2026.10.13 NEW
為替市場の焦点は中銀から選挙にシフト 日米欧の政治と財政スタンスに注目 野村證券・後藤祐二朗
撮影/タナカヨシトモ(人物)
米ドル円相場は158円前後で高止まりする一方、ユーロ円相場はフランスの財政・政局への警戒から上値の重い展開となっています。日米欧の主要中央銀行による10月の利上げ観測が後退するなか、為替市場の焦点は11月3日の米中間選挙に移りつつあります。米中間選挙後の米ドル相場やフランスの財政・政局、高市政権の政策姿勢が円相場に及ぼす影響について、野村證券チーフ為替ストラテジストの後藤祐二朗が解説します。
10月の主要中銀会合は無風となるか
米ドル円相場は158円前後で高止まりし、膠着しています。一方、フランスの財政・政局への警戒が残るなか、ユーロ円相場は上値の重い展開となっています。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
日米欧の金融政策を巡っては、10月会合での利上げ期待が抑制された状況が続いています。14日には9月の米CPI(消費者物価指数)の発表、16日にはFRB(米連邦準備理事会)のウォーシュ議長とIMF(国際通貨基金)専務理事による「ファイアサイド・チャット」が予定されています。FRBが10月の利上げを見送るとの見方が一段と強まれば、日銀やECB(欧州中央銀行)による利上げへの期待も同調して低下しやすいとみられます。為替市場では、主要中銀の10月会合への注目度が低下するでしょう。
中間選挙で民主党優勢となれば米ドル安圧力再燃も
主要中銀の10月会合が無風となれば、焦点は11月3日の米中間選挙に移るでしょう。オンライン予想サイトのポリマーケットでは、共和党が下院の過半数を維持する予想確率が10%前後まで低下し、上院で過半数を維持するとの期待も後退しています。現時点では、ホワイトハウスと議会のねじれが基本シナリオといえるでしょう。
| 上院 | 下院 | 金融政策を 通じた影響 |
ドル離れを 通じた影響 |
原油価格を 通じた影響 |
対中関係を 通じた影響 |
ドル見通し への影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 共和党 | 共和党 | + | + | +/- | - | ドル高反転のリスク上昇 |
| 共和党 | 民主党 | -- | - | - | +/- | ドル安トレンド継続 |
| 民主党 | 共和党 | - | - | - | +/- | ドル安トレンド継続 |
| 民主党 | 民主党 | - | -- | -- | +/- | ドル安トレンド継続 |
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成
民主党が上院を奪回した場合、FRB理事などの指名にトランプ政権の意向が反映されにくくなるとみられ、FRBの利上げに追い風となり得ます。しかし、民主党が上下院のいずれかで過半数を確保すれば、財政政策による景気の下支えが期待しにくくなります。AI関連規制への懸念も、米国経済への下押し圧力となるでしょう。結果として、2027年に向けて市場の利上げ期待が低下し、米ドル安圧力が強まりそうです。
また、AI関連規制への懸念が強まれば、海外投資家による対米株式投資の減速が、需給面から米ドル安圧力を強める可能性も否定できません。共和党が議会の支配を失えば、債務上限や政府閉鎖といったリスクも意識され、債券市場における米ドル離れの傾向も続きやすくなるでしょう。
仏財政・政局への不安が高まるもユーロへの影響は相対的に限定か
また、フランスの政局と財政の動向も、円相場にとって重要となるでしょう。2027年4月18日の第1回投票と5月2日の決選投票を控え、国民連合のルペン氏が勝利するとの見方が強まっています。2027年度予算案の協議が難航するとの懸念も高まり、フランス国債市場の不安定感が強まっています。
フランス国債とドイツ国債の利回り差(10年)は140bp(ベーシスポイント)前後まで大幅に拡大し、他のユーロ圏国債にも波及し始めています。一方、為替市場ではユーロ安が進んでいるものの、影響は相対的に限定されている印象です。オプション市場では予想変動率やリスクリバーサルの反応が限られ、ユーロ安へのヘッジ需要の高まりも限定的です。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
欧州債務危機以降、世界的にユーロ建て債券へのエクスポージャーが減少し、ヘッジ需要が低下しています。足元では、ドイツ国債などユーロ圏債券内での資金移動にとどまっている可能性があります。今後もフランスの政局と財政の動向には警戒が必要ですが、現時点のユーロ安圧力は、欧州債務危機時などと比べて限定的と判断されます。
日本では高市政権のリフレ政策転換の確度を点検
日本では高市早苗首相が国会で、現在の日本経済について「物価の持続的下落という意味でのデフレではない状況」としたうえで、リフレ政策の必要性を否定しました。また、「日銀の自主性を高市内閣として最大限尊重」と発言しました。改めて政策姿勢の変化が示唆されたといえるでしょう。日銀は3ヶ月に1度を基本とする利上げを継続しやすく、円相場などの動向次第では、より速いペースでの利上げも意識すべきでしょう。
高市首相は、2025年度補正予算後の新規国債発行額が40兆円程度になると言及したうえで、同様の取り組みを進めると発言しました。来年度予算の新規国債発行額が40兆円程度にとどまるかどうかは、債券市場のフラット化と円高・米ドル安基調の定着を見極めるうえで注目されます。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗 - 為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。
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