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2026.11.05 NEW

米国中間選挙で民主党勝利が米金利に与える影響 3つの金利低下要因と今後の注目点を解説

米国中間選挙で民主党勝利が米金利に与える影響 3つの金利低下要因と今後の注目点を解説のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

2026年11月3日に投開票された米国中間選挙で、民主党が上下両院を制する結果となりました。4日の米国の10年国債利回りは前日比-0.07%ポイントの4.89%、2年国債利回りは同-0.05%ポイントの4.58%となり、米金利は低下しました。選挙結果を踏まえた今後の金利動向について、野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストが解説します。

米国中間選挙で民主党勝利が米金利に与える影響 3つの金利低下要因と今後の注目点を解説のイメージ

民主党躍進で考える金利低下のインプリケーション

11月3日に米国の中間選挙が実施され、日本時間4日中には開票が進みました。各主要メディアの報道によれば、民主党が大きく躍進する結果となりました。これまで共和党は低中所得層の支持を取り込んできたと見られますが、トランプ政権が右派色の強い岩盤支持層への配慮から、対イラン軍事活動や関税政策などで強硬姿勢を取ってきた結果、物価高への批判が強まり、低中所得層の支持が民主党へと流れ込んだ面もあると推察されます。

中間選挙での民主党躍進を受けて、日本時間中に米金利は4.9%前後まで低下しました。今後の金利動向については、①追加財政の可能性が低下する、②対イラン軍事費拡大の可能性も低下する、③AI規制への懸念が強まることで、金利は低下するというインプリケーションがあるでしょう。2027年1月から始まる新たな議会において、このような金利低下のインプリケーションの確度が高まるかが注目されます。もっとも、先々で政府閉鎖や債務上限問題などを契機に米国債に対する信認が低下するリスクが強く意識されれば、「悪い金利上昇」が生じる可能性もあります。

一方、トランプ大統領が大統領令などを用いて存在感を発揮する意欲を示すのか、それとも物価高への配慮を強める方向へと転換を図るのかは、未知数です。ただし、これまでの対イラン軍事活動において、米国はミサイルの在庫を既に大きく消費しています。また、今回の中間選挙によって、物価高に対する米国民の不満が大きいことが明確になりました。したがって、トランプ政権は、対外政策においてある程度の機動性を発揮しつつも、複数の地域にわたって本格的な軍事活動を行うことは回避し、同盟国に対して軍事負担の拡大を要請する方向に進むと想定されます。

以下で主な論点について、詳しく解説します。

財政、AIデータセンター、外交・安全保障など4つの論点を解説

(1)追加財政の可能性は大きく低下

法案可決のためには、原則として、下院過半数と上院60議席(議事妨害を強制的に打ち切る動議(クローチャー)の可決が可能となる議席数)が必要です。今回、民主党は躍進しましたが、各主要メディアによれば、上院で60議席を確保するほどの躍進ではありません。財政法案に関しては、財政調整措置によって一定の条件の下で上下院それぞれの過半数で可決できますが、いずれの場合でも、最終的に法案を成立させるためには大統領の署名が必要です。大統領の拒否を覆すためには、上下院それぞれで3分の2の票が必要です。

今回、上下院とも民主党が過半数を制する結果となったため、追加財政の可能性は大きく低下するでしょう。民主党は富裕層増税・社会保障費の拡大・国防費の縮小を主張し、これに対して共和党は減税・国防費の拡大・社会保障費の縮小を主張しており、両者の主張がかみ合わないためです。

さらに、今回下院において民主党の急進左派グループDSA(アメリカ民主社会主義者)が数十議席を獲得すると見られることから、民主党のより穏健な主流派はDSAにもある程度配慮する必要が生じると考えられます。DSAには、自らの主張が通らなければ暫定予算にすら反対を貫く議員もいます。共和党と民主党の対立は深まる方向と予想されます。

2025年に成立した減税法の景気刺激効果により、2026年の景気は大きく押し上げられました。追加財政が決定されなければ、景気刺激効果は徐々に弱まっていくと予想されます。加えて、対イラン軍事費の拡大も困難になると予想されます。むしろ、軍事活動が現状の規模を維持できず、徐々に縮小していくことも考えられます。

減税法案の各年別インパクト(プラスは財政赤字拡大、マイナスは財政赤字縮小)

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(出所)CBO(米国議会予算局)より野村證券市場戦略リサーチ部作成

