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2026.09.17 NEW

FRBは全会一致で利上げ決定 ウォーシュ議長は物価安定の信認維持に成功 野村證券・小清水直和

FRBは全会一致で利上げ決定 ウォーシュ議長は物価安定の信認維持に成功 野村證券・小清水直和のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

FRB(米連邦準備理事会)は、2026年9月15〜16日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、25bp(ベーシスポイント)の利上げを決定しました。FRBが利上げを行うのは3年2ヶ月ぶりとなりました。利上げに至った背景や今後の金利見通しについて、野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストが解説します。

FRBは全会一致で利上げ決定 ウォーシュ議長は物価安定の信認維持に成功 野村證券・小清水直和のイメージ

反対票出ず、全会一致で25bp利上げを決定

9月16日のFOMCでは、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標レンジを25bp引き上げ、3.75%~4.00%としました。決定は全会一致でした。今回の利上げ決定は、インフレ率を目標の2%へと「より素早く戻す(a timelier return)」ためとしました。

FOMC参加者らは、全般的に、インフレ率が5年以上にもわたり目標を上回り続けることを懸念していました。インフレ減速の基調的な動きが止まってしまったかという判断にはまだ時間が必要とみられますが、今回のFOMCは、先々でのインフレリスクが高まっていることを踏まえ、インフレ減速の動きをより確実なものにするために利上げを選択した形です。

事前には、利上げに対して据え置きを主張する反対票が数名から出るとの見方もありましたが、実際には全会一致となりました。ぎりぎりの判断を迫られていたメンバーらもいた可能性がありますが、ここ1~2週間でトランプ米大統領が利下げの主張を強めていたことを受け、FRBの独立性・信認の観点から利上げを選択した者もいたと推察されます。

最終的に原油高が利上げを後押ししたか

FOMC後の記者会見で、ウォーシュFRB議長は、今回の利上げについて、(1)インフレが目標を上回る状況が長引いていること、(2)経済が強まっていること、(3)金融環境が引き締め的ではないこと、(4)コモディティー価格の上昇が広範な品目に及ぶことを防ぐこと、といった点を説明しました。さまざまな要因が重なる中で、最終的に原油高が利上げ決定を促したと解釈できるでしょう。

ウォーシュ議長は、インフレが「十分な速さで(at sufficient speed)」低下する必要があると述べました。この表現は、ジャクソンホール会議での講演と同様です。ウォーシュ議長は、ジャクソンホール会議の時点から利上げを念頭に置いていた可能性があります。ただし、ジャクソンホール会議の時点では、利上げを唱えるFOMC参加者は少数でした。FOMC参加者の多くは、その後の原油高に後押しされて利上げ票を投じたとみられますが、ウォーシュ議長がある程度議論を牽引した可能性もあるでしょう。

金融環境を重視、ドットチャートでは追加利上げを示唆

またウォーシュ議長が、金融環境が引き締め的ではないとの見方でFOMC参加者が概ね一致している点を示唆したことは、今回の利上げ決定において特徴的です。これまで、FOMC参加者の多くは政策が引き締め的であると表現してきました。しかし、もはやFOMC参加者は、政策が引き締め的とは判断しなくなったことが示唆されます。

ウォーシュ議長が「緩和的な状況を一部取り除いた(removed a dose of accommodation)」と表現したことからは、潜在的には依然として利上げ余地がある可能性がうかがえます。ただし、ウォーシュ議長は「フォワードガイダンスは行わない」とも述べました。 同時に公表された「ドットチャート」をみると、FOMC政策金利見通しの中央値は、2026年末4.125%、2027年末4.125%、2028年末3.875%、2029年末3.625%、長期3.250%でした(前回は同:3.750%、3.625%、3.375%、データなし、3.0625%)。2026年末分は、今回に加えてあと1回、年内合計で2回の利上げを示唆しています。分布に大きなばらつきはなく、大多数が追加利上げが妥当とみていることを示しています。

ドッツ分布(前回6月対今回9月)

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(注)ドッツは、誘導目標レンジ中央値に関するFOMC各参加者の見通し。年末値。大きめの薄青・薄赤の丸印は、会合ごとのドッツの中央値。
(出所)FRBより野村證券市場戦略リサーチ部作成

2027年末分は、その後も当面は据え置きが妥当であることを示唆しています。追加利上げが妥当とみている参加者も多くなっています。あと1名が上方修正すれば、ドッツ自体が上方修正されることになります。

ウォーシュ議長は「信認の罠」の回避にひとまず成功

今回のFOMCでは、いわば「信認の罠」とも呼べる板挟み状況に直面していました。つまり、すでに10月利上げの織り込みが発生している中で、コミュニケーションがタカ派的であれば10月利上げがほぼ確定的なものとして織り込まれてしまいかねない一方、ハト派的であれば物価安定に対する信認が低下したとしてインフレ期待が上昇し、米債がスティープ化(利回り曲線の傾斜の急勾配化)しかねませんでした。この点、FOMC通過後の10月利上げ織り込みは13bp程度となっており、現時点では妥当な織り込みと言えます。米債はベア・フラット化(短期金利上昇を主因とする利回り曲線の傾斜の平たん化)し、BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)は低下して反応しました。ウォーシュ議長は、信認の罠の回避にひとまず成功したと言えるでしょう。

野村證券は追加で12月25bpの利上げを予想

野村證券米国拠点では、今回の25bpの後に、追加で12月に25bp、合計で50bpの利上げを予想しています。コアインフレ(食料・エネルギーを除く)が月+0.2%前後で推移し続ける間は、原油価格高止まりによるインフレリスクに対しては、9月会合の次は12月会合で利上げするように、ある程度間隔を空けた利上げが妥当となるでしょう。

ただし、10月会合に利上げが前倒しされる可能性も排除されません。筆者は、事前には、今回の利上げが先々でのインフレ加速リスクに対応した、いわば「保険的利上げ」という性質になるとみていました(米金融政策見通しを変更 据え置きから年2回の保険的利上げへ)。ウォーシュ議長が、コモディティー価格の上昇が広範な品目に波及することを防ぐという理由を説明した点では、今回の利上げには保険的利上げの性質があったと言えます。しかし、ウォーシュ議長は同時に、FOMC参加者らが金融環境が引き締め的ではないとの見方で概ね一致していることも示唆しました。今回の利上げが、政策の引き締め度合いに関する評価の変化という、より根本的な問題意識に立脚している面もあると言えるでしょう。

インフレ加速で米10年金利は5%台半ばまで上昇するリスクも

米10年金利については、政策金利到達点の市場期待を示す3年先1ヶ月金利と相関が高くなっています。もし原油高の影響が顕在化し、インフレが加速すれば、野村證券米国拠点の予想を超えて利上げが進むリスクもあります。市場が今回を含めて合計100bpの利上げを織り込み、3年先1ヶ月金利が4.75%まで上昇する場合、過去の相関に基づけば、米10年金利は5%台半ばまで上昇すると試算されます。

10年金利と3年先1ヶ月金利

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(注)2026年以降のデータ。青丸は直近付近のデータ。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

一方、景気・インフレの減速基調が明確化し、市場が利上げ打ち止めから利下げを織り込むことで、3年先1ヶ月金利が3%台まで低下すれば、米10年金利は4%台前半まで低下するでしょう。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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