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2026.10.20 NEW

AI関連株なぜ「急落」した? 5つの背景と日本株見通し 野村證券・池田雄之輔

AI関連株なぜ「急落」した? 5つの背景と日本株見通し 野村證券・池田雄之輔のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

日経平均株価は2026年10月15日に前日比3,300円以上値を下げて終値で約1ヶ月ぶりに65,000円を下回り、その後も19日、20日の取引時間中に一時64,000円を割り込むなど不安定な値動きが続いています。日米ともにAI関連株の下落が目立ちますが、この傾向は続くのでしょうか。背景にある5つの要因と日本株の見通しについて、野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。

AI関連株なぜ「急落」した? 5つの背景と日本株見通し 野村證券・池田雄之輔のイメージ

AI関連を中心に「急落」だが、水準感も大事

足元で日経平均株価が乱高下し、不安を感じている投資家も多いかもしれません。どのような背景があるのでしょうか。

はい、このところ日本株、米国株ともに特にAI関連のところを中心に、やや神経質な動きになっています。この動きについて、11月3日に予定される米中間選挙との関係なども紐解きながら見ていきます。

日経平均株価はAI関連を中心に急落しているとメディアで報道されていますが、ぜひ水準感も見ていただきたいところです。具体的には、日経平均株価は9月の半ばあたりに64,000円を割ったところとほぼ同じレベルに戻ってきたイメージになっています。米国株についても、ハイテク株比率の高いナスダック指数も同じように9月の半ばにいったん安値を付けたところから上がって下がったという、相場の揺り戻しのような状況になっているということですね。

日経平均、ナスダックともに9月半ばの水準に戻っただけという見方も可能

AI関連株なぜ「急落」した? 5つの背景と日本株見通し 野村證券・池田雄之輔のイメージ

(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

AI株の調整をもたらした5つの要因

今回の下落は、それまでの上昇に対する調整という見方もできるのですね。では何が要因なのでしょうか。

AI関連で10月半ばにかけてややネガティブな材料が出てきているように見えます。次の5つが株価の調整に作用した要因として挙げられると思います。

AI株調整に作用した5つの要因をどう考えるか
10月中旬にAI株調整を
もたらした5つの要因
考え方
1. 米国中間選挙を前にしたポジション調整 過去のパターンを踏まえると、選挙後にはポジション構築が再開し、株高傾向に転じる(例外もある)。
2. 中間選挙後のAI規制への警戒 規制強化が実現しやすいのは、上下院とも民主党が奪還した場合。ただし、そのような選挙結果は6割程度織り込み済み。
3. 中国メモリーメーカーの技術の躍進 日米韓のライバル企業にとっては潜在的脅威だが、価格低下によってAI関連の設備投資採算が上がる可能性も
4. 米国の新興AIクラウド企業の破綻懸念 懸念対象となっている企業は、他の同業と比べても財務基盤の弱さが突出している。事業規模も小さい。
5. IMF「国際金融安定性報告書」がAI分野の脆弱性を指摘 同報告書は、リスクを指摘することが目的。目新しい内容はなかったとの理解が一般的。

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

まず1つ目は、米中間選挙を前にしたポジション調整が働いたということですね。こちらは過去のパターンを踏まえると、選挙後には例外ももちろんありますがポジションの構築ということで、米国株、日本株ともにまた買いに戻ってきて株高傾向に転じるというパターンが平均的になっています。

2つ目は、今回の米中間選挙との絡みでAI規制への警戒は見ておいた方が良いと思います。選挙で大きな争点となっているのがAI規制、特にデータセンター建設に対する反対の機運です。仮に上下院とも民主党が過半数を奪還した場合には、そのようなAI関連、データセンターなどへの規制強化が進みやすいとみられています。ただ、既にそのような選挙結果すなわち上下院とも民主党が過半数を奪還し共和党が議席を失うというシナリオは、市場では概ね6割程度織り込まれているとみられています。従って大きなサプライズにはならないというのが基本観かと思います。もちろん議席数が民主党に想定以上に大きく傾くような場合などには、マーケットがネガティブに反応することはあり得るかもしれません。

