Research

野村リサーチ

2026.09.03 NEW

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

物価高が続く中、新品に比べ価格が安いリユース品(中古品)へ注目が集まっています。今後、原油高によるインフレの本格化にあわせ、家計はどのように節約志向を強めるでしょうか。マクロ経済の視点から、野村證券経済調査部の伊藤勇輝エコノミストが解説します。

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

原油高による値上げに家計は耐えられるか

中東情勢の緊迫化を受け、中東からの輸入依存度が高い原油・ナフサを中心に輸入価格が上昇しています。すでに7月分の全国CPI(消費者物価指数)では、エネルギー以外の財品目においても、原油・ナフサの価格上昇の影響が見え始めています。その上で、(1)夏場以降に値上げ予定の企業数が多いこと、(2)電力・ガス会社による電気代・都市ガス代の算定方法(使用月から遡り3~5ヶ月前の原燃料価格を参照)などを踏まえると、8月以降も資源高の価格転嫁が続く見込みです。

今後もインフレ圧力が高まることが予想される中、家計は値上げに耐えることができるでしょうか。家計の値上げ許容度を見てみましょう。下の図表は日銀が四半期に一度実施する『生活意識に関するアンケート調査』の「現在の物価上昇についての感想」という設問に対し、「(物価上昇は)どちらかと言えば、好ましいことだ」から「どちらかと言えば、困ったことだ」の回答比率を差し引いた値を、家計の値上げ許容度の代理変数としてまとめたものです。

「値上げ5年目」を迎えるが、家計の値上げ許容度は高まらず

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

(注)データ開始期(2004年6月調査)から直近データまでの平均値を控除して表示。2005年以前のデータは、旧基準計数の前期差を接続して算出。2005年は9月の計数が利用できない欠測です。
(出所)日本銀行資料より野村證券経済調査部作成

食料・エネルギー主導でインフレ率が上昇した2022年前後に値上げ許容度は大きく低下しましたが、足元(2026年6月調査)でも同様の動きが確認できます。「賃上げ」と「値上げ」が並走する一方、実質賃金が明確に上昇しなかったこともあり、家計の「値上げ嫌い」が払拭されたわけではないと読めます。そのため、ひとたびインフレ局面が訪れると、家計は生活防衛意識を高める、すなわち節約志向を強める消費行動に陥りやすくなります。

インフレ局面では節約志向の「仕方」に注目

では、インフレ局面で、家計はどのように節約志向を強めるのでしょうか。

まず「節約」という消費行動を整理すると、

① 購入数量の減少:購入する財・サービスの質(単価)を下げず、これまで2個買っていたものを1個に減らすなどの動き

② 購入単価の引き下げ:購入数量が変わらない状況のもとで、より安価な財・サービスへ消費者の嗜好がシフト

に大きく分けることができます。

いずれの消費行動も、GDP統計では名目個人消費の減少に寄与します。ただし、節約志向の「仕方」によっては、小売・サービスセクターのうち、コスト面で優位性を維持する(≒安さを売りに勝負をする)企業を中心に、むしろ追い風になる展開も想定されます。

2022年のインフレ局面で家計はどう節約したか

この点のヒントを得るため、2022年前後のインフレ局面で見られた消費行動を振り返ってみましょう。当時、インフレ率(総合ベース)は2021年後半から2022年後半にかけて上昇しました。そこで同期間の前後の消費動向を確認すると、食料や家具・家事用品、教養娯楽を中心に実質消費が減少しました。かつ実質消費の減少は、単価効果(上記②に相当)に比べ、数量効果(上記①に相当)が主導する形となりました。

2022年インフレ時は、購入数量の減少が主導

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

(注)2021年7月-2022年6月から2022年7月-2023年6月の消費の変化率。購入数量が公表されている品目を抽出し、実質消費(実質化は野村證券によります)と購入数量の変化率を品目ごとに算出し、両者の差分を単価効果としています。
(出所)総務省資料より野村證券経済調査部作成

より詳細に2022年インフレ時の消費行動を品目別にまとめたものが、下の図表です。図表では、2022年前後で、実質消費が減少した品目を示しております。それらを縦軸ではインフレ時に購入数量を減らしたか、単価を引き下げたか、横軸では品目ごとの購入頻度の高低により、4つのグループへ分類しています。とりわけ食料では購入頻度が高い品目、食料以外では購入頻度が低い品目を中心に「無駄遣い」を減らす動きが見られました。

2022年インフレ時の品目別消費行動

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

(注)いずれも2021年7月-2022年6月から2022年7月-2023年6月にかけて実質消費が減少した品目です。品目ごとの購入頻度の中央値を基準とし、それを上回る品目を「高頻度品目」、下回る品目を「低頻度品目」に分類しています。数量主導で減少した品目を「単価維持型」、それ以外を「数量維持型」に分類しています。
(出所)総務省資料より野村證券経済調査部作成

リユースブームで節約の仕方や消費スタイルは変わるのか

ただし、2022年前後と2026年のインフレ局面で、家計が同様の消費行動を取るとは限りません。その背景の1つに、「リユースブーム」が挙げられます。リユース企業12社の売上高が、2022年前後から足元にかけて大きく増えている点から、リユース市場の拡大がうかがえます。リユース企業の業績や今後の株価の見通しについては、こちらの記事で野村證券ストラテジストが解説しています。

リユース12社の四半期売上高・経常利益推移

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ

(注)直近は2026年4-6月(または3-5月)。2026年8月21日時点。
(出所)QUICKより野村證券市場戦略リサーチ部作成

コメ兵ホールディングスが実施した「2026年 リユースに関する意識・実態調査」によれば、リユース利用の目的として「価格が安いから」の回答比率が高いです。例えば、リユースブームによって、家電の買い替えを考えている人が、新品価格の高騰を受けて買い控えるのではなく、価格の安いリユース品を購入するケースなどが想定されます。

このような消費行動を行う家計が一定数増える場合、前述した「2022年インフレ時の品目別消費行動」の「単価維持型」に該当する品目(図表上)の一部は、「数量維持型」(図表下)へシフトする可能性が考えられます。2022年前後のインフレ局面で、購入単価を維持することで購入数量を減らした「家具・家事用品」や「被服及び履物」などを中心に、新品に比べ安価なリユース品のシェアが増えるかもしれません。

加えて、同社の調査によれば、リユース利用の目的として「掘り出しものが見つかるから」の回答比率が比較的高い点、「使用感・風合いが魅力に感じるから」の比率が上昇している点も興味深いです。いずれも、その時々の物価動向に左右されず、リユース品ならではの体験価値に重きを置いて購入する人が一定数存在していることを示唆しているでしょう。そのため、リユース品はインフレ局面に限らず、トレンドとして消費者の効用を高めていく余地もあると言えます。

このようにリユース品を許容する消費者層も拡大しており、インフレが長引けば、リユースブームも長期化する可能性があります。家計がインフレを乗り越えるために、より安価なリユース品の購入を選択する機会も増える余地があると言えるでしょう。

インフレ下の節約志向をマクロ経済から分析 買う数量は変えずにリユースで安く入手する傾向? 野村證券・伊藤勇輝のイメージ
野村證券経済調査部 エコノミスト
伊藤 勇輝
2020年早稲田大学政治経済学部卒業後、野村證券入社。経済調査部へ配属後、一貫して日本経済の分析・見通し作成に従事。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

  • EL_BORDEをフォローする
  • Pick up

    ページの先頭へ