2026.03.09 NEW
原油高の為替市場への影響 安全通貨としての円の強さを相殺する可能性 野村證券・後藤祐二朗
撮影/タナカヨシトモ(人物)
米国とイスラエルがイランを攻撃し、最高指導者ハメネイ師が死亡しました。イランは対抗措置としてホルムズ海峡を「事実上封鎖」しており、原油供給への懸念が急速に高まっています。中東情勢の緊迫化を受け、原油価格が高騰しています。為替市場への影響を野村證券チーフ為替ストラテジストの後藤祐二朗が解説します。

原油高の持続性と貿易収支への影響に注目
米国およびイスラエルによるイラン攻撃を受け、初動ではリスク回避姿勢の強まりとポジション(持ち高)調整により、クロス円で円高が進みました。ただ、原油価格上昇がどの程度持続するかには注意が必要です。2025年の日本の鉱物性燃料の輸入金額は22.1兆円に上ります。エネルギー価格が10%上昇して高止まりすれば、輸入金額が2兆円以上増え、貿易収支の悪化につながり得ます。原油高で景気の減速圧力が強まる場合、輸入数量の減少により貿易収支の悪化圧力は一部相殺されるものの、2兆円規模の円需給悪化は、年率で約2%程度の円安・米ドル高圧力になり得ます。
主要通貨の対米ドル相場の騰落率(月間)について、米国株安局面の平均的なパフォーマンスをみると、原油価格も同時に下落している局面では円が全面高になりやすい一方、原油価格が上昇している局面では円買いにつながりにくかったことが確認できます。原油高は日本の交易条件や貿易収支に下押し圧力となり、原油価格の高止まりが長引くほど、円は安全通貨として機能しにくくなる可能性が示唆されます。
(注)原油価格はWTI。局面毎の対米ドルの月間平均パフォーマンス。2000年以降。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
本邦当局の対応も焦点に
イラン情勢の悪化に伴う世界的なリスク回避の強まりに対し、日本当局がどう対応するかも重要です。日本銀行の植田和男総裁は、現時点では緩やかな利上げの継続姿勢を維持しています。円安局面での国内価格への転嫁率の上昇や、物価上振れに伴う長期金利の上振れリスクにも言及しており、市場の不安定化への警戒も続けているとみられます。
また、片山さつき財務相は3月4日、為替相場について「ファンダメンタルズを反映した安定的な推移が望ましい」「日米財務相声明には為替介入も選択肢に含まれる」と発言し、警戒姿勢を維持しました。「市場動向を極めて高い緊張感を持って注視する」「万全の対応を取るべく海外当局ともさらに緊密に連携する」としており、1米ドル=160円前後では介入リスクが意識されやすい状況です。
イラン情勢の悪化により、当面の金融政策の不確実性は高まっていますが、円安局面では為替介入と合わせて利上げ機運が高まりやすい環境は維持されていると言えます。ただし、政治的に低金利の長期化を求める圧力も意識されるなかで、日銀の姿勢が再びハト派(利上げに慎重)に傾く場合、目先の円高圧力を抑えることにもつながります。特に原油高によるインフレ警戒の高まりから、市場はECB(欧州中央銀行)など海外中央銀行の金融政策見通しを大きく見直しています。世界的に利下げ観測が後退し、利上げ開始への期待が高まるなかで日銀がハト派姿勢を強める場合、円安圧力が一段と強まる可能性も否定できません。
目先は米ドル円上振れとクロス円の調整を警戒
軍事攻撃が早期に終結し、事態が沈静化に向かうかを見極める必要はありますが、短期的には米ドル円の上振れと、クロス円の調整リスクに警戒が必要です。原油価格の高止まりや、日銀の緩和姿勢の強化につながる場合は、円安圧力が強まる可能性があります。日本当局による口先介入やレートチェック、実弾介入などの可能性にも、引き続き注意が必要です。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗 - 為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半に渡るニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。
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