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2026.10.28 NEW

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

米国の中間選挙が11月3日に迫り、市場でその動向への注目度が高まっています。トランプ米大統領が所属する共和党に対し、民主党が優位に選挙戦を進めているとのメディア報道も出ていますが、最新情勢はどうなっているのでしょうか。当日見ておくべきポイントを含め、野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストが解説します。

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和のイメージ

民主党が徐々にリードを伸ばしていると予測されている

米中間選挙は結果次第で米国の政策や世界の金融市場に与える影響が大きいため、注目されています。最新情勢について教えてください。

はい、11月3日の中間選挙に向けて、民主党が徐々にリードを伸ばしています。下院についてはもともと民主党優勢との見方が多かったですが、著名予測機関Cook Political Reportは10月23日に最新の見方を更新し、接戦州を除き民主党の勝利が確実~優勢と判断される選挙区だけでも220議席と、過半数の218議席を上回るとの見方を示しました。

上下院議席数の各種予想平均

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和のイメージ

(注)改選議席の政党別勝利数は各種予想平均。接戦州は現職議席政党により色分け。現職共和党議席が赤、民主党が青。 上院は全100議席。下院は全435議席、過半数は218議席。
(出所)270 to winより野村證券市場戦略リサーチ部作成

上院については依然として接戦状況ですが、世論調査によっては、共和党が地盤としてきたテキサス州やカンザス州においても民主党がリードしているとの結果となっています。民主党候補が最後に選挙で上院議席を獲得したのは、テキサス州では1988年、カンザス州では1932年でした。トランプ政権に対して物価高の批判が強いことに加え、これらの州では民主党がキリスト教徒候補を擁立したことで、従来共和党支持者でありながら現在の極端な右派候補を支持しにくい有権者が一部流れ込んでいることも、民主党のリードにつながっていると推察されます。

ただし、最近の選挙では、世論調査が共和党の実際の獲得票数を過小評価しているという傾向もあります。世論調査が示すほどには民主党が大勝しない可能性があるでしょう。

中間選挙結果予想確率 上下院とも民主党勝利との見方が6~7割

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和のイメージ

(注)市場予想確率は、予想サイト Kalshi に基づく、上下院それぞれ過半数を占める政党の組み合わせ別の予想確率。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

下院は全435議席が改選となるのに対して、上院では全100議席のうち35議席が改選となります。上院において非改選議席は共和党31議席、民主党34議席です。それぞれ確実~優勢とされる議席を加えると、共和党46議席、民主党47議席となります。残り7議席が接戦州です。

議席が50対50となった場合には副大統領が上院決定権をもつこととされているため、共和党が上院を制するためには接戦7州のうち4議席を獲得する必要があります。一方、民主党が上院を制するためには51議席が必要であり、やはり接戦7州のうち4議席を獲得する必要があります。

接戦7州の情勢、最初に結果がわかるのは?

接戦7州の情勢が重要になりそうですね。当日の流れはどうなるのでしょうか。

出口調査や集計の途中経過により、日本時間11月4日中には大勢が判明すると見込まれます。最注目は上院接戦7州の結果ですが、事前に確実~優勢が予想されている議席が実際にその通りとなっているかという点も注目です。この点、共和党がやや優勢と目されている州の中でもサウスカロライナは投票締め切り時刻が早く、確認に有用と見込まれます。同様に、ニューハンプシャー、ジョージア、ノースカロライナは、民主党がやや優勢と目されている州の中でも投票締め切り時刻が早いです。

