2026.10.09 NEW
原油価格は3つの輸送経路を巡る情勢が焦点に 高止まりするWTIの今後の見通しは? 野村證券・髙島雄貴
撮影/タナカヨシトモ(人物)
原油輸送において主要なホルムズ海峡の迂回路であるサウジアラビアの東西パイプラインが攻撃を受けたことで、2026年9月にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物先物価格は一時100米ドル/バレルを超える場面がありました。その後、原油価格は下落しましたが、足元では90米ドル付近で高止まりしています。9月の原油価格の動向と今後の見通しについて、野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部エコノミストの髙島雄貴が解説します。
サウジアラビアの東西パイプラインの一時停止が9月の原油高再燃の材料に
2026年9月のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物先物価格は、月末値で比較すると、9月末に90.42米ドル/バレル(以下、米ドルと省略表記)と、8月末値の85.76米ドルから+4.7米ドル(+5.4%)上昇しました。9月中のWTI期近物先物価格の最高値は106.75米ドル、最安値は86.13米ドルでした。他方、北海ブレントに関しては、9月末値は103.53米ドルと、8月末値の90.49米ドルから+13.0米ドル(+14.4%)と大幅に上昇しました。
(注)日付は現地時間。箱は前営業日の清算値から当営業日の清算値までの値動き、ヒゲは当営業日の最高値・最安値を示す。直近は10月5日。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部作成
2026年3月以降、ホルムズ海峡の迂回路として主要な役割を果たしてきたサウジアラビアの東西パイプラインが、ドローン攻撃によって一時操業停止となったことが、9月の原油高再燃の材料となりました。ただし、同パイプラインの原油輸送量は日量580万バレルまで回復したとサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が述べており(10月6日付、ロイター)、すでに概ね正常化したとみられます。
米国の中間選挙を控え、注目される米国とイランによる協議の行方
また、6月30日および7月1日にカタールのドーハで開催した協議以来、約2ヶ月半ぶりとなる9月22日に、米国とイランが協議を実施しました。今回は、カタールを仲介国としてニューヨークにて間接的な協議が実施されました。加えて24日には、イランのアラグチ外相が「一定の条件を満たした場合には、7日以内にホルムズ海峡を開放する計画がある」、またイランのペゼシュキアン大統領が「米国の中間選挙前までに、米国がイスラマバード合意の覚書に復帰することをイランは期待している」と述べ、ホルムズ海峡開放に向けた機運が高まりました。しかし、9月26日には、トランプ米大統領がイランの案を拒否し、またイランのアラグチ外相も「条件を緩めることはない」と主張しました。
とはいえ、トランプ米大統領は協議継続を示唆しており、今後の協議の行方が注目されます。
中東情勢を睨みながらWTIは75~95米ドルのレンジ相場を予想
先行きのWTI期近物先物価格は、75米ドルから95米ドルのレンジ相場になりやすいと野村證券では予想します。
想定レンジの下限である75米ドルは、6月17日のイスラマバード合意の際の水準です。イスラマバード合意では、60日間の一時停戦およびホルムズ海峡の一時的な開放が決定され、原油の需給緩和が期待されました。今後に関しても、米国とイランの協議に進展がみられた場合には、イスラマバード合意と同程度の需給緩和期待が生じると見込まれます。ただし、これまでも米国とイランは複数回、合意内容に反した攻撃を互いに実行してきたことから、仮に何らかの合意に再び達した場合であっても、原油価格への押し下げ圧力は小幅にとどまる可能性も考えられます。
想定レンジの上限である95米ドルは、サウジアラビアの東西パイプラインが機能し続けることを前提とし、9月よりも原油輸送を取り巻く環境が悪化しないという想定をベースに設定しています。イランによるホルムズ海峡付近での船舶攻撃や、フーシ派によるバブエルマンデブ海峡付近での船舶攻撃などが小規模にとどまった場合には、WTIを100米ドル台へと再び押し上げる可能性は低いと見込まれます。
また、G7が10月4日にオンライン協議を行い、今後4ヶ月にわたって合計1億バレルの石油備蓄協調放出を行うと決定しました。最初の20日間はディーゼル油を重点的に放出することも決まりました。少なくとも2027年1月末までは、現状と同程度の原油需給環境が維持されると想定されます。
他方、OPECプラス(OPEC=石油輸出国機構とロシアなど非加盟産油国の枠組み)は毎月の有志会合において、4月分から9月分の6ヶ月間で日量124万バレルの生産枠引き上げを決定しました。11月29日の閣僚級会合では、2027年の生産枠が決定される予定ですが、日量200万バレルの協調減産に関して、自主減産と同様に今後1年もしくは1年半をかけて巻き戻し(増産)が決定されると野村證券では予想しています。
仮に今後、中東情勢を取り巻く混乱が完全に落ち着いた場合には、原油需給は2026年2月よりも緩和された状況へ向かうこととなります。原油輸送が正常化する過程において、原油価格への押し下げ圧力が一時的に強まるリスクにも注意を要します。ただし、上述の通り、米とイランの双方が合意を守り続けられるかへの懸念が残っている状態の場合には、原油価格の下落は緩やかなペースになりやすいと考えられます。
- 野村證券 経済調査部・市場戦略リサーチ部 エコノミスト
髙島 雄貴 - 2018年野村證券入社。2023年6月まで日本経済担当エコノミスト。コモディティー調査を担当。原油をはじめとして、天然ガス、金、非鉄金属、穀物など、幅広い商品の市況を分析し、先行きの見方を提供。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。現在、日経ヴェリタスの「コモディティー・インサイト」に定期寄稿中。
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