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野村リサーチ

2026.07.10 NEW

AI一極集中に隠れた相場のドライバーとは? 上昇余地を秘めた「出遅れ株」の探し方 野村證券・西岡伸

AI一極集中に隠れた相場のドライバーとは? 上昇余地を秘めた「出遅れ株」の探し方 野村證券・西岡伸のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

2026年に入り、一部のAI・半導体関連銘柄の株価の急上昇が目立っており、日本株のけん引役となっています。株式市場では「AIかそれ以外か」での銘柄選別が強まっていますが、異なる視点で投資先を探す手段はないのでしょうか。野村證券市場戦略リサーチ部クオンツ・アナリストの西岡伸が、クオンツ・リサーチの手法を用いて解説します。

AI一極集中に隠れた相場のドライバーとは? 上昇余地を秘めた「出遅れ株」の探し方 野村證券・西岡伸のイメージ

AI相場の裏で銘柄特性による選別が進む

近年、キオクシアホールディングス(285A、以下キオクシア)やフジクラ(5803)などAI・半導体関連銘柄の株価急騰が目立ちました。AI・半導体関連銘柄とそれ以外の銘柄との間で、日本株のパフォーマンスが二極化しているという見方もありますが、実際にAI一極集中は強まっているのでしょうか。

キオクシアやフジクラのように大幅高となった銘柄に焦点を当て、AI・半導体関連銘柄への一極集中の度合いをみてみましょう。下の図表のピンクの点線(歪度)が正に大きいと、TOPIX(東証株価指数)500の採用銘柄の中で、大幅に上昇した銘柄が存在することを意味します。この値が正に大きければ大きいほど、一部の銘柄のリターンが突出して高いことになりますが、2025年前半から上昇傾向にあり、2026年4月の単月では2000年前後のドットコムバブル期に匹敵する水準となりました。

月次リターンの銘柄間での歪度

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(注)母集団はTOPIX500。±3σ以上を丸めたうえで歪度を計算。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

過去のITバブルに匹敵するくらい、AI・半導体関連銘柄への一極集中が際立っていたのですね。定量的な分析によって投資戦略を考える「クオンツ」の視点で、AIテーマ以外から銘柄を選ぶアイデアはあるでしょうか。

クオンツ・アナリストは「ファクター」と呼ばれる銘柄の特性を用いて、株式市場を分析しています。ファクターには様々なカテゴリーがあり、例えば、株価が割安かどうかを示す「バリュー」、市場全体の値動きへの感応度を表す「ヒストリカルベータ」、過去のリターンをみる「株価モメンタム」などが代表的なものになります。

このようなクオンツの視点を用いて分析すると、実は足元はAIテーマ一辺倒ではなく、その裏でファクターによって選別されていることが見えてきました。順を追って説明していきます。まず、今回は以下の7つのファクターを用います。

  • 株価モメンタム(過去12ヶ月リターン)
  • 株価モメンタム(過去3ヶ月リターン)
  • ヒストリカルベータ
  • 時価総額
  • 予想利益成長率
  • バリュー(B/P(PBRの逆数))
  • バリュー(予想E/P(予想PERの逆数))

その上でTOPIX500を母集団に、大幅に上昇または下落した「高変動銘柄」とあまり株価が動かなかった「低変動銘柄」に分類し、それぞれのファクターで分析しました。その結果をまとめたものが下の7つのチャートです。

ファクターリターンを「高変動銘柄」と「低変動銘柄」の寄与に分解

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(注)母集団はTOPIX500。ファクターリターンと同月の個別株リターンを10分位し、最大・最小分位を「高変動銘柄」、それ以外を「低変動銘柄」とした。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

グレーの線が「高変動銘柄」、赤線が「低変動銘柄」のファクターのパフォーマンスに対する寄与度を示しています。もしファクターを無視して、AIテーマ一辺倒で買われている場合、高変動銘柄のリターンが突出し、この2つの線の乖離は大きくなる傾向にありますが、ピンクで網掛けしている直近1年間は同じ方向感を示していることが分かります。したがって、今回の一極集中相場では、AIテーマに紐づいた個別要因のみが相場のドライバーとなっている訳ではなく、ファクターによる銘柄選別も着実に行われていると言えるでしょう。

