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2026.08.27 NEW

日本経済の節目となりうる夏 概算要求総額は144兆円に近くなるかに注目 野村證券・桑原真樹

日本経済の節目となりうる夏 概算要求総額は144兆円に近くなるかに注目 野村證券・桑原真樹のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

各省庁が財務省へ提出する2027年度予算の概算要求が、今月末に締め切られます。高市早苗政権は成長戦略として、AI・半導体など戦略17分野へ総額370兆円超の官民投資を掲げており、概算要求には上限を設けない「投資枠」を用意しました。投資枠の内容や公的支出の割合、概算要求総額の規模はどのようになりそうか、野村證券シニア金利ストラテジストの桑原真樹が解説します。

日本経済の節目となりうる夏 概算要求総額は144兆円に近くなるかに注目 野村證券・桑原真樹のイメージ

経産省は「投資枠」4.5兆円と報道、「事項要求」でさらに膨らむか

ANNは8月19日、経済産業省が概算要求において、成長戦略の「投資枠」に4.5兆円を計上すると報じました。要求金額を明示しない「事項要求」もあり、総額はさらに膨らむ見通しとしています。

筆者は2027年度当初予算の試算において、「投資枠」を7兆円と仮定していました。内閣府の中長期試算においては、10兆円の追加的財政支出が仮定されています。これらの数値との比較では、経済産業省のみで4.5兆円の「投資枠」は大きい印象も受けます。

一方で、成長戦略がAI・半導体など17の産業分野の育成を念頭に置いていることを考えると、経済産業省からの要求が大きいことは自然とも考えられます。他省庁からの「投資枠」要求額や、概算要求総額についての今後の報道に注目したいです。

官民投資に占める公的支出の割合が焦点

ANNによる報道は、4.5兆円の要求の内訳を網羅しているわけではありませんが、AI・半導体・ロボット分野に1.4兆円、中小企業向けの投資支援に0.9兆円、ナフサなどの安定供給強化に0.22兆円が要求されるとのことです。また、8月19日付日本経済新聞は、重要鉱物の確保に0.7兆円を求めると報じています。

政府の成長戦略においては、2040年度までに370兆円の官民投資が想定されており、そのうちどの程度が公的支出かが問題となります。AI・半導体分野の官民投資は101.6兆円となっていますが、AI・半導体分野の2027年度「投資枠」が経済産業省の1.4兆円のみであり、かつ2040年度までの14年間、同じ金額が続いたとすると、同分野への「投資枠」は累計19.6兆円となり、官民投資101.6兆円の2割程度となります。

戦略17分野の官民投資額(2040年度まで)
兆円
AI・半導体 101.6
フィジカルAI 10.5
AI用半導体 68.0
バーティカルAI 23.1
デジタル・サイバーセキュリティー 55.4
データプラットフォーム 0.9 (35年度)
政府などのAX/DX基盤 7.4 (35年度)
先進セキュリティ製品 1.0 (35年度)
蓄電池など 32.7 (35年度)
医療DX基盤 5.2
自動運転技術 8.2
情報通信 28.8
光ネットワーク 5.9
海底ケーブル 2.4
次世代ワイヤレス 20.5
量子 13.2
量子コンピューティング 10.3
量子通信・ネットワーク 1.5
量子センシング 1.4
防衛産業 5.0
小型無人機 0.4
艦艇 0.3
デュアルユース技術 4.3
航空・宇宙 18.5
民間航空機 3.5
無人航空機 0.3
空飛ぶクルマ 0.4
ロケット・射場 2.3
人工衛星・サービス 6.4
月面探査・低軌道技術 5.6
海洋 3.3
海洋ドローン 1.2
海洋状況把握(MDA) 1.2
海底開発技術 0.9
フードテック 9.7
植物工場 4.6
陸上養殖 2.9
食品機械 1.2
新規食品 1.0
港湾ロジスティクス 1.2
港湾荷役機械 0.4
港湾物流DX 0.2
次世代型倉庫 0.6
造船 1.1
次世代船舶 1.0 (34年度)
船舶修繕 0.1 (35年度)
LNG運搬船 今後精査
マテリアル(重要鉱物・部素材) 16.9
永久磁石 0.2
グリーン鉄* 4.2
金属部素材 0.3
低炭素金属部素材 0.7
鉱石の精錬技術 6.3
複合新素材 5.2
合成生物学・バイオ 33.6
バイオものづくり 12.8
バイオ医薬品* 20.8
創薬・先端医療 64.1
画期的医薬品 23.4
感染症対応製品 7.2
バイオ医薬品* 20.8
AI先端医療 11.6
健康サービス 1.1
資源・エネルギー安全保障・GX 28.8
次世代太陽電池 4.1
水素など 6.2
グリーン鉄* 4.2
次世代型地熱 1.0
洋上風力 5.1
次世代革新炉 5.0
GXケミカル 3.2
核融合 3.1
核融合技術 3.1
防災・国土強靭化 2.6
防災技術 2.6 (30年度)
コンテンツ(アニメ・ゲームなど) 33.7
ゲーム 24.5 (33年度)
アニメ 3.3 (33年度)
漫画 1.6 (33年度)
音楽 3.0 (33年度)
実写 1.3 (33年度)
合計(重複除く) 370.0