州別・投票締め切り時刻一覧
上院選挙区 選挙情勢 郵便投票到着期限 当日投票締め切り時刻
共和党候補勝利予想確率,% 日本時間4日
Wyoming 100 11月3日 11:00
Alabama 99 11月3日 10:00
Oklahoma 98 11月3日 10:00
West Virginia 98 11月9日 9:30
Kentucky 97 11月3日 9:00
Tennessee 96 11月3日 10:00
Idaho 96 11月3日 12:00
Arkansas 95 11月3日 10:30
South Dakota 95 11月3日 11:00
Louisiana 94 11月2日 11:00
Montana 93 11月3日 12:00
Florida 90 11月3日 10:00
Mississippi 90 11月10日 10:00
South Carolina 82 11月3日 9:00
Nebraska 76 11月3日 11:00
接
戦
州
Kansas 62 11月6日 10:00
lowa 58 11月3日 11:00
Maine 37 11月3日 10:00
Texas 34 11月4日 11:00
Michigan 32 11月9日 11:00
Ohio 31 11月3日 11:30
Alaska 25 11月18日 14:00
Minnesota 15 11月3日 11:00
New Hampshire 9 11月3日 9:00
Georgia 5 11月3日 9:00
North Carolina 4 11月3日 9:30
New Mexico 4 11月3日 11:00
New Jersey 3 11月9日 10:00
Illinois 2 11月3日 10:00
Virginia 2 11月6日 9:00
Delaware 2 11月3日 10:00
Massachusetts 2 11月6日 10:00
Oregon 2 11月10日 13:00
Rhode Island 2 11月3日 10:00
Colorado 1 11月11日 11:00

(注)共和党候補勝利予想確率は予想サイトKalshiに基づく。10月23日時点。値が高いほど濃い赤、値が低いほど濃い青で表示。
(出所)各州選挙管理委員会、U.S. VOTE FOUNDATIONより野村證券市場戦略リサーチ部作成

特に接戦州においては、開票ペースも合わせて確認する必要があります。大手メディアや選挙予測機関は、独自の開票速報ページを立ち上げている、ないしは立ち上げる見込みです。AP通信のページでは当確コールの一覧が閲覧できるでしょう。ただし、AP通信は予測を行わず逆転不可能となった時点で当確コールを公表するとしています。正確である一方、速報性がやや劣ります。この点、NY Times紙の通称「Needle」は、上下院それぞれをいずれの党が制する可能性が高いかを開票結果に基づきリアルタイムで予想します。他にも、ロイター・ABCニュース・CNN・Decision Desk HQなども有用となるでしょう。11月3日中間選挙直前には、開票速報ページが一通り立ち上がるでしょう。

一方、中間選挙結果の最終確定には、かなり時間がかかることが予想されます。再集計のルールは州によって異なりますが、得票差が全投票の0.5%以下の場合に自動的に再集計となることが定められている州や、候補者や有権者の請求により再集計となることが定められている州が多いです。接戦州において結果がかなりの僅差となる場合は、再集計の必要が生じる可能性が高まり、最終結果の確定が遅れるリスクもあります。また、いくつかの州においては、郵便投票の期限が11月3日よりも後に設定されています。

AIデータセンター規制はテキサス州知事選が焦点

米中間選挙を巡っては、AIデータセンターの建設に反対する機運も盛り上がり、大きな争点になっていますね。

そうですね、中間選挙では、上下院の議会選と同時に州知事選も行われます。AIデータセンター規制の観点で、特にテキサス州知事選の結果が注目されます。AIデータセンターの建設の立地や具体的な条件に関する規制については州知事が権限を持つためです。

今後建設が計画されているデータセンターの想定電力消費量を州別に見ると、一部の接戦州で大規模な建設計画が進んでいます。具体的にはテキサス州(計画電力量の全米シェアは27%で州別1位)、ジョージア州(同6%、4位)、オハイオ州(同5%、6位)です。これら接戦3州で米国全体の計画額の38%を占めており、特にテキサスの影響が大きいです。

テキサスでは現職の共和党知事が既に一時停止を導入しているものの、検証終了後にはインフラ整備コストをAI企業に負担させる形で一時停止を解除すると見込まれます。しかし、民主党候補はAI企業に対してより厳格な姿勢であり、勝利の場合には一時停止の解除が極めて不透明となります。

データセンターの想定電力使用量の各州別シェア データセンターは接戦州に集中

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(注)Texas、Georgia、Ohioは、中間選挙の知事選における接戦州。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

米金利は上がる?下がる?市場反応の想定は…

だいぶ選挙情勢がクリアになってきました。気になるのは市場の反応ですが、どのように想定していますか。

ここ2週間程度で米金利が大きく低下し、また米金利低下材料となり得る民主党勝利の織り込みも大きく進んできました。雇用・インフレの基調的な減速傾向が視野に入らない限り、追加的な金利低下余地は限られつつあるでしょう。むしろ、共和党が善戦すれば、一旦は金利が上昇することも考えられます。

