2026.08.27 NEW
エヌビディア・セールスフォース決算通過 AI半導体市場へのインプリケーション 野村證券・村山誠
撮影/タナカヨシトモ(人物)
株式市場に与えるインパクトが大きい米半導体大手のエヌビディアの2026年5-7月期決算が、8月26日(米国時間)取引終了後に発表されました。決算発表直後の時間外取引では、株価は一時終値比3%近く下落していましたが、その後は上昇に転じました。マーケットはエヌビディアの決算内容をどのように評価したのでしょうか。決算のポイントと米国株式市場への影響について、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。
決算実績は、売上高、調整後EPSともに市場予想を上回るも粗利率が小幅に下回る
米国時間26日引け後に、エヌビディアが、2026年5-7月期(2027年1月期第2四半期)決算を発表しました。
| 実績 | 市場予想比 | 前年同期比 | |
| 売上高 | 962億ドル | +4.3% | 2.06倍 |
| EPS | 2.22ドル | +6.2% | 2.20倍 |
| 会社見通し | 市場予想比 | |
| 売上高 | 1,080億ドル±2% | +3.7% |
| 粗利率 | 74.0±0.5% | 市場予想平均は
74.9% |
(注)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。
(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成
売上高は、前年同期比2.06倍の962.21億米ドルとなりました。市場予想平均は922.71億米ドルだったので、実績は上回りました。期初に会社は、売上高は910億米ドル±2%(891.80~928.20億米ドル)との見通しを示していたので、実績は会社予想レンジを上回りました。
調整後売上高総利益率(粗利率)は75.0%でした。市場予想平均は75.1%でしたので、実績は小幅に下回りました。期初に会社は75.0±0.5%(74.5~75.5%)との見通しを示していましたが、実績は会社予想レンジの中間値75.0%と一致しました。
調整後EPS(1株当たり利益)は、前年同期比2.20倍の2.22米ドルでした。市場予想平均は2.09米ドルだったので、実績は上回りました。
会社の売上高見通しは市場予想平均を上回るも粗利率が下回る
2026年8-10月期について会社は、売上高の見通しを1,080億米ドル±2%(1,058.40~1,101.60億米ドル)としました。市場予想平均の売上高は1,041.83億米ドルだったので、会社予想レンジは市場予想平均を上回りました。会社は、中国におけるデータセンター向けの売上高については、見通しの中に含めていないとのことです。
調整後売上高総利益率について会社は、74.0±0.5%(73.5~74.5%)としました。市場予想平均は74.9%で、会社予想レンジの中間値は市場予想平均を下回りました。
決算資料の中で、CEO(最高経営責任者)のジェンスン・フアン氏は、「AIは転換点を迎えた。すでに実際に役立つ仕事をこなしている。AIが生み出すトークン(生成AIが文章を読み書きする際の情報の最小単位)は、生産性向上にも利益創出にもつながっている。いまや計算資源そのものが売上を生む」と述べています。
そして、「しかも需要はさらに加速している。昨年の今ごろ、インフラ整備を牽引していたのは実質的に一つのAIラボ(開発企業など)だけだった。だが今は、新しいAIラボやスタートアップの黄金期にあり、複数の最先端AI開発組織が並行して規模を拡大し、オープンモデル(AIの内部データや仕組みが公開されたモデル)を軸にしたエコシステムも活気づき、現実世界で動くAIも本格的に立ち上がりつつある。米国でも世界各地でも勢いは強い。AIインフラの構築は全速力で進んでいる。いま本格生産に入ったVera Rubinは、まさにこの局面を支えるために作られた」と述べています。
保証額は2026年4月末の35億米ドルから1,085億米ドルに
顧客となるAIデータセンター運営会社が支払うリース料等への保証額、”Facility Lease Guarantee”は、2026年4月末は35億米ドルでした。2026年7月末は、名称は”Land, power, and shell guarantees for AI clouds”に変更されていますが、金額は35億米ドルで変わりませんでした。
ただし、8月に締結したSB Energyへの保証額1,050億米ドルが加わったことから、決算発表時点では、AIデータセンター等への保証額は総額で1,085億米ドルとなりました。
