2026.11.05 NEW
日経平均株価5ヶ月半ぶり安値 米民主党の大勝でAI銘柄への逆風は続くのか? 野村證券・岡崎康平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
2026年11月5日の東京株式市場の日経平均株価は4日続落し、終値は前日比1,110.73円安の61,077.90円と、5月20日以来約5ヶ月半ぶりの安値を付けました。11月3日に投票日を迎えた米国の中間選挙はトランプ米大統領の支持基盤である共和党が敗北、民主党が大勝との結果になり、市場ではAI規制など株式市場にも波及し得るテーマについて、今後の方向性が注目されています。選挙結果の影響や先行きについて、野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が解説します。
AI規制はハイパースケーラーの参入障壁を強化、装置産業には逆風の可能性も
- 米中間選挙ではAI規制が1つの注目点になりました。大勝した民主党はAI規制に積極的ですが、AI関連銘柄への影響をどのように見ていますか?
-
投開票前後の株式市場では、やはりAI関連銘柄の動きが注目されました。民主党の台頭が予想されるなか、AI・データセンター関連の規制強化が懸念されていたためです。民主党の大勝が明らかになったいま、素直に考えればAI関連銘柄の値動きは冴えないはずですね。
ところが、実際にはAI関連銘柄のあいだで値動きに差が出ています。半導体メーカーや新興の「ネオクラウド」企業が値下がりした一方、GAFAMと呼ばれるハイパースケーラーの中には株価上昇の動きが見られます。民主党は確かにAI規制に積極的ですが、規制強化によってAI産業への新規参入が難しくなるため、既に巨額の設備投資を実施してきたハイパースケーラーには相対的に有利な状況が予想されます。データセンターの建設で儲かるAIツルハシ企業にとって規制強化は逆風ですが、データセンター建設の重荷を背負ってAIサービスを提供してきた既存のハイパースケーラーには良い面もある、ということですね。
- 日本株への影響をどう見ていますか。
-
AI・データセンターの規制強化に限定して言えば、日本株はAIツルハシ企業の存在感が大きいですから、逆風がやや意識されます。ただ、規制が強まると言っても、米国がAIや関連産業の発展を諦めたわけではないでしょう。AI業界では米中が2強として覇権を争っており、この構図は今回の中間選挙を経ても変わりません。過剰なAI関連設備投資が抑制される点は、短期的には関係する企業にとって逆風になると思いますが、少し長い目で見ればAI産業の健全な発展にむしろ貢献する可能性もあります。短期的な値動きと、長期的なAI産業の成長可能性はしっかり区別したいところです。
- AI関連以外で注目すべきポイントを教えてください。
-
AI関連以外では、防衛銘柄や再エネ関連銘柄に影響が出ると見られます。
防衛銘柄は国防予算の影響を受けます。トランプ大統領は2027年会計年度の国防予算を大幅に増額する意向を示していましたが、もともと議会の抵抗があったところ、今回の中間選挙を受けて更に財政拡張のハードルが上がりました。米国の防衛関連銘柄にはネガティブなニュースです。
ただ、米国以外の防衛関連産業にはポジティブな面もあるでしょう。米国が自身で防衛費を増やせない分、米国は同盟国に防衛費負担の増大を迫る可能性があるからです。日本も2026年末までに「戦略三文書」を改定する予定です。次期5か年計画の予算規模が拡大しやすい環境になりつつある点は指摘できます。
再エネ関連銘柄も、中間選挙後に値上がりの動きが見られます。トランプ政権は化石エネルギーの活用に前向きな一方、再生可能エネルギーの活用には必ずしも積極的ではありませんでした。他方、民主党は総じて再生可能エネルギーに好意的な政党です。日本も2027年度にエネルギー基本計画の改定を控えており、エネルギー供給の在り方に注目が集まりやすいと考えられます。少し長い時間軸での議論になりますが、再生可能エネルギー関連の政策が再び注目を集める展開にも注意しておきたいですね。
- インフレや原油価格は今後どうなっていくと想定していますか。
-