ただし、追加財政のリスクが完全になくなるわけではありません。過去には、異なる財政拡大項目を両党が互いに受け入れ、大規模財政が決定されたこともあります。また、民主党は環境対策としてEV補助金の拡充などを主張する可能性がありますが、こうした政策の恩恵を受けてきた一部の州では、共和党議員からも支持の声があります。あくまでもリスクシナリオとしての位置づけですが、大規模財政が決定されるリスクは引き続き注視する必要があるでしょう。

特に、暫定予算期限や債務上限問題の「Xデー」に向けては、交渉がまとまる機運が一挙に高まることもあるため、注意が必要です。債務上限問題に対しては、上述した財政調整措置を用いることが可能であるため、上下院の過半数と大統領の署名により、問題解決の法案が成立します。一方、暫定予算では下院過半数・上院60票・大統領の署名が必要です。(なお、現在の暫定予算の期限は12月11日です。また、債務が上限に達するのは2027年前半~夏と見込まれますが、財務省保有現金の取り崩しなどの手段によって対処の最終期限となるXデーは、2027年後半~2028年まで持ち越される可能性があります。) この点、下院のみ民主党が勝利し、上院共和党とトランプ大統領に対して交渉するよりも、上下院とも民主党が勝利し、トランプ大統領とのみ交渉する方が、大規模財政のリスクはやや高いと推察されます。

なお、2027年1月の新議会発足以降に追加財政が困難となることを見越し、共和党が年内に追加財政の策定を図ることも考えられます。ただし、共和党の一部議員が財政健全化の主張を強めていることに加え、現時点ではそうした財政に関する議論も進展している様子がうかがえないため、年内の新たな追加財政は、あくまでもリスクシナリオとしての位置づけです。

(2)AIデータセンター規制

民主党は、上下院の委員会による調査に基づき、FTC(連邦取引委員会)・DOJ(司法省)・SEC(証券取引委員会)・FSOC(金融安定監視評議会)などに対して、反トラスト・投資家開示・AI関連融資の集中リスク監視などを強く促しやすくなります。上院では、銀行委員会の委員長として規制強化を主張することで知られるウォーレン議員が就任すると見られます。ただし、各委員会の委員長は既に共和党側で占められているため、AI投資を即座に急減速させるような措置が執行されるとは考えにくいです。また、法案成立にはトランプ大統領の署名と上院60票という壁が残るため、包括的な規制法案の成立は見込みにくいでしょう。

中間選挙では、国レベルの上下院議会選挙と同時に、州知事選も行われました。AIデータセンターの建設立地や具体的な条件に関する規制については、州知事・州議会が権限を持ちます。今後建設が計画されているデータセンターの想定電力消費量を州別に見ると、一部の接戦州で大規模な建設計画が進んでいます。具体的には、テキサス州(計画電力量の全米シェアは27%で州別1位)、ジョージア州(同6%、4位)、オハイオ州(同5%、6位)です。この接戦3州で米国全体の計画額の38%を占めており、特にテキサス州の影響が大きいです。今回、これら3州すべてで州知事選において民主党候補が勝利しました。これらの州では電力網などのインフラ整備計画が進んできたこともあり、AIデータセンター建設が即座に他州へシフトするとは考えにくいです。

データセンターの想定電力使用量の各州別シェア

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(注)Texas、Georgia、Ohioは、中間選挙の知事選における接戦州。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

テキサス州では、現職の共和党知事が既に一時停止を導入していますが、検証終了後にはインフラ整備コストをAI企業に負担させる形で一時停止を解除すると見込まれていました。しかし、民主党候補はAI企業に対してより厳格な姿勢であり、勝利した場合には一時停止の解除時期が極めて不透明になります。規制厳格化の法制化には州議会の採決が必要ですが、州知事単独でも、審査の厳格化などを通じて建設を遅延させることは考えられます。

一方、AIデータセンター建設が、製造業や建設業を中心に雇用を押し上げている面もあります。実際にAIデータセンター建設が停止となれば、地域経済への悪影響も考えられます。悪影響が顕在化すれば、民主党知事といえども姿勢を変え、建設再開に向けた妥協点を探り始める可能性があります。もっとも、足元の雇用は依然として堅調に推移しています。民主党知事らが目先ですぐに厳格な姿勢を撤回するとは考えにくいです。

また、ハイパースケーラーは一部の州において、住民への現金配布や電力料金の負担を計画していると打ち出しています。ハイパースケーラーの費用負担によって住民の反対姿勢が和らげば、先々では、こうした民主党候補者らも条件付きながら建設許可を再開することが考えられます。