急上昇したAI・半導体関連銘柄に追随する銘柄の条件は

ファクターによる銘柄選別が進む中で、足元ではどのようなファクターのリターンが目立っているのでしょうか。

相対的に高変動銘柄と低変動銘柄の間で乖離が大きいファクターを分析すると、6月はバリューファクター(B/P)が大幅に不調(低B/Pが好調)でした。つまり、6月の株価の急上昇が目立ったAI・半導体関連銘柄(高変動銘柄)が持つファクターの1つが「低B/P」であり、そのファクター内のその他の銘柄(低変動銘柄)が上昇する可能性があると考えています。

参考までにロング(買い)候補として、前月の株価が低調で、B/Pは低い銘柄を掲載しています。

ロング候補として、前月の株価が低調で、B/Pは低い銘柄
* 7月初時点 (前月から判断)
個別株のリバーサル狙い

低リターンから
選出したい
(前月から判断)
ファクターのモメンタム狙い

エクスポージャーを
割高側に傾斜させたい
No. コード 銘柄名 東証
17業種
過去1カ月
リターン
値(%)
(3分位) B/P
値(倍)
(5分位)
1 5706 三井金属 鉄鋼・非鉄 -17.6 (1) 0.17 (1)
2 6501 日立製作所 電機・精密 -13.5 (1) 0.32 (1)
3 6762 TDK 電機・精密 -13.1 (1) 0.32 (1)
4 3563 FOOD & LIFE COMPANIES 小売 -10.2 (1) 0.10 (1)
5 4063 信越化学工業 素材・化学 -9.7 (1) 0.32 (1)
6 7936 アシックス 情報通信・サービスその他 -9.3 (1) 0.10 (1)
7 5801 古河電気工業 鉄鋼・非鉄 -9.1 (1) 0.12 (1)
8 7453 良品計画 小売 -8.9 (1) 0.19 (1)
9 4307 野村総合研究所 情報通信・サービスその他 -8.6 (1) 0.17 (1)
10 5802 住友電気工業 鉄鋼・非鉄 -7.0 (1) 0.30 (1)
11 6954 ファナック 電機・精密 -6.8 (1) 0.26 (1)
12 9766 コナミグループ 情報通信・サービスその他 -6.7 (1) 0.22 (1)
13 3923 ラクス 情報通信・サービスその他 -6.1 (1) 0.08 (1)
14 7532 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 小売 -5.7 (1) 0.26 (1)
15 4004 レゾナック・ホールディングス 素材・化学 -5.4 (1) 0.22 (1)
16 5344 MARUWA 建設・資材 -4.9 (1) 0.17 (1)
17 7974 任天堂 情報通信・サービスその他 -4.7 (1) 0.34 (1)
18 7741 HOYA 電機・精密 -4.2 (1) 0.12 (1)
19 4684 オービック 情報通信・サービスその他 -4.2 (1) 0.27 (1)
20 3697 SHIFT 情報通信・サービスその他 -3.9 (1) 0.21 (1)
21 4519 中外製薬 医薬品 -3.7 (1) 0.15 (1)
22 4716 日本オラクル 情報通信・サービスその他 -3.7 (1) 0.19 (1)
23 7011 三菱重工業 機械 -3.7 (1) 0.25 (1)
24 8267 イオン 小売 -3.6 (1) 0.33 (1)
25 4385 メルカリ 情報通信・サービスその他 -3.5 (1) 0.18 (1)
26 9434 ソフトバンク 情報通信・サービスその他 -3.3 (1) 0.30 (1)
27 6754 アンリツ 電機・精密 -3.3 (1) 0.22 (1)
28 6526 ソシオネクスト 電機・精密 -3.2 (1) 0.29 (1)
29 6481 THK 機械 -3.0 (1) 0.29 (1)
30 3038 神戸物産 商社・卸売 -2.6 (1) 0.23 (1)
31 6506 安川電機 電機・精密 -2.5 (1) 0.26 (1)
32 2127 日本M&Aセンターホールディングス 情報通信・サービスその他 -2.3 (1) 0.23 (1)
33 6383 ダイフク 機械 -2.1 (1) 0.17 (1)
34 7013 IHI 機械 -2.0 (2) 0.22 (1)
35 9861 吉野家ホールディングス 小売 -1.7 (2) 0.33 (1)
36 6544 ジャパンエレベーターサービスホールディングス 情報通信・サービスその他 -0.9 (2) 0.08 (1)
37 3064 MonotaRO 小売 -0.8 (2) 0.13 (1)
38 4194 ビジョナル 情報通信・サービスその他 -0.7 (2) 0.26 (1)
39 9072 ニッコンホールディングス 運輸・物流 -0.6 (2) 0.32 (1)
40 4704 トレンドマイクロ 情報通信・サービスその他 -0.5 (2) 0.13 (1)
41 9697 カプコン 情報通信・サービスその他 -0.1 (2) 0.17 (1)
42 4626 太陽ホールディングス 素材・化学 0.1 (2) 0.20 (1)
43 3197 すかいらーくホールディングス 小売 0.1 (2) 0.30 (1)
44 7550 ゼンショーホールディングス 小売 0.2 (2) 0.26 (1)
45 9983 ファーストリテイリング 小売 0.6 (2) 0.10 (1)
46 3994 マネーフォワード 情報通信・サービスその他 0.6 (2) 0.17 (1)
47 6861 キーエンス 電機・精密 1.2 (2) 0.18 (1)
48 2371 カカクコム 情報通信・サービスその他 1.5 (2) 0.10 (1)
49 3397 トリドールホールディングス 小売 1.6 (2) 0.27 (1)
50 7747 朝日インテック 電機・精密 2.1 (2) 0.16 (1)
51 6368 オルガノ 機械 2.1 (2) 0.19 (1)
52 9449 GMOインターネットグループ 情報通信・サービスその他 2.2 (2) 0.31 (1)
53 1942 関電工 建設・資材 2.8 (2) 0.28 (1)
54 3774 インターネットイニシアティブ 情報通信・サービスその他 3.1 (2) 0.27 (1)
55 9744 メイテックグループホールディングス 情報通信・サービスその他 3.1 (2) 0.20 (1)
56 4186 東京応化工業 素材・化学 3.2 (2) 0.16 (1)
57 6845 アズビル 電機・精密 3.4 (2) 0.27 (1)
58 4062 イビデン 電機・精密 3.5 (2) 0.08 (1)

