2026.06.12 NEW
スペースXの上場規模は過去最大級 大型IPO後のS&P500は上昇傾向 野村證券ストラテジストが解説
米スペースXの上場は、最短で2026年6月12日にも予定されています。米オープンAIや米アンソロピックについても、年内上場の見通しが報じられています。2026年には、過去に例のない規模のIPO(新規株式公開)が実施される可能性が高まっています。過去の大型IPO時の株価動向、株価指数への組み入れ対応、大型IPOに伴うリスクについて解説します。
過去の大型IPOの整理
スペースXのIPOは、公募価格135米ドル、公募株数5億5000万株で、企業価値は1兆7,500億米ドルに達すると報じられています(2026年6月4日ロイター:「スペースX、IPO株価135米ドルに設定 1週間前倒しで決定」)。
1999年以降の米国における主な大型IPOは、2008年3月の米ビザ、2010年11月の米ゼネラル・モーターズ、2012年5月の米メタですが、いずれも公募金額は200億米ドル以下でした。また、グローバルで見ても、過去最大のIPOは2019年12月のサウジアラムコ、2014年9月のアリババ(ニューヨーク証券取引所)、2018年12月のソフトバンク(9434)などで200~300億米ドル規模にとどまっており、スペースXの上場規模は過去に例を見ない水準となります。
ナスダック、MSCI、FTSEは採用も、S&Pは早期採用を見送り
報道されているスペースXの企業価値(1兆7,500億米ドル)は、メタや米テスラを上回りますが、株価指数への採用対応は各社で異なります。
S&P500指数への採用には、米国取引所で12ヶ月以上取引があること、発行済株式数のうち50%以上が浮動株であること、直近4四半期の純利益合計がプラスであり、さらに直近の四半期の純利益もプラスであることなどの要件があり、これらは撤廃されていません。そのため、スペースXのS&P500指数への早期採用は見送られました。仮に早期採用された場合も、S&P500指数は浮動株調整後時価総額加重平均を採用しているため、構成比率は0.1%程度にとどまると試算されています。
これに対し、ナスダック100は、上場から15取引日後以降に指数へ追加可能とするよう指数算出ルールを変更しました。さらに、浮動株比率の要件を撤廃し、浮動株調整後時価総額の3倍までを時価総額とみなして指数ウェイトを算出します。この新ルールに基づく試算では、スペースXの指数比率は0.5~0.6%程度となりますが、現時点で極端な影響を及ぼす比率ではありません。
また、FTSEはスペースXをラッセルの各指数へ、MSCIも自社指数へ早期に組み入れる方針を公表しています。最近では個人投資家によるパッシブ投資が旺盛なため、指数組み入れへの関心は高いものの、上場直後は浮動株比率が限定されるため、指数ウェイトが過度に大きくなる可能性は低いとみられます。
大型IPO後は平均的に上昇傾向
スペースXのS&P500指数への早期採用は見送られましたが、大型IPOは既存上場企業の需給などに影響を与え、S&P500指数を変動させる可能性があります。2010年以降の米国取引所での上場日前後のS&P500指数の動きを見ると、公募金額が10億米ドルを超える大型IPO前後では株価が大きく変動しますが、その後は上昇する傾向が見られます。
(注)2010年以降に米国の取引所に上場した企業が対象。上場日前日を100とした時のS&P500の平均値を算出。
(出所)Bloomberg、S&Pより野村證券市場戦略リサーチ部作成
また、IPO規模が大きいほど、上場日以降3~4カ月にかけてS&P500指数が上昇する傾向も観察されます。上場直後にS&P500指数へ組み入れられるわけではありませんが、関連銘柄や株式市場全体への期待から、S&P500指数が上昇しやすくなる可能性があります。
さらに、米国で2010年以降に上場した企業の公募価格に対するリターン平均値は、いずれの期間でも公募金額10億米ドル超の大型IPOの方が高く、市場の期待の高さがうかがえます。ただし、上場から1週間後以降はリターンが全体平均と比べて低下傾向となり、上場直後の上昇幅が大きいことが要因と考えられます。
(注)2026年6月5日時点。2010年以降、米国の取引所に上場した企業が対象。
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
需給懸念は残るが、自社株買いによる「株数減」傾向は維持
大型IPOのリスクとして、需給への懸念が指摘されています。特にスペースXは個人投資家への割り当てを最大30%にすることを検討しており、通常のIPOの5~10%程度と比べて非常に高い水準です。そのため、投資家が資金捻出のため他の資産を売却する可能性があります。
実際、2026年5月以降、暗号資産(仮想通貨)は大きく下落し、暗号資産ETF(上場投資信託)からの資金流出も加速しています。このように、大型IPO資金捻出のため暗号資産が売却されている可能性を指摘する声もあります。ただし、S&P500ETFへの資金流入は多少鈍化しているものの、流入基調は続いており、株式市場に明確な悪影響が出ているとは言い切れません。
IPOブームは市場の過熱とその後の冷え込みと関連付けられることがあります。元シカゴ大学金融学教授のオーウェン・ラモント氏は「バブルの4騎士」として、「割高なバリュエーション(投資尺度)」「バブル的信念」「株式発行」「資金流入」を挙げています(2026年2月1日フォーチュン:‘We’re not in a bubble yet’ because only 3 out of 4 conditions are met, top economist says. Cue the OpenAI IPO)。同記事では、「割高なバリュエーション」「バブル的信念」「資金流入」の3点は満たされており、「株式発行」として2026年のIPO動向に注目が集まっていると指摘されています。
実際、ITバブル期と比べてIPO金額は2026年後半にかけてさらに増える可能性がある一方、案件数はそこまで増加していません。ITバブル期には一件あたりのIPO金額が小さい案件が乱立したことで、バブル崩壊の連鎖につながった可能性がありますが、現在はプライベート・エクイティやプライベート・クレジットなど資金調達手法の多様化により、未公開のまま大きく成長した企業が多く存在します。
また、米国での年間自社株買いは約1.2兆米ドルである一方、スペースX、オープンAI、アンソロピックの3社の大型IPOの合計規模を2000億米ドル程度と仮定しても、「株数減」傾向は維持されます。IPOによる一時的な需給懸念は残りますが、財務健全性や収益性の高い企業であれば、AI分野での生産性向上期待とあわせて、今後も根強い需要が見込まれます。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
米国マクロメモ:過去の大型IPOの傾向を整理 – 2026年は大型IPOラッシュ、株式市場への影響を整理(2026年6月11日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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