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2026.06.29 NEW

2026年末の米ドル円見通しを154円に引き上げ 米利上げリスクの高まりを反映 野村證券・後藤祐二朗

2026年末の米ドル円見通しを154円に引き上げ 米利上げリスクの高まりを反映 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

中東情勢への警戒が続くなかでも、米ドル円は高止まりしています。野村證券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)でのタカ派(金融引き締めに積極的)姿勢を反映し、2026年末の米ドル円見通しを1米ドル=154円に引き上げました。以下、詳しく見ていきます。

2026年末の米ドル円見通しを154円に引き上げ 米利上げリスクの高まりを反映 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

米ドル高方向に見通しを変更

ウォーシュ議長の初会合となった2026年6月のFOMCでは、FRB(米連邦準備理事会)のインフレ警戒の高まりが確認されました。市場は2026年末までの米国の利上げの可能性を完全に織り込んでいます。米国とイランの合意の前後で原油価格が大きく低下しているにもかかわらず、為替市場では米ドル高地合いが続いています。米ドル円は2024年7月高値(161円95銭)に接近しています。

野村證券では、FRBが2026~2027年を通じて政策金利を据え置くと予想しています。一方で、利上げ実施のリスクは高まっていると判断し、6月26日付で2026年中の米ドル見通しを全般に上方修正しました。2026年末の米ドル円見通しは154円(旧:152円50銭)とします。

米ドル円の見通し
  2026年9月 2026年12月 2027年12月
 
円(USD/JPY) 155 158 152.5 154 145 145

(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

原油価格調整で米ドル円上振れリスクは低下

原油価格の調整に伴い、債券市場のインフレ期待も概ね中東情勢悪化前の水準に戻りました。日本では中東情勢悪化前から緩やかな利上げ局面にありましたが、インフレ期待の相対的な高止まりも目立っており、日銀の利上げ局面は続く公算が大きいです。原油価格調整を受けてFRBを含む海外中銀のタカ派姿勢が後退すれば、円高圧力につながる可能性が高いです。特に、野村想定通りにFRBの政策金利据え置きが続けば、利上げ期待の後退が米ドル円の調整につながると予想されます。ウォーシュ議長のインフレ警戒姿勢によってFRBの独立性への警戒は後退するものの、トランプ政権下の経済政策への不信感に根差した「米ドル離れ」も続くと予想されます。

2月末以降の原油価格(北海ブレント)と主要国のインフレ期待(10年)の変化

2026年末の米ドル円見通しを154円に引き上げ 米利上げリスクの高まりを反映 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(注)インフレ期待はインフレ連動債による。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

先週末には米国とイランによる攻撃の応酬がみられるなど、中東情勢を巡る不確実性は依然として高いです。ただ、原油価格の低位安定が続けば、貿易収支の悪化は限定され、需給面での円安リスクも後退しそうです。

高市政権の政策姿勢が円安長期化リスクに

原油価格の低下や海外中銀のタカ派姿勢の後退が定着すれば、円相場は安定しやすくなるとみられます。一方、円相場にとっては日本の政策対応も重要です。日銀は6月会合で25bp(ベーシスポイント)の利上げに踏み切ったものの、市場参加者の間では、日銀がビハインドザカーブ(政策が後手に回ること)に陥り、一段の円安やインフレ上振れ、債券市場の不安定化を招くリスクへの警戒が根強い印象です。日本のインフレ期待の高止まりも、日銀の利上げの遅れや、それに伴う円安持続への警戒に根差したものといえます。野村證券は12月の日銀利上げを基本シナリオとしていますが、円安圧力が根強い場合、利上げペースの加速を辞さない姿勢を示すかが注目されます。

この点、高市早苗政権の政策姿勢は、円安圧力が長期化する可能性を高めるリスク材料といえます。高市政権下で初となる骨太の方針において、「強い経済実現に向けて適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」との文言を明記する方針を固めたと、共同通信(6月27日付)などの国内メディアが報じています。これまでの高市政権の姿勢からは大きなサプライズとはいえませんが、市場では経済重視の政治的圧力への警戒が強まる可能性があります。

日本の通貨当局は4月30日以降、円買い介入を再開しており、162円を超える円安・米ドル高の加速に対しては介入による対応も予想されます。しかし、日銀の利上げが一段と遅れるとの警戒が強まる場合、介入だけで円高方向への基調転換を促すことは難しくなります。原油価格の低下は輸入勢による米ドル買いの必要性を低下させ、需給面では介入効果を高めます。165円を超えて円安・米ドル高が進む余地は限定的とみていますが、高市政権の政策運営次第では、円安・米ドル高が160円前後で長期化する可能性も否定できません。

半導体株相場の調整が加速すれば短期的な円高加速も

金融市場全体に目を向けると、株式市場では半導体関連株の優位な値動きが鮮明です。結果的に、中東情勢の悪化や主要中銀のタカ派化がみられる中でも、世界的に株価は堅調に推移してきました。為替市場ではリスク心理の改善に伴う円安圧力をもたらしてきましたが、足元ではナスダック総合指数などの上昇に一服感も出ています。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表する非商業部門の持ち高を見ると、対円を含めて米ドル買い持ち高が大きく積み上がっています。世界的に株価が調整色を強める場合、ポジション調整に伴う円高圧力が強まるリスクは否定できません。

中東情勢悪化を受けた3月の株安局面では、同時に原油価格が急騰していたため、為替市場での円高圧力は限定されました。一方、原油価格調整と株安が同時に進む場合、円高圧力が強まりやすい傾向にも注意が必要です。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗
為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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