2026.05.20 NEW
日本株の決算を読み解く 2026年度の会社計画では6割強が経常増益、共通点は? 野村證券ストラテジストが解説
2026年度の会社予想、社数ベースで65%が経常増益を計画
2026年5月15日時点で、2・3月決算企業のうち、時価総額ベースで約97%に当たる銘柄で2025年度本決算が出揃いました。全産業を集計すると、2025年度は前年比3.5%の増収、同18.7%の経常増益となりました。経常利益はソフトバンクグループ(9984)や金融セクターの影響により上振れしました。
2026年度の会社予想は同5.2%の増収、同1.4%の経常増益計画です。社数ベースでは全体の65%が会社予想(期初計画)で2026年度の経常増益を見込んでいます。これは、トヨタ自動車(7203、経常利益19%減益予想)、ソフトバンクグループ(会社予想なしのため東洋経済予想で59%減益)、キオクシアホールディングス(285A、会社予想なしのため東洋経済予想で103.6%増益)の影響が大きく、この3社を除くと2026年度は5.3%の増収、6.3%の経常増益予想となります。
2026年度会社計画で経常利益が2桁増益となるのは、繊維製品、化学、鉄鋼、電気機器、精密機器、卸売業などです。一方、経常減益となるのは、鉱業、建設、食品、石油・石炭製品、非鉄、金属製品、その他製品、運輸、情報通信などです。また、2026年度の会社予想経常利益と市場コンセンサスを比較すると、その他金融ではコンセンサスを上回る強気な予想、陸運ではコンセンサスを下回る弱気な予想が示されています。
価格転嫁力とコスト管理力の重要性が高まる
価格転嫁力やコスト管理力、バランスシートの効率的活用が課題として浮かび上がっています。2026年1-3月期の売上原価は前年比5.4%増、販管費は同7%増と上昇しており、値上げは不可欠な状況です。2025年度実績および2026年度会社計画で営業利益の要因分解を開示している企業を集計したところ、各種コスト増を数量増や値上げ、為替などで吸収し、増益を計画している構図が明らかになっています。
(注)対象は2026年5月15日までに2025年度決算を公表した2・3月本決算企業で、2026年度営業利益会社予想の要因分解を開示している101社。前年同期比増減益を数量要因、価格要因、為替要因、原材料価格要因、販管費・固定費要因、人件費要因などに分類。各社の表記は必ずしも一致しないが野村で分類し直して集計。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
中東情勢の影響は総じてやや楽観的、為替も緩衝要因に
現時点では、中東情勢の影響は不透明としつつも、価格転嫁の姿勢を強調する企業が多い状況です。バッファーを設ける企業がある一方、マイナス影響の試算値を示しつつ業績予想には織り込まない企業や、直近のコスト上昇分や4-6月分のみを反映する企業も一定数存在します。全体としては、やや楽観的な見方がうかがえます。2026年度の為替前提は、米ドル円が150〜152円、ユーロ円が178〜180円とする企業が多く、外需企業には一定の余裕がある状況です。
バランスシートの効率的な活用が引き続き問われる局面
現預金や純資産が前年比で約10%増加しており、今後の株主総会などでもバランスシートの効率的活用が引き続き問われるとみられます。全体の44%の企業が会社予想(期初計画)で2026年度の増配を見込んでおり、例年を大きく上回っています。この点は、株主還元への意欲や利益への自信を示すものと考えられます。
(注)対象は2・3月決算企業で2026年5月15日までに25年度実績を公表済みの全上場企業。
(出所)QUICKより野村證券市場戦略リサーチ部作成
また、自社株買いの発表件数・金額も拡大しています。2026年初来の金額は過去最高ペースで、件数も2025年には及ばないものの高水準となっています。2026年初来のTOB(株式公開買付け)は大型案件が少ないため金額は過去数年を下回っていますが、件数では過去最高だった2025年に匹敵するペースです。
企業の説明会資料では、現預金残高や不動産活用に踏み込んだ説明が徐々に増えています。特に、現預金残高の適正値について「月商の数ヶ月分」や「M&A(合併・買収)用資金」を基準とした説明は投資家にも分かりやすく、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改訂を先取りする模範とみなされやすい状況です。
また、既存の中期経営計画などをもとに、キャッシュアロケーション(資金配分)計画や投資・株主還元額を決算資料等で開示する企業も増えています。ただし、金額や詳細まで踏み込んでいないケースや、成長投資・R&D(研究開発)投資の定義が曖昧な企業も多く、株式投資判断には利用しにくいとの指摘が投資家から増えています。
2025年度TOPIXのROEは9.1%、最高益でも改善は限定的
2025年度のTOPIX(東証株価指数)のROE(自己資本利益率)は約9.1%と推定されます。利益が過去最高を記録しても、純資産が同じペースで増加していればROEの大幅な改善は見込めません。ROEを総資産回転率と売上高純利益率と財務レバレッジのかけ算に分解する、いわゆる「デュポン分解」を行うと、純利益率は改善傾向を維持しているものの、レバレッジと総資産回転率の低下傾向が引き続きROEの抑制要因となっています。
決算後の株価、減益企業は軟調 強気計画と自社株買いは底堅い
決算発表後の株価反応を見ると、2025年度減益企業(全体の30%)や2026年度減益予想企業(全体の35%)ではアンダーパフォームが明確です。一方、自社株買いを発表した企業(全体の9%)、2026年度利益計画がコンセンサス比で強気な企業(全体の36%)の相対株価は底堅い動きが確認されます。
実績上振れを受け、トップダウンのEPS見通しを上方修正
2025年度実績の上振れを反映しつつ、一過性利益の反動が2026年度に出ることを考慮し、AI・半導体企業の利益上振れや金利負担増加、交易条件悪化も織り込みました。2025年度の上振れ分により、2026年度は伸び率が鈍化するものの、EPS(1株当たり利益)水準は従来予想に比べ小幅に上方修正となります。
TOPIXのEPSは、2025年度が204.8(前年比+14.9%)と、従来予想の193.2(同+8.4%)を大きく上回って着地したと推定されます。2026年度は216.8(同+5.9%)と、従来予想の215.7(同+11.6%)に比べ伸び率は低下しますが、EPS水準自体は小幅な上方修正となります。2027年度は245.6(同+13.3%)と、従来予想の243.1(同+12.7%)を小幅に上回る見通しです。
AI・半導体企業の利益上振れは、2026年度TOPIXのEPSに対し3%前後の上方修正要因ですが、特定企業の影響も大きい状況です。一方、今後も利払い負担が増加しやすい状況が続きます。また、4月の企業物価指数では輸入物価が前月比5.6%上昇し、石油関連だけでなくアルミや電気・電子機器の輸入物価も大きく上昇、交易条件は1.6%悪化しました。交易条件悪化の影響は、利益率の抑制要因としてタイムラグを伴い顕在化するリスクがあります。
原油高や交易条件悪化による収益押し下げ効果があっても、数量効果、値上げ効果、株数減少効果などによりEPS拡大基調は続き、株高基調を支える見通しです。TOPIXが2026年末に4,000、2027年末に4,200、2028年末に4,400、日経平均株価が2026年末に63,000円、2027年末に65,000円、2028年末に68,000円という見通しに変更はありません。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
日本株メモ:FY25決算・FY26会社計画(5/15時点) – バランスシート効率とコスト管理&価格転嫁力が焦点(2026年5月18日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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