2026.06.09 NEW
長期金利上昇は「AI・半導体株以外」への投資を促すか 株式相場は底堅く推移すると考える理由 野村CIO・宮嵜浩
写真/タナカヨシトモ(人物)
米雇用統計が市場予想を大幅に上回ったことを受け、米長期金利の上昇を意識した株式市場の値動きが大きくなっています。野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングCIOマネジメント部(野村CIO)のチーフ・ストラテジストである宮嵜浩は、景気回復に伴う「良い金利上昇」であれば、足元の相場上昇を牽引してきたAI・半導体以外への投資が促されるのではないかとの見方を示しています。以下、詳しく解説します。
半導体株が急落も「全面安」は回避された背景
日本株が週明けに急落しました。2026年6月8日の日経平均株価の終値は、前週末(6月5日)の終値に比べ3.8%低い64,024円60銭となりました。前週末にあたる6月5日の米国株式市場で、情報通信などハイテク株が大幅に下落しました。特に半導体関連銘柄が急落したこともあり、半導体株の影響を受けやすい日経平均株価は、東証株価指数(-2.4%)を超える下落率となっています。
6月5日に米国株が下落した背景には、同日に発表された5月の米雇用統計で、雇用者数の増加幅が市場予想を上回るなど、米労働市場の回復が確認されたことがあります。労働需給の改善がインフレ圧力を強めるとの見方から、マーケットで利上げ観測が高まった結果、米国の長期金利が押し上げられました。
一般に、半導体セクターに象徴される成長株は、成長投資の資金調達コストを高める金利上昇が、株価の下落圧力を強める傾向があります。6月5日の米国では、生活必需品や公益などのセクターは上昇しています。いわゆる「全面安」の展開ではありません。
(注)S&P500エコノミックセクター株指数の前日比変動率。
(出所)S&P、Bloombergより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成
「良い金利上昇」なら株式相場は底堅く推移する見通し
米国の長期金利に足並みを揃える形で、日本の長期金利(10年国債利回り)も上昇しています。6月8日午前にはイランとイスラエルの新たな軍事衝突が伝わり、原油相場が急上昇しました。これを受けてインフレ懸念が強まり、日米の長期金利上昇に拍車がかかりました。日本の10年国債利回りは、5月28日以来となる2.7%超の水準まで上昇しています。(6月8日午前11時30分時点で2.71%)。
(注)直近値は6月8日午前11時30分時点。
(出所)JPX総研、Bloombergより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成
米国と同様、日本の景気も回復局面にあります。ただ、景気回復の勢いは米国には及ばず、かつ先行きは原油価格の上昇に伴う交易条件の悪化が、日本企業の収益性の低下を招く可能性が高く、原油価格上昇で交易条件が改善する米国とは対照的です。原油価格の上昇リスクが高い状況においては、米国株が相対的に有利です。
長期金利上昇の背景には、日米ともに景気回復があります。景気回復に伴う「良い金利上昇」を前提にすると、今後の株式相場は、AI・半導体以外にすそ野を広げながら、底堅く推移する見通しです。
- 野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング CIOマネジメント部チーフ・ストラテジスト
宮嵜 浩 - 1994年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、2001年中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。1994年に山一証券へ入社。その後、富士通総研、三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、しんきんアセットマネジメントチーフエコノミスト、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト、みずほリサーチ&テクノロジーズ主席エコノミスト、伊藤忠総研マクロ経済センター長兼主席研究員として国内外のマクロ経済やマーケットの調査・分析に従事。
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