(3)対外政策・安全保障

民主党が議会を掌握しても、トランプ政権は大統領令や既存の行政権限を通じて、関税や金融制裁、海空軍の展開、対ウクライナ武器供与の条件変更などを機動的に強める余地があります。ただし、対イラン軍事行動では、精密弾薬・迎撃弾が既に大量に消費されています。CBO(米国議会予算局)によれば、迎撃弾のカテゴリーでは、在庫の半分~3分の2が消費されたと見られます。このため、米国が複数の地域で長期・高強度の本格的な軍事作戦を同時に続けることは困難と見込まれます。

その結果、軍事行動は全面的な戦争よりも、限定的な打撃、威嚇、制裁、同盟国への負担移転を組み合わせる方向に傾きやすいと予想されます。特に中国・台湾関係を念頭に置くと、日本、台湾、豪州、フィリピンには、弾薬・迎撃ミサイルの備蓄、共同生産、基地・港湾の強靱化、整備・補給、分散展開、共同運用を拡充するよう求める圧力が強まる可能性があります。

11月18~19日のAPEC首脳会議に合わせて、米中露首脳会談の開催をロシアが提案しています。実現すれば、米露間ではウクライナ、米中間では台湾と貿易全体の管理体制、米中露共通ではイラン後の中東・航行安全保障・制裁を、相互に連動する取引材料として扱う余地が生まれ得ます。その場合、米国が軍事的余力の制約を中国・ロシアとの一部合意で補うのか、その際に台湾・ウクライナ・日本の利益をどこまで交渉材料とするのかが注目されます。

中間選挙後の主要政治日程

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(出所)米国議会より野村證券市場戦略リサーチ部作成

(4)FRB理事

FRB議長・副議長・理事は、大統領による指名の後、上院過半数の承認を受けます。パウエル理事の任期は2028年1月までとされています。トランプ大統領は、後任に利下げを志向しやすいハト派的な人物を指名する意欲が強いと見られますが、今回、上院過半数を民主党が制したことで、就任は困難と予想されます。また、ジェファーソン副議長の任期は2027年9月とされていますが、副議長として再任される可能性が高いでしょう。(なお、ジェファーソン副議長の理事としての任期は2036年1月です。)雇用・インフレの減速基調が確実とならない限り、FOMC内で利下げ論が強まることは見込みにくいです。

減税法の景気刺激効果とAI投資が減衰する場合、米金利はどうなる

中間選挙での民主党躍進を受けて、日本時間中に米金利は低下しましたが、追加財政が困難になるとの見方や、AIデータセンター建設が一部の州で遅延するとの見方が強まっているためとみられます。利上げの織り込みは、12月が18bp、2027年末までの合計が50bpまで低下しました。

2026年は、減税法の景気刺激効果とAI投資が、2つの主要な景気牽引役となってきました。中間選挙の結果を受けて、2027年以降はこれら2要因が減衰していく可能性が高まっています。過去には、S&P500が30日間で10%以上下落すれば、利上げ停止から利下げへと姿勢を転換したという経験則があります。ただし、現時点では雇用・インフレは底堅く、ないしは堅調に推移しています。米債先物オプション市場のバイアスを示すSKEWは、金利低下方向に傾いています。金利低下バイアスが極端な水準にまで至れば、その後はポジション中立化の過程で金利が上昇しやすくなります。

10年金利は、政策金利の到達点に対する市場の期待を示す3年先1か月金利と連動性が高いです。市場が12月の利上げ・2027年以降政策据え置きとなるシナリオを織り込めば、3年先1か月金利は4.25%になると見込まれますが、実際の3年先1か月金利はこの水準をやや下回り始めています。これ以上の金利低下には、12月も含めて今後政策が据え置かれるとの見方が強まるか、利下げが視野に入る必要があるでしょう。

過去の平均的な動きとしては、中間選挙前後から10年金利が低下に向かう傾向がありました。大統領選後の大規模財政を受けてインフレが発生し、利上げが行われる一方、中間選挙前後から景気の過熱が鎮静化に向かい、利下げが行われたことが背景にあったと推察されます。金利の低下に伴い、株価も上昇しました。今回の局面では、原油高やAI投資もあり、インフレの鎮静化が過去のパターンよりやや遅れています。一方、先々で雇用・インフレが減速傾向を鮮明にすれば、金利低下は持続しやすくなると予想されます。

大統領選・中間選挙と金融市場

米国中間選挙で民主党勝利が米金利に与える影響 3つの金利低下要因と今後の注目点を解説のイメージ

(注)大統領選のある年を0年目とした。通期平均は、1960年以降の平均。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

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野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

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