時間外で株価は一時下落後、反転上昇
26日にエヌビディアの株価は、前日比-1.59%の209.66米ドルで引けました。決算発表直後の時間外取引で株価は一時、終値比2%超下落していましたが、その後は上昇に転じ、NY時間17時37分時点では、終値比+4.51%の219.12米ドルとなっています。
決算実績の売上高、調整後EPSは市場予想を上回り、2026年8-10月期の会社売上高見通しが市場予想平均を上回ったものの、調整後売上高総利益率見通しの中間値が決算実績を小幅に下回り、2026年8-10月期の会社調整後売上高総利益率見通しの中間値が市場予想平均を下回ったことに、当初はネガティブに反応したとみられます。
その後、株価が反転上昇した要因は、決算説明会における会社からの追加的な説明を受けてのことと推察されます。決算説明会でコレット・クレスCFO(最高財務責任者)は、2028年1月期の売上高は前年比で約70%増えると予想していると説明しました。ファクトセット集計による市場予想平均では、2028年1月期の売上高は前年比+44.4%となっています。市場予想平均を上回る会社見通しに、ポジティブに反応したとみられます。
26日引け後には、ソフトウェア大手のセールスフォースも決算を発表
セールスフォースの2026年5-7月期は、決算実績および2026年8-10月期の会社見通しの売上高、調整後EPSはともに市場予想平均を上回りました。2027年1月期通期について会社は、売上高、調整後EPSとも、予想レンジを引き上げました。
決算発表と同時にセールスフォースは、AI開発のアンソロピックとの戦略的パートナーシップ「クロードフォース」を発表し、提携を拡大するとしました。アンソロピックのAIモデル「クロード」と、セールスフォースのCRM(顧客関係管理)ソフトウェア等を統合し、自律的に業務をこなすAIエージェントサービスを拡充するとしています。
決算発表後にセールスフォースの株価は上昇していますが、堅調な業績と、アンソロピックとの戦略的パートナーシップの拡大が好感されていると推察されます。2025年秋以降、ソフトウェア企業についてはAIの普及による業績への影響が懸念されてきました。今後発表されるソフトウェア企業の決算でも、今回のセールスフォースの事例にみられるようなAIへの対応を示すか、確認していきたいと思います。
決算通過後、株式市場の当面の注目点は
今回のエヌビディアの決算では、粗利率(調整後売上高総利益率)が、決算実績で市場予想平均を僅かながらも下回り、2026年8-10月期についても、会社予想レンジの中間値が市場予想平均を下回るなど、メモリー価格の上昇などが収益性を圧迫していることが窺えました。一方で、2028年1月期について、会社が市場予想平均を上回る増収率見通しを示すなど、エヌビディアの製品に対する需要は強いことがみえました。
なお、メモリー価格の上昇は、他の企業、例えばスマートフォンのメーカーや、AIサーバーなどを製造する企業においてもコストアップ要因となると考えられます。また、AIデータセンターの建設を進める企業群にとっても、投資額が当初計画を上回ることにつながりかねず、今後、状況を注意してみていきたいと思います。
半導体企業の決算では、8月27日にはマーベル・テクノロジーが、9月2日にはブロードコムが2026年5-7月期決算の発表を予定しています。両社ともAI用半導体が成長のけん引役となっている企業であり、両社の業績や受注動向をチェックし、AI半導体の業界動向を確認したいと考えます。
また、SIA(米国半導体工業会)が毎月上旬に発表している世界の半導体売上高など、半導体業界に関する統計などもフォローしていきたいと考えます。
8月6日に発表した2026年6月(直近月までの3ヶ月移動平均)の世界半導体売上高は、前年同月比+123.6%(2.236倍)となりました。世界の半導体需要が引き続き強いことが確認できましたが、いつまでもこのようなペースで半導体市場の急拡大が続くとは考えづらく、いずれかの時点で拡大ペースが鈍化すると予想されます。9月上旬に発表される見込みの2026年7月分についても、注意してみていきたいと考えます。
- 野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠 - 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。
※記事の中で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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