2026.09.16 NEW
米中間選挙 上下院結果別の4つのシナリオで「為替」を予想 野村證券・後藤祐二朗
撮影/タナカヨシトモ(人物)
11月3日に米国の中間選挙が予定されています。選挙結果によって、金融市場はどのような反応をするでしょうか。今回は上下院結果別の4つのシナリオ(①上下院共和党、②上院共和党・下院民主党、③上院民主党・下院共和党、④上下院民主党)に分け、想定される為替の反応を分析します。野村證券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストが解説します。
金融政策への影響と「米ドル離れ」傾向加速のリスクが焦点に
第2次トランプ米大統領政権発足後の米ドル指数の値動きを振り返ると、米国と海外の5年金利差とおおむね連動して推移してきました。ただし、2025年4月の関税ショックや、2026年1月にトランプ大統領がグリーンランド領有の主張を強めた際など、金利差に比べて米ドルが大きく減価した局面もみられました。足元でも、米長期債・超長期債利回りの上昇と米ドル安が同時進行しています。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
米国債利回りに比べ、海外投資家による米国債への投資が鈍い状況も続いており、中長期的な「米ドル離れ」の可能性も米ドル相場にとって重要と言えます。2026年前半は、海外投資家による積極的な対米株式投資が需給面で米ドルを支えています。株式市場における「米ドル(米国)離れ」の有無も重要でしょう。
中間選挙が米ドル相場に与える影響を考える上でも、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策に及ぼす影響や「米ドル離れ」への影響が重要となります。基本観としては、FRBの利上げ加速により米国債利回りがフラット化しながら上昇するベアフラット化のケースが、米ドル相場にとって最もポジティブとなる一方、FRBが利上げできない中で長期・超長期債が相対的に売られ、利回り曲線がブルスティープ化するケースが最もネガティブとなるでしょう。米国株への投資意欲が維持されるかどうかも重要です。
米金融政策を通じた影響―共和党が上下院維持で利上げ期待から米ドル高に
①の共和党が下院で過半数を維持し、上下院ともに共和党が過半数を確保するシナリオでは、必要に応じた財政政策の発動が、ねじれ議会のシナリオに比べて相対的に容易となるでしょう。
| 上院 | 下院 | 金融政策を 通じた影響 |
ドル離れを 通じた影響 |
原油価格を 通じた影響 |
対中関係を 通じた影響 |
ドル見通し への影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 共和党 | 共和党 | + | + | +/- | - | ドル高反転のリスク上昇 |
| 共和党 | 民主党 | -- | - | - | +/- | ドル安トレンド継続 |
| 民主党 | 共和党 | - | - | - | +/- | ドル安トレンド継続 |
| 民主党 | 民主党 | - | -- | -- | +/- | ドル安トレンド継続 |
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成
大規模な追加財政政策が成立する可能性は低いとはいえ、景気下振れ時における金融政策の負担は低下するとみられます。また、AIデータセンター規制の厳格化が進まなければ、ハイパースケーラーによる投資が景気をけん引することも期待されます。ウォーシュ議長などFRB高官の一部は、AIによる生産性向上がディスインフレ的に作用する可能性をみていますが、短期的には投資増によるインフレ圧力の高まりも懸念されます。株高にもつながりやすいシナリオと言え、2027年に向けてFRBが利上げに動く必要性は高まりやすいでしょう。上院を共和党が維持することで、パウエル理事の後任などにハト派が指名される可能性は高く、政治的な利下げ圧力への警戒は残ります。ただ、金融政策面では米ドル高につながりやすいシナリオでしょう。
一方、②の上院では共和党が過半数を維持するものの、下院を民主党が奪還するシナリオでは、ねじれ議会の下で財政政策による景気下支えは期待しにくくなります。民主党の優勢により、先行きのAIデータセンター規制厳格化への懸念もくすぶりそうです。上院で共和党が過半数を確保することで、FRB人事におけるハト派化のリスクも残ります。ファンダメンタルズ面での利上げの必要性は低下する一方、政治的な利下げ圧力が維持されることで、FRBが利上げに動く可能性は低下し、米ドル安に作用するでしょう(なお、③の上院で民主党、下院で共和党が過半数を確保する確率は低いとみられている)。
④の上下院ともに民主党が過半数を確保する場合、トランプ大統領の対応次第で財政政策が大規模化する余地は出てきますが、基本シナリオでは財政規模は最低限にとどまりやすいとみられます。AIデータセンター規制の厳格化リスクが高まり、株安や景気への悪影響が警戒されるでしょう。FRB人事がハト派化するリスクは後退し、FRBの独立性への警戒は緩和されやすいものの、利上げの必要性は限定されやすいとみられます。財政政策を巡る議論の進展次第という面はありますが、民主党が上下院を確保する場合も、米ドル安材料となりやすいでしょう。
市場想定通りにねじれ議会となれば、米ドル安トレンド継続の公算
トランプ大統領の支持率が低下する中、オンライン予想サイトでは、少なくとも下院で共和党が過半数を割り込む可能性が高いとみられています。支持率の低下とともに米ドル安が進んできたことからも、民主党が上下院のいずれか、または両院で過半数を獲得するケースでは、米ドル安傾向が維持されやすいとみます。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
一方、共和党が上下院で過半数を維持するシナリオは市場にとってサプライズとなり、短期的に米ドルの買い戻し機運が高まる可能性をみておく必要があるでしょう。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗 - 為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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