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2026.07.30 NEW

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

FRB(米連邦準備理事会)は、2026年7月28〜29日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、政策金利の据え置きを決定しました。野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストは、9月FOMCが利上げの可能性を含む「ライブ」な会合になると指摘しています。以下、詳しく見ていきます。

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和のイメージ

9対3で政策金利の据え置きが決定

FOMCは9対3で政策金利の据え置きを決定しました。反対したのはハマック・クリーブランド連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁で、25bp(ベーシスポイント)の利上げを主張しました。ハマック総裁とローガン総裁の利上げ票は、事前のコミュニケーション通りです。カシュカリ総裁はここ数週間の発言が少なかったものの、以前からインフレへの警戒姿勢を非常に強めていたため、利上げ票を投じたことは自然です。

声明文の変更は、政策決定に関する箇所を除けば、豊富な準備預金を維持するバランスシート政策について「再確認した」から「続けている」への変更にとどまりました。

「雇用の増加ペースは労働力に沿っている」「インフレは2%目標と比較して高止まりしている」との評価は維持されました。6月分の雇用とCPI(消費者物価指数)は単月では伸びが低かったものの、こうした評価が維持されたことは、FOMCが数ヶ月にわたる基調的な動きを基に判断していることを示唆しています。また、ベージュブックのような定性的な材料も判断の土台になっていると考えられます。

ウォーシュ議長記者会見

ウォーシュ議長は「ここ数年の経済に対するショックを深刻に受け止めている」「今後数ヶ月で(in the coming months)より良い判断ができる」と述べました。今後もインフレが基調的に低下する兆候が確認されなければ、9月会合でも利上げに動く可能性が示唆されます。

一方、ウォーシュ議長は前回会合以降の米金利上昇が「大幅な引き締まり」の役割を一部果たしたとの見方を示唆しました。ウォーシュ議長は、フォワードガイダンスの縮小によって、市場が経済情報により敏感に反応しやすくなったとみています。物価安定を強調するコミュニケーションで米金利上昇を促し、実際の利上げはできるだけ回避する、という考え方ではありません。ただし、市場では、ウォーシュ議長が実際の利上げ決定に消極的との見方が一部で台頭することも考えられます。

また、ウォーシュ議長は政策手段が必ずしも政策金利だけではないと述べ、バランスシートによる緩和効果も主要な議論になったことに言及しました。ウォーシュ議長が、利上げだけでなくバランスシート縮小もインフレ抑制に効果的と考えていることが示唆されます。

物価安定への信認がやや低下

今回会合での利上げ織り込みは、直前でも7bp程度残っていました。一部には、ウォーシュ議長率いるFOMCの政策反応関数(経済情勢に対する政策判断の規則性)がパウエル前議長時と比べて大きく変化し、物価安定への信認を強めるために今回利上げが決定されるとの予想があったとみられます。政策金利が据え置きとなったことで、こうした見方はいったん否定された形です。

ウォーシュ議長就任(5月22日)以降、実質金利は上昇し、BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)は低下傾向、米債カーブはベアフラット化傾向をたどってきました。今回政策金利が据え置きとなったことで、こうした動きには一部反動が生じているとみられます。もっとも、大勢が利上げを見込んでいたわけではないため、ビハインドザカーブ(政策対応の遅れ)のような形でBEIや10年金利が大幅な上昇を続けるとまでは考えにくいです。

9月FOMCは「ライブ」な会合に

ウォーシュFOMCの政策反応関数を巡っては、引き続き不透明感が強いです。それでも、先行きを見極める上ではヒントがあります。6月FOMC議事要旨では、2つのシナリオでほぼすべての参加者が一致している様子が示されました。

1つはインフレが目標の2%へとすぐに(soon)戻り始めるシナリオであり、この場合は政策金利の据え置き、場合によっては最終的に利下げが適切になることが示されました。もう1つはインフレが高止まりするシナリオであり、この場合は利上げが必要になることが示されました。

利上げの妥当性を巡ってFOMC参加者の見方は大きく割れつつありますが、政策反応関数はほぼ一致しており、違いはインフレ見通しに帰着するといえます。また、「すぐに」との表現からは、インフレが目標の2%を5年も上回り続けていることに対し、FOMC参加者が危機感を強めている様子がうかがえます。ウォーシュ議長が「今後数ヶ月」でより良い判断ができると述べたことからも、次回9月FOMCは利上げがあり得る「ライブ」な会合になると見込まれます。

コアインフレ高止まりなら利上げ

FOMC中心メンバーのウィリアムス・ニューヨーク連銀総裁は、コアインフレ率(食料・エネルギーを除く)が今年下半期に前月比で+0.2%へ低下しなければ、利上げが妥当である旨を述べています。9月FOMCまでに雇用統計が基調的に月+10万人前後以上で推移し続け、コアインフレ率が前月比で基調的に+0.3%以上で推移し続けるなら、9月利上げが決定されるリスクは格段に高まるでしょう。もっとも、同社米国拠点は、今後のコアインフレ率が前月比で+0.2%で推移すると予想しています。また、雇用統計は季節調整のゆがみにより、夏場には弱めに出やすいです。このため、9月の政策金利据え置きがメインシナリオです。

利上げの場合には10年5%台半ばも

市場が織り込む政策金利パスは、2027年にかけて2回程度の利上げ、その後は利下げというものです。ただ、実際にはSOFR(担保付翌日物調達金利)オプション市場では、利上げポジションと利下げポジションが両建てで積み上がっており、平均すればそうした市場期待になっている形です。

ストライク別・SOFR オプション残高変化

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和のイメージ

(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

もし利上げとなれば、利下げを見込むポジションが巻き戻され、金利上昇が増幅されるでしょう。また、十分な引き締めのためには、既存の市場織り込みを上回る利上げが必要と想定されます。

米10年金利は、政策金利到達点の市場期待を示す3年先1ヶ月金利と強く連動しています。3年先1ヶ月金利が100bpの利上げを織り込み、4.75%まで上昇すれば、米10年金利は5%台半ばまで上昇すると想定されます。

10年金利と3年先1ヶ月金利

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和のイメージ

(注)2023年以降のデータ。青丸は直近付近のデータ。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

一方、FOMCが実際に利上げに踏み出せば、景気減速懸念が強まり、米金利はむしろピークアウトしやすくなると想定されます。足元の景気持ち直しをけん引している財政刺激効果とAI投資は、将来的には弱まることが予想されます。

FRBは金利据え置きも、インフレ高止まりなら9月FOMCは「ライブ」な会合に 野村證券・小清水直和のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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