2026.05.29 NEW
補正予算3兆円、市場への影響は 成長投資への「つなぎ国債」も注目点 野村證券・桑原真樹
撮影/タナカヨシトモ(人物)
高市早苗首相は2026年5月25日の記者会見で、3兆円強の補正予算を編成する方針を表明しました。中東情勢を背景に日本でもインフレ懸念が広がる中、電気・ガス代補助金など国民生活の支援に充てる方針です。財源として特例公債(赤字国債)を追加発行すれば、財政赤字拡大が意識される可能性もありますが、高市首相は、市中への発行総額を増やさずに対応できると説明しました。補正予算編成の市場への影響について、野村證券シニア金利ストラテジストの桑原真樹が詳しく解説します。

規模感は市場の想定内、金利上昇にも配慮か
- 米国とイランの紛争を受け、エネルギー価格高騰が続いていますが、3兆円の補正予算の規模感はどうみますか。
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補正予算とは、当初予算を年度の途中で追加したり修正したりするための予算です。今回の補正予算は、中東情勢を背景に高止まりするエネルギー価格の国民生活への影響を踏まえ、電気・ガスへの補助を念頭に組まれることになりましたが、結果的に規模感はマーケットが想定する範囲内に収まったと考えています。
歳出の項目としては、補正予算に先立って電気・ガス代補助金に充てる方針の一般予備費の復元に0.5兆円、「中東情勢等対応予備費」に2.5兆円、重点支援地方交付金0.1兆円とみられています。
(注)償還費=国債費-利払費。プライマリーバランス=税収+税外収入+前年度剰余金-一般歳出-地方交付税交付金等-交付国債償還費。財政収支=プライマリーバランス-利払費。2026年度補正後は5月25日の高市首相発言などに基づく試算値。
(出所)財務省より野村證券市場戦略リサーチ部作成
- 財源はどのように手当てされる見通しでしょうか。
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財務省が公表している国債発行計画を基に試算すると、政府支出が税収などの収入を上回る際、穴埋めするために発行する国債で国の借金とも言える赤字国債が3.1兆円増え、「発行根拠法別」の国債発行総額も、同額増加すると考えられます。
(注)2026年度補正後は5月25日の高市首相発言などに基づく試算値。
(出所)財務省より野村證券市場戦略リサーチ部作成
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高市首相は、税収が上振れていることなどを背景に、2026年4-6月期に発行予定だった2025年度分の赤字国債を発行せずに済むため(2025年度の財政赤字を賄うための赤字国債は2026年6月まで発行できる)、市中への発行総額を増やさずに対応できると説明しました。市中発行総額を増やさないということは、国債発行計画の「消化方式別」において、カレンダーベース発行額(2026年4月から2027年3月の間に発行する金額)については変化させないということだろうと解釈できます。
2025年度赤字国債は、2026年4-6月期に発行予定でしたが、これが2026年度赤字国債に振り替わる結果、カレンダーベース発行額は不変となります。ただ、その分、国債発行計画上の2026年度の「年度間調整分」は増加することになります。テクニカルで分かりにくい対応ですが、市中発行額を増やさないという点が強調されたのは、足元の長期金利上昇を受けて、市場に配慮したためではないかという印象を受けています。
成長戦略や消費税減税、財政拡張が意識される可能性も
- 今後は何が注目点になりそうですか。
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やはり夏場に固まる政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」には注目しておいた方が良いでしょう。骨太の方針は2027年度予算を決める際の大きな方針になりますが、それまでに政府の成長戦略と、消費税減税、給付付き税額控除については中間整理が示される見通しとなっています。高市首相の「責任ある積極財政」の詳細や、防衛費増額も合わせて見ておく必要があります。
高市首相は、積極財政として特に成長戦略関連には資金を使い、企業の投資の呼び水にして、生産力を高めていく方針を示してきました。2026年度後半に、成長戦略の具体策を盛り込んだ第二次補正予算を編成する可能性も十分あり得るのではないでしょうか。中東情勢も先行き不透明で、電気・ガス補助金が継続するリスクも想定されます。
- 高市政権は財政拡張に向かうとの見方が意識されそうでしょうか。
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具体的な数字が出ていないため、まだ不透明ですが、政府が「つなぎ国債」を発行するとの見方も出ています。つなぎ国債とは、国の財政政策と、それを賄うための財源調達の間に時間的なずれがある場合に、それを「つなぐ」ために発行されるものと理解できます。
つなぎ国債の発行額を左右する、成長投資や危機管理投資に要する経費の規模について、現時点で具体的な情報は多くありません。政府が3月に閣議決定した科学技術・イノベーション基本計画が対象とする重要領域は、高市政権の17の戦略分野とほぼ重なりますが、両者の関係は不明です。
また、つなぎ国債の償還財源がどうなるかにも注目しておきたいと思います。つなぎ国債にも新たな財源が確保されるのであれば、財政の健全性には影響しないとの主張も可能になるかもしれませんが、そうでない場合には素直に財政赤字・債務残高増大要因になり、長期金利の上昇圧力の一つとみられる可能性もあるのではないでしょうか。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部シニア金利ストラテジスト
桑原 真樹 - 2000年野村総合研究所入社。日本のマクロ経済に関する調査・分析・予測を担当、その経験を活かし2023年からは主に財政面から日本国債市場についての分析を担当。共著書として『日本経済 地方からの再生』(2009年 東洋経済新報社)がある。2000年東京大学経済学部卒業。2006年米カリフォルニア大学デイビス校大学院経済学研究科修了。
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