経済見通し(2026年4月14日時点)をもとにした数値。SOXの世界時価総額比、S&P500時価総額比は2026年7月24日時点。
(出所)フィラデルフィア証券取引所、S&P、WSTS、IMFより野村證券市場戦略リサーチ部作成

ただし、SOXの時価総額は11.8兆米ドルで、既に世界の株式時価総額の10%前後、米国の株式時価総額の22%前後を占めています。世界GDPに対する半導体比率の一段の上振れをある程度織り込んでいる可能性があり、その反動は今後も警戒されやすいでしょう。一方、高所恐怖症に近い市場心理がみられるようになると、半導体売上の更なる拡大や半導体企業の巨額な利益水準が継続し、株価にとっての安心材料となる場面も生じうるでしょう。

野村證券の株価指数見通し

トップダウンでみたS&P500のEPS(1株当たり利益)は、2025年の269.3から、2026年336.2(前年比+24.9%)、2027年376.5(同+12.0%)、2028年411.6(同+9.3%)と引き続きみています。野村證券が予想する通り、米国実質GDPが2026年+2.3%、2027年+1.9%、CPIが2026年+3.3%、2027年+2.2%であれば、FF金利が3.625%のままで10年国債利回りが4%台半ばであっても、「G>R(名目GDP成長率>名目金利)」が長期化し、株式市場にとっては基本的にポジティブな環境となりやすいでしょう。EPS拡大を背景とした株高という業績相場局面に入っており、景気拡大が続く限り、業績拡大局面は続きやすいとみています。

S&P500見通しはメインシナリオで2026年末7,900、2027年末8,300、2028年末8,700という予想を維持します。米国株の期待リターンは配当込みで+6-7%前後と引き続き試算しており、配当を除く株価指数ベースでは年+5%前後の上昇が持続可能と考えています。S&P500の予想PERが足元の19-21倍前後から大きく切り上がりにくいと想定していますが、2027年のEPS(375前後)にPER21倍を適用すると7,900前後が2026年末の妥当値とみなせます。

米国株見通しと上下シナリオ
2026年12月 2027年6月 2027年12月 2028年6月 2028年12月
メインシナリオ:地政学リスクが早期に収束して景気・業績拡大やAI需要拡大が緩やかに減速しつつも継続、利下げがなくとも「G>R」継続 7,900 8,100 8,300 8,500 8,700
上振れ:AI活用による生産性・収益性改善がユーザー企業を含めて顕在化、先端技術分野等の設備投資が一段と加速 8,600 9,000 9,200 9,500 9,700
下振れ:イラン情勢を含む地政学リスクが長期化(3-4四半期)で景気・業績が顕著に下振れ、AI需要が失速 7,000 7,100 7,200 7,200 7,400

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部)

編集元アナリストレポート

米国マクロメモ:7月はリバーサル一色 – AI・半導体株懸念でも景気・業績を支えに株価指数全体は底堅さを示す(2026年7月28日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

  • EL_BORDEをフォローする
  • Pick up

    ページの先頭へ