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野村リサーチ

2026.09.07 NEW

9月FOMCはインフレ指標次第か 米雇用統計は市場予想を大幅に上回る 野村證券・小清水直和

9月FOMCはインフレ指標次第か 米雇用統計は市場予想を大幅に上回る 野村證券・小清水直和のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

9月4日発表の米雇用統計が市場予想を大きく上回りました。米雇用は底堅く推移していることが確認される結果となりましたが、野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストは、今回の雇用統計が9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げの是非を巡って大きな影響を及ぼすとは考えにくい一方、CPI(消費者物価指数)など今後の指標を注視する必要があるとみています。以下、詳しく解説します。

9月FOMCはインフレ指標次第か 米雇用統計は市場予想を大幅に上回る 野村證券・小清水直和のイメージ

PPIとCPIが野村予想通りなら政策据え置きとみる

9月4日発表の8月非農業部門雇用者数は前月比+16.2万人(7月同+2.1万人、市場予想同+5.5万人)と市場予想を大きく上回りました。3ヶ月平均では月+7万人と、パウエル前議長がインフレを加速させない潜在的な労働供給側の増加ペースとして言及した月ゼロ~+5万人をやや上回っています。業種別には、財が7月前月比+2.9万人→8月同+4.1万人、サービスが同+4.2万人→+8.6万人、政府が同-5.0万人→+3.5万人です。8月失業率は4.1%(7月4.1%、市場予想4.1%)と市場予想に一致し、横ばいでした。

雇用者数の寄与度分解(業種別、3ヶ月平均)

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(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

今回の雇用統計は、9月利上げの是非を巡って大きな影響を及ぼすとは考えにくいです。雇用は底堅く推移しているため、FOMCは雇用最大目標よりも物価安定目標に注力することが可能です。この点、8月PPI(生産者物価指数、10日)及び8月CPI(11日)が重要です。

野村證券米国拠点は、両インフレ指標が8月コアPCEデフレータ(食料エネルギー除く)ベースで前月比+0.2%(年率約2%)と、物価安定目標と整合的な伸びを示唆すると予想しています。野村證券米国拠点の予想通りとなれば、9月FOMCは政策据え置きとなるでしょう。

9月FOMCの行方は?「予防的利上げ」の可能性も

これに対して、もしPPIとCPIの両インフレ指標が8月コアPCEデフレータベースで前月比+0.3%を超える伸びを示唆すれば、9月利上げの可能性が高まります。8月分コアCPIが前月比+0.4%以上などと大きく上振れれば、9月利上げのリスクが格段に上昇するでしょう。一方、8月分コアCPIが同+0.3%のような小幅上振れの場合は、FOMC内の判断が分かれるでしょう。CPIの小幅上振れでは政策据え置きがメインシナリオと現時点では想定していますが、利上げ票が増える可能性があります。

CPIの小幅上振れでも9月会合で利上げが決定される場合は、早めの利上げを通じ、先々での大幅な利上げを回避したいとの考え方に基づいていると捉えられるでしょう。「予防的利上げ」と形容できます。7月会合時点で既に3名が利上げ票を投じましたが、これらメンバーらはこうした考え方を持っていることを講演を通じて明らかにしています。

インフレが加速する兆候が出てきた時点で先んじて利上げが行われるなら、最終的な合計での利上げ幅は小幅なものに留まると見込まれます。一方、インフレ加速がデータで十分に確認されてから利上げが行われるなら、合計利上げ幅は相対的に大幅なものとなるでしょう。

8月平均時給は前月比+0.3%(7月同+0.2%、市場予想同+0.3%)と市場予想に一致し、加速しました。ただ、インフレの持続性を判断する上で、賃金上昇率やインフレ期待に関してFOMC参加者の評価が分かれつつあります。ウォーシュ議長は賃金の伸びが安定していることを重視しない考えを示しました。しかし、他の多くの参加者は、賃金の伸びが安定していることをインフレ減速にとって前向きな材料として言及しています。一方、インフレ期待が安定していることについては、ウォーシュ議長に加えウォラー理事も重視しない考えを示しました。

平均時給(3ヶ月平均)

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(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

もっとも、現時点では多くのFOMC参加者は賃金上昇率やインフレ期待が安定していることを重視しています。よって、多くのFOMC参加者は利上げを支持したとしても、その後も含めた最終的な合計での利上げ幅が大幅なものになるとは想定しないことも考えられます。

米金利の先行き

9月FOMC(16日)が政策据え置きとなっても、インフレ加速のリスクは当面は残存すると見込まれます。むしろ、ジャクソンホール会議でウォーシュ議長が極めてタカ派的な姿勢を示したにもかかわらず政策据え置きとなれば、ウォーシュ議長の政策運営に対する不透明感が再度高まり、米債がスティープ化するリスクがあるでしょう。一方、来年以降に景気・インフレの減速基調が明確化すれば、米10年金利は低下傾向を辿ると予想されます。

別途、4日にはトランプ米大統領がSNS上で「利下げか、さもなくば米国の貿易赤字相手国との貿易を停止する」と投稿しました。この投稿は、ベッセント米財務長官やウォーシュ議長が、利上げは先々での物価安定や長期金利安定に資するとのロジックで大統領を説得することに成功できていないことを示唆しています。あくまでリスクシナリオではあるものの、もし11月米中間選挙後の12月会合で利上げが決定されれば、市場はウォーシュ議長がトランプ大統領の圧力から解放されたと判断し、利上げ期待が大きく上昇、米債は大幅フラット化するでしょう。

なお、米国債バイバック(米国債の買い入れ消却)の増額発表を受け、9日には対象年限における初回実施分の予定額が公表され、10日には当該バイバックが実施されます。バイバック増額による債券需給改善の期待が一巡する可能性もあるでしょう。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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