2026.05.22 NEW
米国関税還付はどこへ行く? 関税還付の恩恵を受ける可能性がある企業は 野村證券ストラテジストが解説
2025年4月の米国発の相互関税ショックは、金融市場に強烈なストレスを与えました。一方、その1年後の2026年4月後半に始まった関税還付のプロセスは、意外なほど注目を集めていません。背景には、情報開示の少なさがあるとみられます。ただ、1,660億米ドル(26兆円)の行方は、米国景気を下支えするとともに、マクロ政策運営にも影響を与えます。さらに、米国企業だけでなく、日本企業の業績にも影響する可能性があります。以下で詳しく説明します。
日本企業の米国現地法人の仕入れ:今回措置に関連する取引は9兆円規模
海外事業活動基本調査は、日本企業の海外現地法人について、売上高や利益だけでなく、仕入れなどの構造も包括的に把握できるため、今回の関税還付を考えるうえでも参考になります。まず、米連邦最高裁が違憲と判断したIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく10%の相互関税と関係のない自動車・鉄鋼・サービスを除いたうえで、米国現地法人全体(卸売、輸送用機器、鉄鋼、サービスを除く)に注目すると、直近の2023年の売上高は37.2兆円、海外からの仕入高は9.0兆円でした。このうち、日本からの輸入額は7.1兆円、第3国(カナダ・メキシコを除く)からの輸入額は1.9兆円で、これらが相互関税の対象になったと考えられます。
日本企業の関税還付は4,000-5,000億円規模と試算
日本の米国現地法人の海外からの仕入れ額に関税がかかるとすれば、機械的には9.0兆円×税率10%で9,000億円相当となります。ただ、実際には免税措置などもあります。例えば、米国の財輸入額(自動車・鉄鋼、カナダ・メキシコからの輸入分を除く)が約3兆米ドル前後であるのに対し、今回対象となる相互関税の納税額が1,660億米ドルであることから、単純計算では実効税率は5%前後となります。
このため、日本企業が本件で支払った関税負担は、上記の9,000億円に対して多くても半分程度の規模、大まかには4,000-5,000億円前後と見積もることができ、2026年度のTOPIX(東証株価指数)のEPS(1株当たり利益)を0.6-0.7%前後押し上げうるとみられます。1社で300億円の還付を見込む企業もあることを踏まえると、上記の数字は妥当でしょう。
株価反応はいまのところ鈍い
日本の個別企業では、米連邦最高裁の違憲判決が出る前から訴訟を起こしていたことが確認できる企業群と、直近の決算発表で関税還付手続きに言及した企業群が注目されます。化学・素材、タイヤ、建機、工作機械、エアコン、電機・精密(特にプリンター)、自動車以外の輸送用機器、ゲーム機などの関連企業が該当し、製造業全般にまたがります。
このほか、表立って名乗っていないものの、相互関税を多く納めている企業が存在する可能性もあります。なお、関税還付の恩恵を受ける可能性がある企業群の株価は足元でも低迷しており、日米合意関連企業のアウトパフォームとは好対照です。
遅れて市場が認識する可能性も
株式市場での反応が鈍い背景には、情報開示の少なさがあるとみられます。トランプ米大統領が4月22日のインタビューで、関税還付を求めない企業について「覚えておく」「そうしないなら素晴らしいことだ」と述べたことも影響してか、大々的に還付手続きを進めている企業は多くありません。
また、一部の消費財企業は、還付金を消費者に還元するよう求める集団訴訟を提起されており、消費者への配慮も動きにくさの一因と考えられます。その意味では、BtoC(消費者向け)企業にとって、関税還付を生かした消費者還元キャンペーンも選択肢でしょう。今後は、4-6月期以降の決算で関税還付が利益項目に反映されるケースが増えるとともに、市場の関心が高まる可能性に注目したいところです。過去に支払ったIEEPA追加関税は、すでに売上原価や販管費として過去の決算に計上されており、還付を受け取った期の特別利益または営業外収益として認識されるとみられています。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
米国関税還付はどこへ行く? – 隠れ景気刺激策の経路を整理、日本にも波及(2026年5月19日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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