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2026.09.02 NEW

日経平均株価1,889円安 長期金利3%台到達も、「金利のある世界」への移行では整合的とみる 野村證券・岡崎康平

日経平均株価1,889円安 長期金利3%台到達も、「金利のある世界」への移行では整合的とみる 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

2026年9月2日の東京株式市場で日経平均株価は3日続落し、終値は前日比1,889.70円安の64,325.64円でした。国内債券市場では9月に入り、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが3%台に上昇(価格は下落)しました。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平は、インフレが定着した日本において足元の金利上昇は整合的な動きとみており、株安の背景にはグローバル要因もあると考えています。以下、詳しく解説します。

日経平均株価1,889円安 長期金利3%台到達も、「金利のある世界」への移行では整合的とみる 野村證券・岡崎康平のイメージ

日本株安はグローバルな地政学的リスクへの警戒感を反映か

9月2日の東京株式市場で、日経平均株価は大きく値下がりしました。長期金利の上昇傾向が意識され、株売りの動きが出たことも要因なのでしょうか。

米国とイランの戦闘状態が続くなか、原油価格が大きめに上昇したことが前日の米国市場にとって重石になったと見ています。実際、米国ではインフレや金利上昇に敏感なセクターで下げが大きめでした。日本市場もその流れを引き継いだと見てよいでしょう。

一方、国内の金利上昇が株安の背景にあるとの見方もあります。確かに、一般論として金利上昇は株安要因です。ただ、日本の金利上昇が海外情勢、つまり先に紹介した中東情勢などに影響を受けていることを考えると、マーケットを動かすより根源的な要因は中東情勢と見るほうが適切に感じます。

その意味では、年末にかけて国際政治上のイベントが目白押しであることに注意が必要です。9月には米中首脳会談と国連総会、11月にはAPEC首脳会議、12月には米国が議長国として主催するG20サミットが予定されています。米国が11月に中間選挙を控えることからすると、こうした外交の場をきっかけに、トランプ米大統領が新たな政策イニシアチブ(関税政策など)を表明する可能性も考えられます。中国・ロシア・イランの首脳が参加する上海協力機構サミットが8月31日から開催されていたことも、こうした年末にかけての国際政治イベントと、それに伴う地政学リスクを市場に想起させたかもしれません。

中東情勢の不安定化を受けて高騰したコモディティ価格が、ここ最近になって再上昇している点も見逃せません。4月以降に低下に転じていたコモディティ価格ですが、足元では再びピーク水準に回帰しています。世界的にインフレ懸念が高まりつつあったところに、冒頭で述べた中東情勢や今後の国際政治日程が意識されたように思います。

こうしたことに加え、ジャクソンホール会議におけるウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「タカ派」的な政策スタンスを示しました。これらすべてが相まって、日銀に対する金融市場の利上げ期待も一段と高まっています。国内金利に上昇圧力が加わるのは、グローバルな経済動向をみると自然なことのように思います。

ブルームバーグ商品価格指数

日経平均株価1,889円安 長期金利3%台到達も、「金利のある世界」への移行では整合的とみる 野村證券・岡崎康平のイメージ

(注)直近データは2026年8月28日
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

「悪い金利上昇」が起きているか

金利上昇が報じられるなか、「悪い金利上昇」のリスクも気になります。

確かに、様々なメディアが金利上昇に注目しています。住宅ローンへの影響や預金金利の変化など、投資家以外にも金利の影響は幅広く波及しますから、金利上昇を心配するのは自然なことと思います。

ただ、日本が「悪い金利上昇」に陥っているとは思いません。悪い金利上昇が起きる場合には、インフレが制御不可能に陥るケースや資本流出が進むキャピタル・フライト(資本逃避)のケースなどが考えられます。しかし、ここにきて日本経済がこうした状況に陥り始めた証拠は見当たりません。足元の金利上昇は、2%のインフレ目標達成に向けた過渡期の現象と考えるべきでしょう。長く続いたゼロ金利・低金利環境が変化する過程で、財政を巡る報道が「きっかけ」として参照されている印象が強いです。

本当に日本経済が2%インフレ目標を安定的に達成できるならば、長期金利が3.0%程度でもあまり違和感はありません。インフレ率2%に、ゼロ%台半ばとされることが多い日本経済の潜在成長力、そして長い期間の金利に要求されるターム・プレミアムを考えると、3.0%は正常な金利上昇の範囲に収まる利回りです。もし、政府の成長戦略が奏功して潜在成長率が高まれば、長期金利は更に上昇することも考えられます。もっとも、その際には企業収益や国内景気が一段と改善しているでしょう。

当面は、株価のボラティリティが高い状況が続くとみられるのでしょうか。

先に述べた通り、年末にかけて国際政治上のイベントが数多く予定されています。政治イベントは金融市場にとってサプライズになることが少なくありませんから、市場環境はやや落ち着かない状態が続くように思います。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBが利上げするか否か、11月の米中間選挙やそれに向けた米国内の政治・政策動向などにも注目する必要があるでしょう。その際には、インフレへの懸念から債券市場にもお金が入りにくい可能性があります。インフレ耐性があり、かつ国際政治上のリスクからもやや遠い企業の選別が大切になりそうです。

財政を巡るイベントはまだ続く

2027年度予算の概算要求総額は膨らむ見通しです。財政への不安から、金利が高まる面もあり得ますか。

高市早苗政権は、2027年4月から飲食料品の消費税減税を実施する方針を掲げており、農家や外食産業への支援策などが今後、具体的に議論されていく見通しです。高市政権の2027年度予算編成に向けて、各省庁から出される概算要求も内容や規模感が注目されています。

また、2026年度の第2次補正予算が組まれるか否かにも注目しています。もし第2次補正予算が組まれた場合、規模や財源次第ではありますが、「本当に来年度以降は補正予算を編成せずに財政運営できるのか」との不安が金融市場で高まる可能性があります。当然、災害対応など必要な財政支出は躊躇すべきではありませんが、予備費での対応など補正予算に頼らない方策がまずは想定されます。

そうした緊要な理由がないことを前提として第2次補正予算を組まない判断となれば、金融市場では財政に対する不安感がやや和らぐ局面もあり得ます。むろん、消費減税をめぐる議論のほか、防衛予算や2027年度本予算に関する議論が今後も続きますが、財政運営に対する不透明感がどこかでピークアウトすることも先々には想定されます。財政関連のニュースが続くとはいえ、金利先高観の背景は財政だけに限らないと認識すべきでしょう。

まだ先の話になりますが、第2次補正予算と並んで注目されるのが、2027年度本予算の政府案です。例年通りのスケジュールで行けば、12月中頃から後半にかけて示されるでしょう。足元では概算要求額が過去最高を記録するとの報道が目立ちますが、それ以上に重要なのは「これまで以上に機能する予算案を作れるか」です。12月の政府予算案の規模が概算要求比でどう変化するか、そして中身がどのように変化するかが極めて重要になります。「定例的な施策は当初予算で措置され、フレキシブルな施策は補正予算で措置される」との見方もみられるなか、当初予算に補正予算を合流させる手法は予算全体の総点検に繋がり得る取り組みです。補正予算を当初予算に合流させることの質的な意味合いにも注目したいところです。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎 康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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