2026.08.14 NEW
野村證券の日銀見通しを変更 9月利上げをメインシナリオに、年内2回利上げのリスクシナリオも 野村證券・森田京平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
日本銀行が物価の上振れリスクへの警戒を強めるなか、野村證券は日銀の金融政策シナリオを変更します。野村證券金融経済研究所のチーフ・エコノミスト、森田京平が、2026年9月、2027年1月、同年4月の利上げを見込む新たなメインシナリオを詳しく解説します。
日銀シナリオ:(1)9月利上げを新たなメインシナリオに、(2)有力なリスクシナリオとして「年内2回、計4回の追加利上げ」も
野村證券は日銀の金融政策シナリオを以下のように変更します。
| メインシナリオ (確率60%) |
リスクシナリオA (確率25%) |
リスクシナリオB (確率15%) |
|
|---|---|---|---|
| ●追加利上げ回数 | ・2026年1回 ・2027年2回 |
・2026年2回 ・2027年2回 |
・2026年1回 ・2027年1回 |
| ●利上げのタイミング | ・2026年9月 ・2027年1月 ・2027年4月(注) |
・2026年9月 ・2026年12月 ・2027年3月 ・2027年6月 |
・2026年10月 ・2027年3~4月 |
| ●政策金利水準 ・現在 ・2026年末 ・2027年末 |
1.00% 1.25% 1.75% |
1.00% 1.50% 2.00% |
1.00% 1.25% 1.50% |
(注)各シナリオの確率分布は一定の有力性のあるシナリオについての相対的なものであり、これら以外のシナリオの実現性を排除するものではない。高市内閣は2027年4月から2年間、飲食料品を対象に消費減税を行うことを決定している。本減税策との兼ね合いで、メインシナリオで見込む2027年4月の利上げが前後する可能性もある。
(出所)野村證券経済調査部作成
新たなメインシナリオでは、2026年9月、2027年1月、同年4月の追加利上げを見込みます。この場合、ターミナルレートは1.75%(2027年4月到達)となります。
日米協調介入(7月31日)後の8月4日、ベッセント米財務長官はNHKとのインタビューで、円安の本格的な是正に必要なことについて、「日本の政策が着実に実施されていくことを確認する必要がある。日本の物価上昇の要因の一部は円安とエネルギー価格の上昇にある。エネルギー価格が落ち着き、過度な円安が解消されれば物価上昇も低下に向かう」と述べました。日銀自身も物価の上振れリスクへの警戒を強めていることや、市場が9月の利上げを織り込む度合いが70%を超えていることなどを踏まえ、野村證券は次回利上げの時期を従来のメインシナリオである10月から9月に前倒しします。
野村證券がターミナルレートを見定めるうえで注目するのは「利上げ継続期間」であり、中立金利の水準ではありません。野村證券は、コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)でみたインフレ率が、2027年1-3月期に前年同期比3%を上回るピークに達した後、同年後半には2%前後(消費減税の影響を除く)に低下するとみています。この場合、2027年4月の展望レポートまでには「物価の基調が上振れるリスク」への警戒が弱まるとみられます。この点を踏まえ、2027年4月をもって、いったん利上げが終了するとみています。
なお、高市内閣は2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げることを閣議決定しています。政府が減税と同時期の利上げに慎重な対応を日銀に求めるなど、消費減税との兼ね合いから、2027年4月の利上げ時期が前後する可能性があります。 有力なリスクシナリオAでは、追加で4回(2026年9月、同年12月、2027年3月、同年6月)の利上げを見込みます。この場合、ターミナルレートは2.00%となり、2027年6月に到達します。政策金利が2%に達するのは33年ぶりです。
現在の日銀の金融政策運営姿勢は(1)現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく(2)調整のタイミングやペースについては、中東情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討していくという2段階で構成されています。
野村證券が9月に見込む次回利上げ以降も、円安が進むなどして物価の上振れリスクが一段と強まれば、上記(2)の「リスク」の観点から、利上げの「ペース」がメインシナリオより速まる可能性があります。この場合、リスクシナリオAの蓋然性が高まるとみられます。ただし、このシナリオでも、日銀の利上げが2027年半ばまでにいったん終了するとの見方は、メインシナリオと共通しています。
なお、直近に発表された7月の米国CPIと同月の日本CGPI(企業物価指数)は、いずれもリスクシナリオAの確率をさらに高める材料ではありませんでした。
可能性が低いリスクシナリオBでは、追加利上げの時期を2026年10月と2027年3~4月とみています。この場合、ターミナルレートは1.50%にとどまります。
城内実経済財政政策担当相は、ベッセント米財務長官による上記発言後の8月10日、ブルームバーグとのインタビューで、高市内閣の経済政策を通じて日本への投資や円建て資産への投資が増えることで、「円安が継続するとは考えていない」「むしろ円に上昇圧力をかける可能性がある」と述べました。
こうした姿勢が高市内閣内で強ければ、同内閣が日銀による利上げペースの加速を支持しない可能性があります。城内大臣は2025年10月の高市内閣発足以降、2026年1月の決定会合を除き、毎回の決定会合の2日目に出席しています。
こうしたなか、日銀が慎重な利上げ姿勢をとれば、リスクシナリオBの蓋然性が高まるとみられます。
- 野村證券 金融経済研究所 チーフ・エコノミスト
森田 京平 - 1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフ・エコノミストを務めた。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
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