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2026.08.04 NEW

野村證券の日銀見通しを変更 次の利上げは10月メイン、12月リスクシナリオに 野村證券・森田京平

野村證券の日銀見通しを変更 次の利上げは10月メイン、12月リスクシナリオに 野村證券・森田京平のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

日本銀行は2026年7月31日に開いた金融政策決定会合(以下、決定会合)で、政策金利を据え置きました。景気・物価の中心的な見通しを維持する一方、物価の上振れリスクをより鮮明に示しました。野村證券金融経済研究所チーフ・エコノミストの森田京平が、2026年10月、2027年3月、同年7月の利上げを見込む新たなメインシナリオについて詳しく解説します。

野村證券の日銀見通しを変更 次の利上げは10月メイン、12月リスクシナリオに 野村證券・森田京平のイメージ

7月金融政策決定会合:(1)政策金利据え置き、(2)高田委員が利上げ提案

日銀は7月31日、決定会合を終えました。政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導水準は「1.0%程度」に据え置かれました。市場予想に沿った決定で、サプライズはありませんでした。

一方、高田創審議委員が据え置きに反対し、賛成8、反対1での決定となりました。高田委員は「海外発の需要ショックによる物価の上振れリスクや海外の金融環境の転換に即応した機動的な対応が必要な新たな局面に入った」として利上げを提案しましたが、否決されました。高田委員がいう「海外発の需要ショック」と「海外の金融環境の転換」は、それぞれ「世界的なAI需要」と「円安の進行」を意識したものと推察されます。

展望レポート:(1)景気・物価の中心的な見方は変わらず、(2)物価の上振れリスクをより鮮明に意識

決定会合後、日銀は「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)を公表しました。今回の展望レポートでは、実質GDP(国内総生産)やCPI(消費者物価指数)の見通しに特筆すべき変更は見られませんでしたが、以下の4点を確認できました。

第1に、世界的なAI関連需要の増加にたびたび言及しつつ、日本経済が緩やかな成長を続けるとの見方が維持されました。

第2に、AI関連需要の増加や円安による物価押し上げ効果に触れながら、基調的なCPIインフレ率が2026年度後半から2027年度にかけて2%程度に達するとの見方が据え置かれました。

第3に、企業の賃金・価格設定行動の積極化や中長期的な予想インフレ率の上昇を踏まえ、基調的なCPIインフレ率が2%程度を超えて上振れするリスクが明記されました。展望レポートに盛り込まれたのは初めてですが、すでに6月の決定会合後、内田眞一副総裁が植田和男総裁の代理として臨んだ記者会見で言及されていました。

第4に、2027年度と2028年度のコアCPI(生鮮食品を除く)について、前回4月の展望レポートにはなかった「下振れリスクが大きい」との見方が新たに加わりました(2027年度1人、2028年度2人)。高市早苗内閣が任命した浅田統一郎委員と佐藤綾野委員の見方と推察されます。

野村の金融政策見通し:新たなメインシナリオでは「26年10月、27年3月、27年7月」の利上げを予想

野村證券は日銀の金融政策シナリオを変更します。

野村の日銀シナリオ
メインシナリオ
(確率60%)
リスクシナリオA
(確率30%)
リスクシナリオB
(確率10%)
●追加利上げ回数 ・2026年1回
・2027年2回
・2026年1回
・2027年1回
・2026年1回
・2027年2回
●利上げのタイミング ・2026年10月
・2027年3月
・2027年7月
・2026年12月
・2027年6月
・2026年9月
・2027年1~3月
・2027年6~7月
●政策金利水準
 ・現在
 ・2026年末
 ・2027年末
 1.00%
 1.25%
 1.75%
 1.00%
 1.25%
 1.50%
 1.00%
 1.25%
 1.75%

(注)各シナリオの確率分布は一定の有力性のあるシナリオについての相対的なものであり、これら以外のシナリオの実現性を排除するものではない。
(出所)野村證券経済調査部作成

新たなメインシナリオ(確率60%)では、2026年10月、2027年3月、2027年7月の計3回の利上げを見込みます。背景には、(1)従来の前提を上回る米ドル・円相場の推移(円安の進行)、(2)拭い切れない原油価格の再上昇リスク、(3)円安と原油価格の再上昇が中長期的なインフレ予想のパスを上振れさせるリスク、があります。一方、このメインシナリオには、(a)個人消費の反動減や熊本地震の影響により、7-9月期の景気が一時的に停滞するリスク、(b)2027年度の春季労使交渉(春闘)の動向がカギとなることなど、さらに確認を要する点も残ります。

従来のメインシナリオである「2026年12月、2027年6月」を、リスクシナリオA(有力なリスクシナリオ、確率30%)として維持します。今後、物価の上振れリスクが一定程度落ち着けば、このシナリオの蓋然性が高まるでしょう。

また、市場では円安の進行を意識して、次回9月の決定会合での利上げにも関心が高まっています。こうした問題意識に応えるため、今回、新たにリスクシナリオB(有力性の低いリスクシナリオ)を設定しました。このシナリオでは、2026年9月、2027年1~3月、2027年6~7月の利上げを見込みますが、確率は10%とかなり低く設定しています。円安の進行ペースが一段と加速し、中立金利の立ち位置にかかわらず、日銀が利上げに追い込まれるケースが該当します。ただし、野村證券はこのシナリオの蓋然性は低いとみています。

なお、日本の基調的なインフレ率が円安や原油高に依存せず、内生的・自律的に上振れする力は今なお限られると、野村證券は評価しています。したがって、現時点では、いずれのシナリオでも政策金利が2%以上に達するとは見込んでいません。

野村證券の日銀見通しを変更 次の利上げは10月メイン、12月リスクシナリオに 野村證券・森田京平のイメージ
野村證券 金融経済研究所 チーフ・エコノミスト
森田 京平
1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフ・エコノミストを務めた。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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