3つ目は、中国のメモリーメーカーの技術が躍進しているという報道も出てきていることです。日米韓のライバル企業に当たるメモリーメーカーにとっては潜在的な脅威ということになり得ます。ただ、AI関連全体として見るとメモリー価格が下がることによってAI関連の設備投資の採算が向上する可能性もありますので、全面的にAIにとってネガティブかというと、そこは少し吟味する必要があると思います。

4つ目は、米国の新興AIクラウド企業の破綻懸念という話も出てきています。ただ、懸念対象となっているような企業は同業他社と比べても、かなり財務基盤の弱さが突出しているところです。事業規模も比較的小さい新興企業が懸念対象になっているということで、全体としては大きな問題になっていないというのが基本観と見ています。

最後に5つ目は、国際通貨基金(IMF)が公表した「国際金融安定性報告書」でAI分野の脆弱性を指摘したことです。これは懸念すべきニュースなのではないかとも言われているようですが、そもそもこの報告書は年に2回必ず出され、様々なリスクを指摘、検証することが目的です。AI分野が新しいリスクとして初めて指摘されたということではなく、総じて目新しい内容はなかったという見方になっていると思います。

選挙や企業決算でサプライズがなければ株価再浮揚も

AI関連のネガティブ要素に加えて、選挙前のポジション調整も影響している可能性があるということですね。

はい、今回のAI関連の株価調整というのは5つの悪材料も重なってきている面が目につきますが、米中間選挙前ならではの株価のポジション調整が重なっており、選挙前にいったん持ち高を調整したい投資家にとってちょうどいい売り材料になっている可能性もあるでしょう。

今後の注目点としては、10月末以降に予定されるハイテク企業の決算発表の内容と米中間選挙の結果がかなり重要になってくるということです。選挙の結果、民主党が上下院とも過半数を取る可能性が既に6割方織り込まれてはいるものの、それ以上の議席差がつくのかどうかなどが焦点になってくるということですね。

ハイテク企業決算と米中間選挙のいずれについても大きなネガティブサプライズが無ければ、日本株は業績の拡大はしっかりしていますので、イベントをこなして再浮揚していくことをメインシナリオと考えています。野村證券としては2027年3月末、つまり2026年度末の日経平均株価は71,000円をメインシナリオとして維持しています。

米中間選挙前後の影響について、もう少し詳しく聞かせてください。

次の左側の図は米国のS&P500指数で、縦の赤い線が米中間選挙当日です。当日までの株価推移を見ると、1950年以降の19回の選挙前期間でほぼ横ばいであり、選挙後は平均的に上昇トレンドが回復してくることがはっきりとわかると思います。

例外はあるが、中間選挙後は日米とも株高となる傾向

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(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

同様に右側の図の日本でもTOPIX(東証株価指数)の米中間選挙前後を見ると、選挙前はやや低調でどちらかというと下がっているイメージですが、過去19回の平均だと選挙後は上がっています。つまり、米国でも日本でも、それなりに大きなイベントである米中間選挙を前にして不透明感があるのでポジションを閉じておこうという持ち高調整が働きやすいと考えられます。そして、選挙後は再度ポジションを回復していく株買いの動きに繋がりやすいことが比較的明確です。

もちろん過去19回すべてで選挙後に上昇しているわけではなく、中には株価が下がることもありました。具体的には1994年、2002年、2018年は米中間選挙後に相場が崩れましたが、全体的には少数派になっていることがポイントになると見ています。米中間選挙は日米の株価にそれなりに大きな影響を持つことが過去からのパターンとして知られています。例外はあるものの選挙後は株高になりやすく、逆に選挙前はどちらかというと株が低調になりやすい傾向があるということを頭に入れておくと良いでしょう。

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野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔
1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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