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2026.07.15 NEW

米CPIの下振れサプライズで米利上げが遠のく? ウォーシュFRB議長は物価安定重視を継続 野村證券・小清水直和

米CPIの下振れサプライズで米利上げが遠のく? ウォーシュFRB議長は物価安定重視を継続 野村證券・小清水直和のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

米国の6月のCPI(消費者物価指数)が市場予想を大幅に下回り、サプライズとなりました。早期利上げ観測が後退したことから、株価はやや押し上げられる形で推移しました。CPIの結果は、米国のインフレ基調判断や金融政策にどのような影響があり得るのか、野村證券シニア金利ストラテジストの小清水直和が解説します。

米CPIの下振れサプライズで米利上げが遠のく? ウォーシュFRB議長は物価安定重視を継続 野村證券・小清水直和のイメージ

CPIはサービスの下落がサプライズに

6月コアCPI(食料エネルギー除く)は前月比+0.0%(5月同+0.2%、市場予想同+0.2%)と、市場予想を下回り大きく減速しました。各項目のコアCPIに対する前月比寄与度は、財で-0.03%ポイント→-0.02%ポイント、家賃で+0.14%ポイント→+0.09%ポイント、家賃除くサービスで+0.09%ポイント→-0.07%ポイントでした。

コアCPIの寄与度分解(左:前年比、右:前月比)

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(注)家賃は宿泊を除く。2025年10月分は一部の項目しか公表されず、全体やコア(食料エネルギー除く)は欠損。このため、図表上では2025年10月分は非表示。図表上で2025年11月の前月比寄与度は、2025年9月からの2ヶ月分の変化を1/2とすることで算出。
(出所)米国労働統計局より野村證券市場戦略リサーチ部作成

財では衣服が4ヶ月連続で減速しました。関税による影響が剥落しつつあるのだろうと考えられます。一方、自動車では価格下落が止まりました。昨年のEV(電気自動車)補助金切れに伴いCPIベースの自動車は価格下落が続き、従来先行指標であった中古車価格の上昇と乖離しつつありました。今回で乖離がやや狭まった形です。

コンピューター周辺機器の価格は上昇しているものの、コンピューター全体や電話機では価格下落が続きました。半導体価格急上昇の影響はまだ顕著には表れていないと言えるでしょう。家賃は低い伸びを続けています。各種先行指標が示唆する通りです。

CPI パソコンと半導体価格

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(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

家賃除くサービスがマイナス化したことが、今回サプライズとなりました。内訳では、前回5月分でイレギュラーに大きく上昇していた医療や情報通信が下落しました。また、宿泊も下落しました。ワールドカップ開催により一部の都市では宿泊費が大幅上昇していますが、全国としての影響はそれほど大きいものではないことも影響しました。サービスについては、数ヶ月で均して基調的な動きを把握する必要があろうと考えられます。

ウォーシュ議長はインフレ警戒姿勢

CPI公表後にはFRB(米連邦準備理事会)のケビン・ウォーシュ議長の議会証言が行われました。「物価安定にコミットしている。そのために政策金利とバランスシートというツールを持っている」「今朝のCPIは期待と比較して良好だったが、それで任務完了と言うつもりはない」「今朝のCPIは一つのデータポイントに過ぎない」との言及からは、インフレ警戒姿勢が窺われます。CPIの下振れサプライズにはイレギュラーな変動の大きい品目も寄与しています。インフレの基調判断のためには、数ヶ月均す必要があるでしょう。

AI投資について、ウォーシュ議長は「現在の経済において最も顕著な特徴は設備投資が急成長していること」と述べました。ウォーシュ議長はAIを良い「供給ショック」と述べましたが、短期的には需要増加も重視しているように見受けられます。

ウォーシュ議長が立ち上げを表明した金融政策に関する5つの「タスクフォース」に関してはコア(食料エネルギー除く)や刈込平均など既存のインフレ指標は「基調的なインフレ動向を捉える上で十分に優れているわけではない」「大手小売店の平均価格や中央値など、新しい指標が必要だ」と述べました。

インフレ加速なら利上げの可能性も

野村證券の米国拠点では、金融政策の据え置き継続を予想しています。ただし、コアPCE(個人消費支出)インフレ率(食料エネルギー除く)が夏過ぎでも前月比ベースで平均的に+0.3%前後を続ければ、FOMC(米連邦公開市場委員会)で投票権を持つメンバーの過半数は年内利上げを支持すると予想されます。その場合には、ウォーシュ議長がたとえ潜在的に据え置き~利下げを志向していたとしても、多数派の意見に一定の理解を示し、利上げを支持しようと考えられます。

コアPCEインフレ率(前年比と前月比の対応関係)

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(注)コアPCEインフレ率は食料エネルギー除く。2026年6月以降は試算。試算では、前月比がそれぞれ続いた場合の前年比を計算。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

FOMC中心メンバーのウィリアムズNY(ニューヨーク)連銀総裁は、従来インフレは一時的との見方だったが、このところ警戒を強めつつあります。ウィリアムズ総裁は、7月9日には、今年下半期にコアPCEインフレ率(食料エネルギー除く)が前月比+0.2%まで低下しない場合には利上げが必要になる可能性を示唆しました。

同様に、局面によって姿勢を変化させやすいFRBのウォラー理事も、インフレ警戒姿勢を強めつつあります。ウォラー理事は、7月13日に、コアPCEインフレ率(食料エネルギー除く)が今年に入り前年比でみて加速していることを懸念している旨を述べました。前月比では、コアPCEインフレ率(食料エネルギー除く)は2025年中には+0.2%前後まで減速したが、今年は+0.3%前後まで加速しています。前月比で+0.3%が続けば、前年比は今後も上昇し続けると試算されます。ウォラー理事は、「インフレが正しい方向に進んでいると実感するには、コアインフレ率が数ヶ月間低い数値を続ける必要がある」とも述べました。

特に注目されるのはAI投資による影響です。AI投資の影響については上述のウォーシュ議長、ウィリアムズNY連銀総裁、ウォラー理事のいずれもが言及を強めています。AI投資の影響により半導体価格が急上昇しており、今後はパソコンやスマホといった電子機器に影響が及ぶと予想されます。加えて、AI投資は雇用持ち直しの一因となっています。労働市場の需給逼迫が強まれば、「失業率低下→賃金インフレ加速→サービスインフレ加速」のステップが進み、インフレが広範な項目に及びかねません。

米金利一旦低下も雇用・インフレが底堅ければ再上昇か

米金利は、夏場には一旦低下することも考えられます。雇用統計に季節調整の歪みが生じており、夏場には実態よりも弱めの数字が出やすいためです。ただし、米金利低下が持続的となるためには、雇用・インフレの減速傾向が明確化する必要があると考えられます。雇用・インフレが底堅い数字を続ければ、年末にかけては再度金利が上昇するであろうと考えられます。一方、今年の景気を押し上げインフレ圧力の源泉となり得る財政刺激効果やAI投資は、来年以降は減衰していくと予想されます。 10年金利は3年先1ヶ月金利と連動性が高いです。足元の3年先1ヶ月金利は3.90%前後です。一方、もし利上げが決定される場合には、インフレが現在よりも鮮明化しており、市場の利上げ織り込みは一層拡大していると予想されます。もし市場が25bp(ベーシスポイント)×4回の利上げを織り込み3年先1ヶ月金利が4.75%前後まで上昇すれば、10年金利は5.5%前後まで上昇すると試算されます。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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