2026.06.18 NEW
米ドル円が年初来高値を更新 FOMCタカ派化で介入警戒水準へ 野村證券・後藤祐二朗
写真/タナカヨシトモ(人物)
FRB(米連邦準備理事会)は2026年6月16~17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開き、政策金利の据え置きを決めました。一方、声明文では利下げバイアスを示すガイダンスが削除され、ドッツ(政策金利の予想)の中央値は年内1回の利上げを示しました。市場では米ドル高・円安が進み、米ドル円は一時160円70銭台まで上昇し、年初来高値を更新しました。野村證券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、FRBが想定以上にインフレ警戒を強め、タカ派(金融引き締めに前向き)化したと指摘しています。以下、詳しく見ていきます。
コアPCE見通しを大幅上方修正、FRBはインフレ警戒を強化
FOMCでは市場予想通り、政策金利が据え置かれました。声明文は前回から大幅に短縮され、従来言及されてきた「追加的な調整」という利下げバイアスを示す文言も削除されました。「経済活動は堅調なペースで拡大」とした一方、インフレ率については「エネルギーを含む特定の部門で価格上昇を招いた供給ショックを一部反映し、FOMCが目標とする2%を上回る水準で高止まり」としました。そのうえで、「FOMCは物価の安定を実現」するとしています。
GDP(国内総生産)成長率と失業率の見通しの変更は限定的です。一方、コアPCEデフレーター(食品とエネルギーを除く個人消費支出物価指数)の見通しは2026年が+3.3%(前回+2.7%)、2027年が+2.5%(前回+2.2%)、2028年が+2.1%(前回+2.0%)と、大きく引き上げられました。ドッツの中央値は2026年が3.75%と、前回(3.375%)から引き上げられました。2026年中の利上げの必要性がコンセンサスとして示されたと言えます。2027年以降は緩やかな利下げが想定されています。ただし、18人中9人が2026年中の利上げを想定しており、FRBが全体としてインフレへの警戒を強めていることが示唆されます。
米ドル円は160円台後半に上昇、当局介入への警戒強まる
ケビン・ウォーシュ議長は「インフレ目標は5年も達成しておらず、これを是正していく」と述べました。「今後の対応について先行きのガイダンスを示すことはできない」としたものの、市場の利上げ期待へのけん制はみられませんでした。「フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)は現局面であまり適さないことで一致した」とも述べ、「金融市場は入手された経済指標に反応している局面で最も効率的に機能する」としました。今後もガイダンスを通じた情報発信は控えられる可能性があります。金利見通しや経済予想についても、自身は提出していないと明言しました。理由については「政策を実行するのに役立たない」としています。
FRBは全体として想定以上にインフレへの警戒を強めており、タカ派化したと言えます。実際には一段とデータ次第で柔軟に対応することも想定されますが、ウォーシュ議長の記者会見ではハト派バイアスはみられませんでした。トランプ米大統領が利上げの可能性について「起こり得る」と発言したこともあり、市場は利上げ期待を高め、10月利上げを完全に織り込みました。米債利回りはベアフラット化(平たん化)し、株安で反応しました。為替市場では米ドル高が進んでいます。ドッツの中央値が示す年内利上げはおおむね織り込み済みと言えます。追加的な米ドル高余地は経済指標や原油価格次第ですが、目先は米ドル高圧力が意識されそうです。
米ドル円は一時160円70銭台まで上昇し、年初来高値を更新しました。株安に加えて介入警戒もあり、対円での米ドル高は相対的に限定的でした。主要クロス円は調整しています。米ドル円は日本当局の介入が意識される水準まで上昇したと言え、口先介入の強化や実弾介入の可能性を警戒する必要があります。160~163円レンジで追加介入の可能性は相応に高いとみられます。本日の米ドル円は高止まりしつつも、上昇ペースは緩やかとなりそうですが、目先は介入水準を試す相場展開が続きやすいとみられます。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗 - 為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。
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