従来、上下院のいずれか、ないしは両院とも民主党が勝利すれば、①追加財政の可能性は低下、②対イラン軍事費拡充の可能性も低下、③AI規制への懸念が強まることで、金利は低下すると私は想定してきました。(上院過半数によりFRB(米連邦準備理事会)理事が承認されるため、上院共和党ならハト派のFRB理事就任の可能性が高まり米債はブルスティープ化、上院民主党ならハト派のFRB理事就任の可能性が低下し米債はブルフラット化。)

これに対して、上下院とも共和党が勝利すれば、追加財政・FRB理事後任にハト派が就任・トランプ大統領の対外強硬姿勢継続(関税・中東)のリスクが上昇し、AI推進継続の見方が強まることで、米債はベアスティープ化するとも想定してきました。

中間選挙結果と想定される市場反応 ここ2週間の金利低下は、民主党勝利シナリオと整合的
上院 下院 市場
予想確率
インプリケーション 想定される市場反応
米債
共和党 共和党 10% ・追加財政拡大のリスクが上昇。
・債務上限問題リスクは低下。政府閉鎖リスクは残存。
・FRB理事の後任にハト派が就任する可能性が上昇。
・トランプ大統領は対外強硬姿勢を継続。
・AIデータセンター規制厳格化は進まず。
米債ベアスティープ化
共和党 民主党 27% ・追加財政拡大のリスクは大きく低下。
・債務上限問題・政府閉鎖リスクが継続。
・FRB理事の後任にハト派が就任する可能性が上昇。
・トランプ大統領は物価安定に配慮、対外強硬姿勢を柔軟化。
・AIデータセンター規制厳格化は28年大統領選に向け争点化。
米債ブルスティープ化

(ただし、議会運営混乱や米国債の信認低下のリスクが強く意識されれば「悪い金利上昇」)
民主党 共和党 1% ・追加財政拡大のリスクは大きく低下。
・債務上限問題・政府閉鎖リスクが継続。
・FRB理事の後任にハト派が就任する可能性が低下。
・トランプ大統領は物価安定に配慮、対外強硬姿勢を柔軟化。
・AIデータセンター規制厳格化は28年大統領選に向け争点化。
米債ブルフラット化

(ただし、議会運営混乱や米国債の信認低下のリスクが強く意識されれば「悪い金利上昇」)
民主党 民主党 63% ・追加財政拡大のテールリスクが小幅残存。
・債務上限問題・政府閉鎖リスクが継続。
・FRB理事の後任にハト派が就任する可能性が低下。
・トランプ大統領は物価安定に配慮、対外強硬姿勢を柔軟化。
・AIデータセンター規制は条件付きで厳格化の方向。
米債小幅ブルフラット化

(ただし、議会運営混乱や米国債の信認低下のリスクが強く意識されれば「悪い金利上昇」)

(注)市場予想確率は、予想サイト Kalshi に基づく、上下院それぞれ過半数を占める政党の組み合わせ別の予想確率。10月25日時点。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

ただし、ここ2週間では金利低下が大きく進みました。米国の利上げに端を発し、市場で様々な余波が生じています。特に、米国市場においてはAI投資を巡り懸念が高まっています。中間選挙でAIデータセンター規制の厳格化を主張する民主党候補らも、こうした懸念を間接的に増幅している可能性があるでしょう。

テキサス州知事選で現職共和党候補が勝利するなど、共和党が善戦すれば、AIデータセンター規制厳格化のリスクは低下し、米金利は一旦上昇することも考えられます。一方、民主党が大勝し、追加財政の可能性が大きく後退し、またAIデータセンター規制厳格化の確度が上昇することで景気減速懸念が強まれば、米金利は追加的に低下するでしょう。ただし、9月会合で利上げが終わりとなるケースや、12月追加利上げのあと利下げとなるケースの織り込みが強まらない限り、米金利の低下は限定的と予想されます。

米国中間選挙の最新情勢と当日のポイント 野村證券・小清水直和のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和
米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。

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