(注)母集団はTOPIX500。2026年7月初時点。過去12ヶ月リターンが最大分位であるものを抽出(5分位ベース)。過去1ヶ月リターンが低い順にソートし、銘柄数確保のために第3分位に加えて第2分位も抽出(3分位ベース)。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

ただし、大幅高となった高変動銘柄のファクターが先導役となり、他の銘柄が追随する効果の持続性は短くなってきており、その期間は2ヶ月持たなくなっている点には注意が必要です。

その月に変動の激しかったファクターに属していて、かつまだ株価が上がっていない銘柄が追随して上がりやすいかもしれない、ということですね。

そのような傾向があると分析しているのが以下のグラフです。具体的には、月次ベースで変動が激しく、かつ銘柄間で寄与の乖離が大きいファクターを選び、その中で出遅れていた銘柄をポートフォリオに加えます。このようにファクターの変動を定点観測し、注目するファクターおよびポートフォリオを定期的に入れ替えていく戦略(ファクター先導戦略)のパフォーマンスをまとめています。

「ファクター先導戦略」のパフォーマンス

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(注)「ファクター先導スコア」によりファクターを選出する。そのファクターリターンが正に大きかった場合は、ロング側(ショート側)で株価が低調(好調)なものに絞って、翌月のロング(ショート)対象とする。一方で、ファクターリターンが負に大きかった場合は、ショート側(ロング側)で株価が低調(好調)なものに絞って、翌月のロング(ショート)対象とする。株価の好調・低調は3分位したときの最大・最小分位で判断。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

「ファクター先導戦略」のパフォーマンスを長期でみると、概ね右肩上がりで推移していることが分かります。2017年頃に一服した後、若干、減速しましたが、足元では再び上昇基調となっています。

つまり、AIなど特定のテーマが上昇しているように見えるときに、そのテーマ以外の銘柄選択をする際の有効な投資戦略になるのではないかと考えています。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 クオンツ・アナリスト
西岡 伸
2018年野村證券入社。市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジー・グループに所属し、クオンツ分析の手法を用いた日本株調査を担当している。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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