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2026.10.27 NEW

円高への転換は近いか 原油価格が下がれば米ドル円の下落傾向が鮮明に 野村證券・後藤祐二朗

円高への転換は近いか 原油価格が下がれば米ドル円の下落傾向が鮮明に 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

世界的な金利上昇に一巡感が見られる中、為替市場では円を買い戻す動きが強まっています。一方、原油価格の高止まりは、円高への転換を遅らせる要因となり得ます。円相場は転換点に差し掛かっているのでしょうか。日銀の金融政策や中東情勢、原油価格の動向を踏まえ、今後の見通しを野村證券チーフ為替ストラテジストの後藤祐二朗が解説します。

円高への転換は近いか 原油価格が下がれば米ドル円の下落傾向が鮮明に 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

市場心理不安定化で円高に

先週の為替市場では週後半に円買いが加速し、米ドル円は一時156円台前半、ユーロ円も175円台前半まで下落しました。

ドル円とユーロ円相場

円高への転換は近いか 原油価格が下がれば米ドル円の下落傾向が鮮明に 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

仏国債を中心にユーロ圏の債券市場が不安定な状況にある中、米株式市場ではハイテク株を中心に株価が下落しました。信用リスクへの警戒感が高まり、円が買い戻される展開となりました。

9月の米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回った直後に5.3%台後半まで上昇した米10年債利回りは、先週後半には5%を下回りました。日本の10年債利回りも一時2.8%を下回る水準まで低下しました。過去の円相場を振り返ると、世界的な金利のピーク前後に円安圧力も頭打ちになりやすい傾向が見られます。原油価格の高止まりもあり、債券利回りの上昇圧力が再び強まる可能性は残ります。ただ、世界的に債券利回りの上昇圧力が弱まれば、相対的に円が選好される可能性が一段と高まるでしょう。

日銀は12月利上げへ地ならし 円安に歯止めはかかるか

日本の政策面では、7月末の協調介入を契機に日本銀行の利上げペースがすでに加速し、高市早苗政権のリフレ的な政策姿勢に変化が見られる点が重要でしょう。日銀の植田和男総裁はG20会合後の記者会見で、「基調物価はかなり2%に接近」と従来と同様の判断を示しました。一方、「基調物価が2%からこれ以上、上がることは容認できない」とも述べ、インフレの上振れを容認しない姿勢を示しました。先週の国会では、植田総裁が適切なペースで利上げすれば長期金利は安定的に形成されるとの見方を示しました。氷見野良三副総裁も、物価の上振れリスクが高い状態で金融緩和の度合いの調整が遅れれば「景気の悪化につながる恐れ」があると発言しました。日銀がビハインドザカーブ(金融政策正常化の遅れ)への警戒を強めていることがうかがえます。

日銀は10月会合で利上げを見送るものの、インフレ見通しや判断を上方修正する可能性が高く、12月の利上げ期待は維持されやすいでしょう。来年に向けても3ヶ月に1度の利上げを基本シナリオとし、円安などによるインフレの上振れリスクが顕在化すれば、利上げを前倒しするとみられます。一方、円高などでインフレの上振れリスクが低下したと判断すれば、利上げペースを再び落とす姿勢が想定されます。10月会合で利上げを見送った後は、12月の利上げに向けた地ならしを進めるでしょう。ビハインドザカーブへの懸念が後退し、円の安定に寄与する公算が大きいとみられます。

円高転換の条件は整いつつある カギを握る原油価格

米国を中心に世界的な金利上昇に一巡感が強まる中、日銀が利上げを続ける姿勢を維持すれば、内外のマクロ環境は円相場が転換点にある可能性を示すことになるでしょう。ただし、当面の不確実要因である中東情勢と原油価格の動向には警戒が必要です。

9月の貿易統計では、季節調整後の貿易収支は7,040億円の赤字でした。赤字幅は前月の8,011億円から縮小しましたが、市場予想の2,501億円を上回りました。半導体装置の輸出が好調を維持し、原油輸入額も小幅に減少したことが収支改善につながりました。ただ、先行きは原油価格の高止まりによる貿易収支の悪化リスクに警戒が必要です。

特に、足元の日本の原油輸入では、運賃上昇の影響も考慮する必要があります。米国とイランが停戦合意に向かった場合でも、原油の輸入先の分散による長距離輸送の増加や、船舶需給の逼迫による運賃の高止まりが、日本の貿易収支を悪化させる要因として残る可能性は否定できません。仮に中間選挙後の12月に米国とイランが何らかの合意に達すれば、2027年央には貿易収支の黒字化が期待できます。ただ、当面は原油高による需給面での円安圧力に警戒が必要です。

原油価格(WTI)と名目実効円相場

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(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

結論:原油価格が調整すれば円高傾向が明確化へ

日米欧の金融政策決定を控え、米国を中心に主要国の債券利回りの上昇に一巡感が見られます。日銀も10月会合では利上げを見送る公算が大きいものの、インフレ圧力が強まる中、タカ派姿勢を一段と強めそうです。マクロ経済環境は、円相場が転換点に差し掛かっている可能性を示唆しています。ただし、中東情勢を巡る不確実性は大きく、原油価格の高止まりは、世界的な債券利回りの高止まりや需給面での円安圧力の高まりを通じ、円高への転換を遅らせる要因となり得ます。米中間選挙の前後に、膠着が続いてきた中東情勢に変化が生じる可能性に注目したいと考えます。2027年に向けて原油価格が低下に転じれば、米ドル円の下落傾向が明確になると予想されます。

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野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗
為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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