2026.08.13 NEW
日本の原油・ナフサの代替調達は持続する? 安定供給を巡る2つのリスク 野村證券エコノミストが解説
撮影/タナカヨシトモ(人物)
中東情勢の影響で、ホルムズ海峡を通じた原油・ナフサの輸入が滞りましたが、日本では代替調達が進んでいます。今後も代替調達は継続するでしょうか。野村證券経済調査部エコノミストの髙島雄貴(コモディティー)、伊藤勇輝(日本経済)が、足元の原油やナフサの輸入状況や今後のリスクについて、解説します。
米国産を中心に進む日本の原油代替調達
中東のホルムズ海峡では、原油輸送量が依然として低水準で推移しています。米国・イランの合意に向けた協議次第では船舶数が回復するシナリオが視野に入る一方、再び米国・イラン関係が悪化し、合意まで長期間を要した場合には、原油などを巡る「数量面」の供給制約が長引くリスクも排除できません。この場合、原油・ナフサといった原材料の供給が減ることで、2026年夏以降の国内経済活動を下押ししかねません。
(注)週次で表示。直近は7月25日~7月31日の1週間。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部作成
以下では、原油・ナフサ調達の現状を踏まえたうえで、代替調達の持続性を巡るリスクに焦点を当てます。
「原油及び粗油」の実質輸入(実質化・季節調整は野村證券による)は、2026年4月に2025年平均比で3割程度に落ち込みましたが、6月には同8割強まで回復しました。これをけん引したのが米国からの原油輸入です。日本の原油輸入に占める米国からの原油輸入の割合(重量ベース)は3月の約3%から、6月には約30%に急上昇しました。原油の主要な輸入元であるUAE(アラブ首長国連邦)やサウジアラビアからの原油輸入も、同期間で増えているものの、3月時点のシェアまでは回復していません。
(注)重量ベース。シェアの変化が大きかった上位・下位3か国を抽出。
(出所)財務省資料より野村證券経済調査部作成
この動きを米国側から見てみましょう。船舶データに基づくと、赤線で示している通り、米国の日本向け原油輸出は2026年5月以降、急速に増え、6月、7月と2ヶ月連続で、日本が米国にとって最大の原油輸出先となりました。米国産原油を軸に、日本が原油の代替調達を進めている様子を見て取れます。
(注)2026年7月時点の上位7か国を掲載。ブルームバーグ公表(8月4日時点)の船舶データに基づく。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部作成
6月のナフサ輸入も2025年平均比で7割程度まで持ち直す
ナフサの輸入も、2026年4月に2025年平均比で6割弱まで落ち込みましたが、6月には同7割程度まで持ち直しました。
(注)重量ベース。輸入ナフサは、HSコード:2710.12.181及び2710.12.139を対象。
(出所)財務省、経済産業省資料より野村證券経済調査部作成
これと歩調を合わせるかのように、国内のナフサ在庫指数も6月時点で2025年平均を上回りました。加えて、ナフサの場合、輸入だけでなく国内精製の増加(生産指数の上昇)も進んでいます。
代替調達のリスク(1):紅海ルートの頓挫
7月にかけて原油などの代替調達が進展した一方、その持続性には一定の疑問が残ります。ここでは2つのリスク(1. 紅海ルートの機能、2. 米国からの代替調達の持続性)を指摘します。
2026年7月20日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、サウジアラビアを対象とした海上封鎖を紅海において実施すると発表しました。ただし、サウジアラビア以外の商船に対して通航料を課す計画については、8月1日に否定しました(8月2日付、日本経済新聞)。紅海のバブエルマンデブ海峡(図表「航路別に見た原油輸送量」のグレー線参照)は、ホルムズ海峡の実質封鎖が長期化する中、サウジアラビアからの原油輸出の迂回ルートとして機能してきましたが、同海上封鎖を受け、日本のサウジアラビアからの原油輸入も減少するリスクがあります。中東から日本への原油輸送にはおよそ3週間を要することから、入着ベースでの影響は9月頃から生じると見込まれます。
代替調達のリスク(2):米国からの代替調達の持続性
日本の主な原油代替調達先である米国からの原油輸入を今後も継続できるかに関しては、米国の産油量および在庫取り崩し、そしてSPR(政府戦略備蓄)の放出動向が影響すると考えられます。
特に、中長期的に足元と同量の米国からの原油輸入を継続しようとした場合(かつ、他の国々も同様の輸入量を維持すると仮定した場合)、米国の産油量が増加、少なくとも維持される必要があるでしょう。カンザスシティー連邦準備銀行のエネルギー・サーベイによると、米シェールオイルの「商業的に掘削可能な価格」は近年、WTIベースで60~65米ドル程度で推移しています。今後、原油価格が同水準を下回って推移した場合には、日本の米国からの原油輸入についても影響が生じるリスクがあります。
- 野村證券 経済調査部・市場戦略リサーチ部 エコノミスト
髙島 雄貴 - 2018年野村證券入社。2023年6月まで日本経済担当エコノミスト。コモディティー調査を担当。原油をはじめとして、天然ガス、金、非鉄金属、穀物など、幅広い商品の市況を分析し、先行きの見方を提供。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。現在、日経ヴェリタスの「コモディティー・インサイト」に定期寄稿中。
- 野村證券 経済調査部 エコノミスト
伊藤 勇輝 - 2020年早稲田大学政治経済学部卒業後、野村證券入社。経済調査部へ配属後、一貫して日本経済の分析・見通し作成に従事。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。
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