(注)年度の記載がある場合はその年までの官民投資額。グリーン鉄とバイオ医薬品は2度計上。艦艇は今後改定される安保3文書を反映。
(出所)内閣官房より野村證券市場戦略リサーチ部作成

重要鉱物については、官民投資額が16.9兆円である一方、0.7兆円の「投資枠」が14年間続けば累計9.8兆円となり、公的支援の割合は6割程度となります。もちろん、14年間同じ「投資枠」が続くとは限らず、あくまで参考値ですが、分野によって公的支援の割合は異なるのかもしれません。

要求総額は144兆円に近くなるか?

例年、8月末にかけては概算要求についての報道が多くなってきます。省庁別の要求額や国債費についての報道が予想されますが、特に総額がいくらになるかについての報道に注意しておきたいです。たとえば2025年には、8月22日に共同通信が、2026年度予算要求は120兆円前後と報じています(実際の要求額は122.4兆円)。

共同通信は8月21日、2027年度の一般会計概算要求総額が130兆円を超える見通しになったと報じました。筆者の2027年度一般会計歳出総額についての試算が139.5兆円、特別会計で別枠管理される分を入れると141.5兆円であることと比較すると、概算要求総額が130兆円を超えること自体は驚きではありません。最終的な要求額が130兆円をどの程度上回るか注目されるでしょう。

7月27日付の日本経済新聞によれば、「投資枠」のうち最終的には特別会計で別枠管理される分についても、要求段階ではいったん一般会計に計上されます。筆者は様々な仮定に基づき、2027年度一般会計歳出総額を139.5兆円、別枠管理の「投資枠」を2兆円と試算しており、合わせれば141.5兆円となります。一方筆者の集計では、これまでの報道を踏まえると、2027年度概算要求総額は2026年度要求額を21兆円以上上回ることになり得ます。特別会計分を含む集計であるため正確な比較ではありませんが、2026年度一般会計概算要求総額が122.4兆円であったことから、2027年度要求額は144兆円に近くなる可能性があるでしょう。筆者が試算した141.5兆円よりも2兆円以上大きいイメージです。

過去を振り返ると、当初予算の歳出総額は概算要求総額を下回ることが多かったですが、2026年度についてはほぼ同額となっており、概算要求額は2027年度当初予算の規模を推し量るための一定の目安にはなるでしょう。「事項要求」が多く含まれるのであれば、概算要求に対して予算が大きくなる要因となるため注意が必要ですが、財務省との折衝の結果、要求額より予算が小さくなることもあると考えられます。

これまでの報道によれば、防衛省の要求額は8.9兆円の見込みですが、実際の予算は10兆円規模となる可能性があり、要求額に対して予算が1兆円以上膨らむことになるかもしれません。逆に、国債費は前年度の一般会計純剰余金の半分を債務償還費として含んだ金額が要求されるのが常ですが、同剰余金は実際には補正予算の財源となることが多く、2027年度については2025年度純剰余金の半分に当たる1.3兆円分、予算が要求額を下回る要因となる可能性があります。

日本経済の節目となりうる夏 概算要求総額は144兆円に近くなるかに注目 野村證券・桑原真樹のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
桑原 真樹
2000年野村総合研究所入社。日本のマクロ経済に関する調査・分析・予測を担当、その経験を活かし2023年からは主に財政面から日本国債市場についての分析を担当。共著書として『日本経済 地方からの再生』(2009年 東洋経済新報社)がある。2000年東京大学経済学部卒業。2006年米カリフォルニア大学デイビス校大学院経済学研究科修了。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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