その点については、イラン紛争の先行きが注目されます。原油先物価格は直近限月で95米ドル前後まで下がり、10月末水準から既に15米ドル程度下落しました。トランプ大統領の継戦意欲が低下したと市場が認識した可能性があります。この状態が続くならば、2027年前半以降の米国のインフレには下押し圧力が加わるでしょう。ただ、イラン紛争の帰趨は米国だけで決まるわけではありません。ホルムズ海峡の通航料などを巡って、イラン側とどのような交渉が行われるかが引き続き注目されます。
外交・安全保障政策を巡り緊張感の高い期間が続くか
- 少し長い目で見て、今回の中間選挙が米国の政治・政策に与える影響を教えてください。
-
今回の中間選挙では、民主党が大幅に議席数を伸ばしました。下院の議席増は広く予想されていたためサプライズではないのですが、上院で54議席(過半数は51議席)獲得した点はサプライズです。上院の議事妨害(いわゆる「フィリバスター」)を停止できる60議席を確保できたわけではないのですが、トランプ政権に対する議会民主党の交渉力は格段に強まりました。
その結果、特に意識されるのが財政政策への影響です。既に述べた通り、上下両院で民主党が過半数議席を獲得したため、トランプ政権下で新たな財政政策を講じるハードルは大きく上がりました。また、2027会計年度の「つなぎ予算」期限が12月11日に迫っています。中間選挙で大勝した民主党との協調を模索する意味でも、トランプ大統領・議会共和党が予算案の内容で妥協する可能性があります。
トランプ政権の骨格をなす閣僚の人事や、FRB(米連邦準備理事会)の人事も上院の承認が必要です。トランプ大統領の意向を強く反映した人事は通りにくくなったと言えるでしょう。大統領権限で政策を実行できる関税政策や外交・安全保障政策はともかく、議会民主党の存在感が拡大したことでトランプ政権の活動可能領域は狭まったことになります。
- 逆に言えば、大統領権限を今まで以上に用いる可能性があるわけですね。
-
その通りです。中間選挙を通過し、トランプ政権はいわゆる「レームダック」期間に入ります。過去の大統領には、この期間に自らの政治的遺産(レガシー)を構築する動きが見られました。制度上、大統領を3期務めることはできませんので、もう選挙を意識した政策を打つ必要がなくなるからです。直近で当てはまるのは、オバマ前大統領が2015年~2016年にかけて外交活動を活発化させた事例ですね。現役の米国大統領として初めて広島を訪れたのも、2016年5月のことでした。「核兵器のない世界」に向けた取り組みの一環ですね。
トランプ大統領も、同様のパターンに沿って外交・安全保障関連の取り組みに専念する可能性があります。ただ、それがどのようなかたちで具体化するか、現時点では未だ不透明です。トランプ政権は第2期(2025年~現在)に中東やウクライナへの関与を続けましたが、東アジア情勢は(関税政策を除き)やや手薄な印象もあります。対中国、対北朝鮮でトランプ政権がどのようなアクションに出るかが注目されます。
中長期目線では米経済堅調、次のテーマには警戒も必要
- 米国経済は「ねじれ議会」でも堅調と見てよいでしょうか
-
一般的に言えば、「ねじれ議会」(大統領の政党と議会の多数派政党が異なる状況)は経済にとってネガティブな状況です。しかし、AI関連需要が実体経済を支える構図は変わっていません。中間選挙をきっかけに米国経済が停滞に陥る可能性は低いと考えます。
ただ、株式市場の視点では少し注意が必要かもしれません。今回の大勝を受けて、民主党は次期大統領選に向けて活動を活発化させるでしょう。AIの普及に伴い若者の失業率が上昇していることなどを考えると、先鋭的な分配政策を主張する民主党候補が注目されやすい面もあります。2028年議会選挙において上院60議席確保があり得る以上、分配政策がどんどん過激になるリスクも意識したいところです。政策の方向性こそ違いますが、民主党からトランプ大統領のような影響力の強い人物が台頭してくるかも気になりますね。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎 康平 - 2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
- 手数料等およびリスクについて
-
当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
- 株式の手数料等およびリスクについて
-
国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

