Research

野村リサーチ

2026.11.02 NEW

日銀がETFの売却加速も影響は軽微 日本株の緩やかな上昇基調は継続 野村證券ストラテジストが解説

日銀がETFの売却加速も影響は軽微 日本株の緩やかな上昇基調は継続 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

日銀のETF売却加速も影響は限定的、自社株買いが日本株の需給を支える

2026年10月の日銀会合で、2027年1月からETF(上場投資信託)の売却を加速することが全員一致で決まったのは想定外でした。10月23日の日銀金融システムレポートでは、信用倍率の高さなど過熱を示す兆候も示されました。一方、10月27日の政府の月例経済報告会議で示された日銀資料では、直近の日経平均株価の下落部分に丸印が付けられていました。

ETFの売却ペースは簿価ベースで従来の年間3,300億円から8,600億円に引き上げられましたが、より重要なのは時価ベースの売却額です。2026年3月末時点の簿価37兆円に対し、時価が107兆円前後(10月30日前引け時点)であることを踏まえると、時価ベースの売却額は従来の年間8,800億円(1日35億円、1ヶ月875億円)から年間2.4兆円(1日91億円、1ヶ月2,275億円)に拡大すると試算されます。

日銀ETF買い越し額とTOPIX

日銀がETFの売却加速も影響は軽微 日本株の緩やかな上昇基調は継続 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)月間数値。日銀ETF買い越し額は日銀公表数値。売り越し額の時価ベースの数値は公表されていないため公開されているルール等をもとにした試算値。2026年10月29日時点。
(出所)日本銀行、JPX総研より野村證券市場戦略リサーチ部作成

売却完了までの期間は43~44年に短縮される計算です。総裁会見では、売却決定から1年が経過し、市場環境も勘案して売却加速を決めたと強調されましたが、新たな情報は乏しいものでした。J-REIT(不動産投資信託)の売却に関する新たな情報もなく、売却ペースは簿価ベースで年間50億円程度に据え置かれました。

時価ベースの年間ETF売却額は生損保の売越額並みです。東証プライム市場の年間売買代金の0.1%、東証時価総額の0.2%弱にとどまることを踏まえると、現時点での影響は限定的と考えます。上場企業が年初来に発表した自社株買い枠は21.8兆円で、10月だけでも8,894億円に達しています(10月29日時点)。事業会社の買い越しを軸に、日本株の需給は引き締まった状態が続きやすいとみています。

一部の値がさ株や商社・医薬株では売り圧力が大きい

日本株先物は公表直後に売られましたが、その後すぐに下げ幅を縮めました。一方、足元でAIの失速懸念に直面している、日経平均株価の構成比率が高い銘柄などには、さらなる逆風ともいえます。日経平均株価の構成比率が高い一部の値がさ株などでは、日銀の間接保有比率が10%を超える例も少数ながらみられます。また、ETF売却額が1日あたり売買代金の0.3%を超える銘柄も少数ながらあります。こうした銘柄は、日経平均株価の構成比率が高い一部の銘柄に加え、時価総額に比べて売買代金が必ずしも大きくない商社や医薬などにもみられます。

日銀ETF売却の1日あたり売買代金比が0.3%超の銘柄
銘柄
コード
銘柄名 日銀保有
残高
日銀保有
比率
A:1日あたり
売却想定額
B:1日あたり
売買代金
A÷B
(10億円) (%) (10億円) (10億円) (%)
1721 コムシスホールディングス 125.1 18.76 0.01 3.13 0.365
3001 片倉工業 5.4 4.18 0.00 0.12 0.398
3201 日本毛織 7.1 4.65 0.00 0.19 0.341
3950 ザ・パック 4.2 4.65 0.00 0.12 0.320
4021 日産化学 181.6 16.71 0.02 5.20 0.318
4063 信越化学工業 1384.0 11.60 0.13 39.90 0.316
417A ブルーゾーンホールディングス 16.1 4.18 0.00 0.45 0.328
4503 アステラス製薬 498.6 10.96 0.05 14.17 0.321
4534 持田製薬 4.9 4.18 0.00 0.15 0.301
4543 テルモ 539.2 15.37 0.05 14.70 0.334
4578 大塚ホールディングス 613.0 9.19 0.06 14.56 0.384
4901 富士フイルムホールディングス 457.1 10.65 0.04 13.23 0.315
4956 コニシ 5.9 5.57 0.00 0.15 0.353
5909 コロナ 0.6 2.44 0.00 0.02 0.345
5930 文化シヤッター 7.5 5.57 0.00 0.21 0.318
6420 ガリレイホールディングス 6.4 4.18 0.00 0.18 0.326
6971 京セラ 722.2 14.25 0.07 18.75 0.351
6988 日東電工 394.2 17.37 0.04 11.95 0.300
8001 伊藤忠商事 1294.7 7.04 0.12 37.48 0.315
8015 豊田通商 631.5 9.23 0.06 17.18 0.335
8031 三井物産 1223.7 8.38 0.11 28.72 0.388
8053 住友商事 728.4 8.73 0.07 17.66 0.376
8058 三菱商事 1534.6 8.43 0.14 40.98 0.341
8850 スターツコーポレーション 11.3 4.70 0.00 0.32 0.324
9310 日本トランスシティ 4.4 4.65 0.00 0.12 0.340
9433 KDDI 1011.7 9.09 0.09 28.34 0.325
9735 セコム 389.2 12.56 0.04 9.06 0.391
9869 加藤産業 10.8 4.65 0.00 0.26 0.380
9983 ファーストリテイリング 4016.1 17.10 0.37 85.89 0.426

(注)対象はTOPIX構成企業で、日銀ETF売却の1日あたり売買代金比が0.3%超の銘柄をスクリーニング。日銀の売却額は2027年1月以降の年2.46兆円というペースをもとに各銘柄別の保有比率をもとに機械的に算出。各銘柄別の保有比率は、これまでの購入や売却ペースをもとに、買い入れ当時の指数別のウェイトを勘案して推計したもの。1日あたり売買代金は過去25日平均。業績予想はQUICKコンセンサス、東洋経済予想で補完。2026年10月29日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

日本株の緩やかな上昇基調は継続:出口戦略の真価が問われるのは先か

TOPIX(東証株価指数)が徐々に高値を更新する一方、日経平均株価は上値が重いとの見通しを維持します。日銀が保有するETFは日本株の時価総額の7~8%程度を占めるため、拙速な出口戦略で株価の急落を招けば、かえって出口が遠のくリスクもあります。日銀資料では、市場環境に応じて売却ペースを調整できることも示されました。出口戦略の真価が問われるのは、2024年8月上旬の「植田ショック」のように株式市場が大きく崩れる時でしょう。

(編集:野村證券投資情報部)

編集元アナリストレポート

日本株メモ:日銀ETF売却加速も影響は軽微な理由 – 売却は年間売買代金の0.1%、真価が問われるのは先か(2026年10月30日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

  • EL_BORDEをフォローする
  • Pick up

    ページの先頭へ